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「オレは……生まれて直ぐ、両親に捨てられてンだよ。
物心ついた頃からずっと、児童養護施設って所で育った。……けど、抜けた」

え……
ハイジの思わぬ独白に、一瞬息を飲む。
自分と似たような境遇に、不思議と親近感が湧いてしまう。

「だから、甘ちゃんが嫌ぇっつーか。……苦手なんだよ」
「……」
「この手には、色んな強ぇ恨みが染み付いてンだろうな。カッとなると、歯止めが効かねぇ。
さっきお前の首を絞めた時、マジで一瞬……殺すかと思った」

少しだけ震える声。
思い詰めた様子のハイジが、軽く広げた両手のひらに視線を落とす。


『……全部、あんたのせいよ!!』『あんたが死ねば良かったのにっ、!!』──脳裏に蘇る、鬼のような形相の母。幼い僕の首に両手を掛け、咽び泣きながらその手に力を籠める。


もしあの時──母の望み通り僕が死んでいたら。
母の胎内に宿って直ぐ、流産していたら。

そしたら、少しは違っていたのかな──


「で、どうすんだよ。これから──」
「……」
「帰るなら、送ってってやるぜ」

すっかり帰り支度を済ませたハイジが、意を決したように握り締めた拳をポケットに仕舞う。
返事のない僕の方へと振り向き、切れ長の綺麗な眼で僕を視る。

「それとも。……うち、来るか?」






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