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しおりを挟む「端から見てもお似合いのカップルだし、付き合ってもう長いじゃない?
だから、今となってはこれで良かったのかなーって、……思うようにしてるんだけどさ」
「……」
「……あの頃夏生、他に好きな子がいたのよ」
……え……
「ただ、泣きじゃくる那月ちゃんを慰めようとしただけ。放った言葉の重みに後から気付いて……責任感じちゃっただけ」
「……」
『オレが本当に好きなのは、さくらだ!』──冬休み前に言われた夏生の言葉が、脳裏を過る。
まさか……
まさか、ね……
『……か、揶揄わないでよ。彼女いる癖に』──突然の告白に。突然のハグに。そう返すのが精一杯で。夏生がどんな気持ちで言ったかなんて……ちゃんと考えもしなかった。
ドクン、ドクン、ドクン……
さっきまでとは違い、妙な高揚感とモヤモヤした気持ちが芽生える。
やっとの思いで、夏生を諦めて。
その中で竜一に出会って。……好きになって。
今更、何かを期待してる訳じゃない。
……けど。もしあの時の言葉が、真剣なものだったとしたら。
夏生の気持ちに、ちゃんと向き合っていたとしたら──
「……なーんて。
ごめん。色々ぶっちゃけ過ぎちゃった」
両腕を上げ、麻理子が伸びをする。
「あんな弟だけどさ。これからも仲良くしてやってね」
「………はい」
大丈夫。
夏生ん家の匂いに包まれ、雛祭りのトラウマが蘇り……少し、感傷的になっただけ。
……ただ、それだけ。
「──にしても、遅い。
先に二人で始めちゃおっかっ!」
渡された白いお猪口に、まだ湯気の残る甘酒が注がれる。
「……はぁぁ、甘くて美味しいぃ!」
手酌で一気飲みした麻理子が、テーブルにお猪口をトンと置く。
空っぽになった、それ。
「……」
どんなに過去を追い掛けようとしても、もう二度と時間は巻き戻らない。
例え後から知る事が出来たとしても……元通りにはならない。
……だって、その時選ばなかった選択肢の未来は、もう無いのだから。
「ほら、飲んで飲んで!」
だからいつだって。後悔しないよう選択し、その先の未来に突き進むだけ──
「……は、はいっ」
色んな思いも一緒に、クイッと一気に甘酒を飲み込む。
ほんのりと、その咥内や喉奥に糀の甘味が広がって……
僕の中に、優しく溶けていった。
to be continue……
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