15 / 29
4
しおりを挟む「さぁ。……自分の胸に手を当てて、よーく考えてみろよ」
「……」
「オレは、大方予想がついてるけどね」
それは──四時間目の授業が始まる直前。
実験室に入ってきた山本に、自席に向かう道すがら小さな手提げ袋を放られる。
『……は? てか、何??』
『2組の桐谷からだ』
華やかなリボンのついたそれは、見るからに本命チョコで。
『も、貰ったん……、だけど……』『……へぇ。誰から?』『………桐谷、さん』──さくらが捨てようとしていた、桜色の可愛らしいリボンの付いた本命チョコが、桐谷からのものとは思えなかった。
それに──朝からそわそわしていたさくらが、移動教室のあった四時間目以降、浮かない顔をしている。
「……教えろ!」
緩みかけていた手に力が籠もり、凄い剣幕で夏生に詰め寄る。
その自分勝手な言動に、募る嫌悪感。
それでも。色んな感情を飲み込み、意を決した夏生が口を開く。
「頼まれたとはいえ、……桐谷に、チョコ渡されたんだろ」
「……!」
皆まで言わずとも、直ぐに状況を理解する山本。その表情が、みるみる堅くなっていく。
再び緩み、やがて離される手。
「………悪かった。いきなり殴ってよ」
「……」
視線を下げ、ボソリとぶっきらぼうに、山本が謝罪の言葉を口にする。別に、お前の為じゃない──そんな気持ちが、夏生の口を噤ませる。
片手で後頭部をガシガシした山本が、教卓に置かれたチョコを鷲掴むと、そのまま廊下へと出て行く。
「……」
それを見送る事も無く。肩を竦め、大きな溜め息をつく。
マリオネット。キューピット。
そんな役目を担わされたような現状に、悔しさから両手のひらを握り締める。
「……悪いと思ってんなら、オレから奪おうとすんなよ」
「目障りなのは、お前の方だろ……」
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
センパイとは恋しませんっ!
こすもす
BL
高校一年生の小峰 雫は、生徒会長の明るい高橋先輩が大好き。
目に留めてもらうためにわざと遅刻をしそうになったり落し物をしたり、それはもう必死。
自分の気持ちを抑えるのに限界が来た雫は、ついに告白を決意するが、間違えて高橋先輩の親友の聖(ひじり)先輩にしてしまう。
聖は雫の告白を何故かすんなりと受け入れ、お付き合いをする羽目に。間違えたとは言い出せないまま、聖の家にお邪魔することになってしまいーー?
おバカな雫の恋の行方は。
☆アルファさんは初心者ですがよろしくお願いします(*´∀`)フジョッシーでも更新しています。
☆コメディ要素あり。拙い文章ですが、読者様に楽しんで頂きたいと思いながら書いています。暖かい目で見てくださると嬉しいです♡
☆今更自作の表紙が恥ずかしくなってしまったのでちょっと変えましたw
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
多分前世から続いているふたりの追いかけっこ
雨宮里玖
BL
執着ヤバめの美形攻め×絆されノンケ受け
《あらすじ》
高校に入って初日から桐野がやたらと蒼井に迫ってくる。うわ、こいつヤバい奴だ。関わってはいけないと蒼井は逃げる——。
桐野柊(17)高校三年生。風紀委員。芸能人。
蒼井(15)高校一年生。あだ名『アオ』。
キンモクセイは夏の記憶とともに
広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。
小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。
田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。
そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。
純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。
しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。
「俺になんてもったいない!」
素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。
性描写のある話は【※】をつけていきます。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる