上 下
105 / 143
2章 村での生活

58話 製薬を、錬金術のみで?

しおりを挟む
  ぱっと見で分かるくらい苦しそうだし、あまり余計なことは考えないでおこう。


「これとこれをすりつぶして……あとはこの果実の汁を入れれば、飲みやすい低級の魔力回復薬になる……あとは、頼んだよ……!」


 お婆さんは素材を作業台に出してそこまで言うと、地面に座り込んでしまった。


「ちょっ!? しっかりして下さい!」
「お兄さん! おばあさんはわたしが見てるから、おくすりをおねがい!」

「分かった!」

《リョウさん、急いだ方が良さそうですし錬金術のみで作りましょう!》

「ブレン? どう言うこと?」

《前回は実験も兼ねて調合に錬金術を併用して使いましたが、今回は刻んだりする手間を省きたいので魔力を用いる錬金術のみでやってみて下さい!》

「……まだよく分からないが、やるだけやってみよう。サポートは頼む……!」
《承りました!》



「……まるで誰かと会話してるかのように独り言を言ってるが……信用したのは早まったかねぇ……?」

「ちがうよ? ブレンちゃんとお話してるんだよ!」

「ブレンちゃん?」



 お婆さんが作業台に置いた素材は三種類。

 うち二つの植物は精神を安定させる効果の期待できるものだ。

 果実は、お婆さんの言うように飲みやすくするための風味付けなのだろう。

 これらを調合して出来るものが低級の魔力回復薬──


《ではリョウさん、まずは素材をもっと近付けてその上に両手をかざしてください》

「こうかな……?」

《それで大丈夫です。次に作りたいものをイメージしながら魔力を込めます》

「えっと……作りたいのは魔力回復薬で、色は果汁が入るから若干オレンジ色かな……?」

《名前だけでも大丈夫ではありますが……リョウさんは、以前見たことが?》

「うん。以前のNWOで、何回か使ったこともあるよ。緑色の液体だよね?」

《そうです! 見た目のイメージも出来るなら成功率は上がりますから、今はありがたいですね!》


 おお! それは良かった!


《では、魔力を込めて作成してみて下さい》

「魔力を込めて──……ん?」


 ブレンに言われた通りに実行しようとすると、視界に何かが──




 魔力回復薬を作成しますか?

 現在選択している素材から、二個の低品質な魔力回復薬が作成出来ます。

 消費するMPは十です


 【はい】 【いいえ】

 

(調合とは大分違うんだな……うまく行きますように……)

 一度深呼吸して成功することを願いつつ、【はい】を選択しようとすると──


 視界に浮かんでいた文字をタップする間もなく文字は消えてしまい、手のひらから熱が抜けていく感覚がした。

 その直後、素材は光の粒子となって消えた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

レイブン領の面倒姫

庭にハニワ
ファンタジー
兄の学院卒業にかこつけて、初めて王都に行きました。 初対面の人に、いきなり婚約破棄されました。 私はまだ婚約などしていないのですが、ね。 あなた方、いったい何なんですか? 初投稿です。 ヨロシクお願い致します~。

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

なんとなく歩いてたらダンジョンらしき場所に居た俺の話

TB
ファンタジー
岩崎理(いわさきおさむ)40歳バツ2派遣社員。とっても巻き込まれ体質な主人公のチーレムストーリーです。

魔境暮らしの転生予言者 ~開発に携わったゲーム世界に転生した俺、前世の知識で災いを先読みしていたら「奇跡の予言者」として英雄扱いをうける~

鈴木竜一
ファンタジー
「前世の知識で楽しく暮らそう! ……えっ? 俺が予言者? 千里眼?」  未来を見通す千里眼を持つエルカ・マクフェイルはその能力を生かして国の発展のため、長きにわたり尽力してきた。その成果は人々に認められ、エルカは「奇跡の予言者」として絶大な支持を得ることになる。だが、ある日突然、エルカは聖女カタリナから神託により追放すると告げられてしまう。それは王家をこえるほどの支持を得始めたエルカの存在を危険視する王国側の陰謀であった。  国から追いだされたエルカだったが、その心は浮かれていた。実は彼の持つ予言の力の正体は前世の記憶であった。この世界の元ネタになっているゲームの開発メンバーだった頃の記憶がよみがえったことで、これから起こる出来事=イベントが分かり、それによって生じる被害を最小限に抑える方法を伝えていたのである。  追放先である魔境には強大なモンスターも生息しているが、同時にとんでもないお宝アイテムが眠っている場所でもあった。それを知るエルカはアイテムを回収しつつ、知性のあるモンスターたちと友好関係を築いてのんびりとした生活を送ろうと思っていたのだが、なんと彼の追放を受け入れられない王国の有力者たちが続々と魔境へとやってきて――果たして、エルカは自身が望むようなのんびりスローライフを送れるのか!?

ダンジョンで同棲生活始めました ひと回り年下の彼女と優雅に大豪邸でイチャイチャしてたら、勇者だの魔王だのと五月蝿い奴らが邪魔するんです

もぐすけ
ファンタジー
勇者に嵌められ、社会的に抹殺されてしまった元大魔法使いのライルは、普通には暮らしていけなくなり、ダンジョンのセーフティゾーンでホームレス生活を続けていた。 ある日、冒険者に襲われた少女ルシアがセーフティゾーンに逃げ込んできた。ライルは少女に頼まれ、冒険者を撃退したのだが、少女もダンジョン外で貧困生活を送っていたため、そのままセーフティゾーンで暮らすと言い出した。 ライルとルシアの奇妙な共同生活が始まった。

最強の男ギルドから引退勧告を受ける

たぬまる
ファンタジー
 ハンターギルド最強の男ブラウンが突如の引退勧告を受け  あっさり辞めてしまう  最強の男を失ったギルドは?切欠を作った者は?  結末は?  

処理中です...