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ギシ、ギシ、ギシ、
ズッズッズッ……

抽送を繰り返される度に、上下に揺さぶられる身体。壊されていく精神こころ
耐えきれないのか。周りを取り囲むギャラリーの男達が、欲望に張り詰めた己の凶器を取り出し、その処理に勤しむ。

「……」

閉塞感。色のない空間。絶望。
深く暗い闇に誘われ、奈落の底へと突き堕とされていく。
痛みの残る首のつけ根に濡れそぼつ熱い舌が這われ、本能的に身体が震える僕を吐息が嘲笑う。

「……はァ、ッ、……ィくッ、!」

ドク、ドクンッ──
速い律動の後、奥深くで脈動する欲肉。腹の奥が熱く広がり、やっと一人目が終わったんだと認識する。

「……」

あと、何人だろう……
痛みや嫌悪感はとうに麻痺し、ただ息をするだけの肉の塊と化す。
どんなに手足を動かそうとも、上手く力が入らなくて。意思とは無関係に、ピクリと指先が痙攣する。

ぼんやりとする視界。入れ替わり立ち替わり、僕を犯す男の影。それを何となく頭の片隅で数えながら、気が遠くなりそうなこの悪夢の果てを探す。


チ、チ、チ、チ……

突然、空中で響く冷たい音。
少しだけ瞼を持ち上げてみれば、滲んだ視界に映り込んだのは──鋭く光る、カッターの刃。


「──ッ、!!」


瞬間──視界が大きく開かれ、大きく跳ね上がる身体。
それまでとは比べものにならない程の恐怖が襲い、ぶるぶると全身が震えて、息が……できない。


……助けて……

助けて、ハイジ……


シュッ、
刃先が闇を切り、僕の胸元を裂く。

「……、ぃあ″っ!」

冷痛の後、ドクドクと灼熱感を持つ傷口。じんわりと滲んだ鮮血を舐め取ろうと、舌を出した男の顔が近付き──




「……ぅ″……ああ、あぁ″あっ、!!」

発狂し、両手で空を切りながら暴れる。
既に事を終え、ベッド端に座って後始末をしていたハルオが、それまで微動だにしなかった僕の異変に驚く。

「……さくら?」

片手を付き、必死で何かを追い払おうとするその細い手首を掴んで顔を覗き込む。

「………た、すけ……」

真っ直ぐハルオに向けられる視線。長い睫毛の奥に隠れた形の良い大きな瞳が、懇願するように潤む。

「ハイ、ジ……」

可愛らしい柔らかな唇から溢れるのは、愛しい恋人の名前。
身体を重ねても尚、離れた恋人を諦めず想い続ける僕に、眉間に皺を寄せたハルオが下唇を噛む。

「……ハイジ……」
「あぁ、俺だよ」

半ば投げやりに掛けたその言葉に、安心したように微笑む唇。今まで見た事のない、甘え付くように潤む瞳。

「……ハイジだ。もう大丈夫だから、安心して」

そっと身体を重ね、唇を寄せれば、ハルオの背中に腕を回した僕が、唇の門戸を自ら開く。


……くちゅ、

舌を絡ませ、何度か角度を変えながら、僕の咥内の隅々を弄る。そうしながらハルオは、身を委ね敏感になりつつある僕の身体を愛撫し……そっと唇を離す。

「何があっても、絶対に離さないから。……俺と、一生一緒にいようね」
「……ん、」

小さく頷く僕を確認したハルオは、耳元に唇を寄せ、その耳殻を甘く食む。

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