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2章 村での生活
22話 セージ君に現れた副作用?
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さて、とにかく時間がないからさっさと作ろう。
さっき見た食事部屋のテーブルには、焼いたパンとサラダが残っていた。
なら、一緒に食べれそうな副食を作ればいいかな。
まずそこそこ大きい両手鍋の七割くらいまで水を入れて火にかける。
お湯が沸くまでにストレージから出したコモンセージ草を軽く水洗いして、葉っぱを取り外す。
外した葉っぱは半分にカットしておく。
前回、猪肉に多少の臭みがあるのは良く分かった。そして、コモンセージ草との相性が悪くないことも。
なら、しゃぶしゃぶみたいに茹でるときにコモンセージ草を入れておいても多少の臭み消しになるんじゃないか?
今回はそれを試すつもりだ。少し食べてみて合わないようなら違う方法でやるしかないけど……
「お兄さん、わたしは何をしたらいい?」
「じゃあまず、小皿と岩塩を持ってきてもらえるかな?」
「はーい!」
タンジーが小皿を用意してくれてるうちに次の作業だ。
猪肉を取り出して、どんどん薄くスライスしていく。
一塊の猪肉をスライスし終わると、お湯は既に沸騰していた。
「はい! 小皿とがんえんだよ!」
「ありがとう。どっちもすぐ取れるところに置いておいてね」
「じゃあここにおくね!」
タンジーが置いた場所を確認しつつ、沸騰しているお湯に切っておいたコモンセージ草を入れて、菜箸で軽く混ぜる。
十分に香りが出てきたら、薄くスライスした猪肉をニ枚だけ入れてしゃぶしゃぶする。
すぐに色が変わったので、一枚を小皿に取ってまず一口。
(ふむ……コモンセージ草は大きめに切ったから香りは強すぎないし、猪肉の臭みもほどよく散らされてるな)
とりあえず満足できる感じだったので、次に岩塩を軽くふって残りを口に放り込むと──
(!! これはうまい! レタスとか、野菜と一緒に食べても美味しそうだ!)
「タンジーも一枚食べてみるか?」
「うん!」
一応小皿をゆすいでから、茹でた猪肉を取って渡す。
俺と同じように最初はそのまま食べ、次に岩塩を振って食べていたが、どうやらタンジーは岩塩がない方がいいらしい。
なら、お好みで岩塩を振ってもらえばいいかな。
方向性が決まったので、どんどん猪肉をしゃぶしゃぶしていく。
その間にタンジーに中皿とザルを一つ持ってきてもらい、茹で上がった猪肉はザルに入れていく。
山積みになった猪肉の水気を切って、中皿に移せば完成だ!
茹でた猪肉は、余ったとしても翌日好きな味付けにして食べることも出来るしな。
それと……セージ君の様子からして、いくつか猪肉を塊で置いていった方がいいかもしれないな。
出来上がった豚……じゃなくて猪肉のしゃぶしゃぶを持って隣の部屋に運ぶ。
部屋に入った瞬間、刺すように鋭い視線が飛んできて思わず怯んでしまった……
セージ君の目が見開かれていて、血走っているようにも見えるからだ。
《おいおい……どれだけ肉に飢えたらこうなるんだよ……》
《これは……副作用なんでしょうか……? ほとんど食事も取れない状態から、ムキムキになってしまったわけですし……》
頭の中で独り言を呟いたつもりが、ちょっと念が強かったのかブレンにも聞こえてしまったようだな……
《って、副作用!? だとしたらこの状態は俺のせいじゃないか……!》
《リョウさん落ち着いて! 皆さん驚いてますよ!》
「お兄さん、どうしたの? 入り口で止まったら、わたしが入れないよ~」
タンジーの声で我に返ると、サラさんは心配したような顔で、セージ君は若干目を血走らせながらも不思議そうな顔をしていた。
どうやら、顔に出てしまっていたらしいな。
《リョウさん、まずは食事を運びましょう? さっきの話はまた日を改めて考えた方がいいと思います》
《そう、だな……》
俺は軽く頭を振って、意識を無理矢理に切り替えた。
「ごめんな、タンジー。ちょっと考え事しちゃってさ」
「歩きながらかんがえごとするのは、あぶないからやめた方がいいよ?」
「はい……気を付けます」
まさか、十歳前後の子に諭されてしまうとは……情けない……
テーブルに猪肉しゃぶしゃぶを置くと、セージ君の視線が猪肉に固定された。
まだ茹でたてだから、すごくいい香りが漂ってるんだよな。
俺は苦笑しながらセージ君の前に猪肉を取り分けた皿を置く。
「できたら、野菜やパンと一緒に食べてほしいんだけどな?」
「わかりました! いただきます!」
一言声をかけたが、果たして何割伝わってるんだかな……
そう不安に思わせるほどの勢いで猪肉を噛みちぎり、飲み込んでいくセージ君。
絶対消化に悪いぞ……
さりげなくセージ君の皿にサラダやパンを乗せると、一瞬だけ微妙な顔をしたが……
食べるペースを落としつつ、野菜やパンも一緒に食べてくれたからひと安心だ。
「あの、リョウさん……色々ごめんなさいね?」
「いえ、こちらこそこんな時間に上がり込んだ上に勝手に色々やっちゃって……申し訳無いです」
申し訳なさそうに謝ってきたサラさんに、俺も頭を下げた。
夜間にいきなりお邪魔して質問責めしたり、キッチン借りて料理したり……
明らかに非常識だったと、つい先程思い至った。
……何が〖俺のやってることは普通のはず〗だよ……
「あ、頭を上げてください! 私の方こそ色々とやってもらってばかりで……」
「ですが──」
「もー、二人ともなにやってるの? ……お肉なくなっちゃうよ?」
タンジーに呆れたように言われ、二人して顔を見合わせると、思わず苦笑してしまった。
そして猪肉の皿を目を移せば、残りは既に半分を切っていた……
セージ君……いくらなんでも食べすぎだろ……
さっき見た食事部屋のテーブルには、焼いたパンとサラダが残っていた。
なら、一緒に食べれそうな副食を作ればいいかな。
まずそこそこ大きい両手鍋の七割くらいまで水を入れて火にかける。
お湯が沸くまでにストレージから出したコモンセージ草を軽く水洗いして、葉っぱを取り外す。
外した葉っぱは半分にカットしておく。
前回、猪肉に多少の臭みがあるのは良く分かった。そして、コモンセージ草との相性が悪くないことも。
なら、しゃぶしゃぶみたいに茹でるときにコモンセージ草を入れておいても多少の臭み消しになるんじゃないか?
今回はそれを試すつもりだ。少し食べてみて合わないようなら違う方法でやるしかないけど……
「お兄さん、わたしは何をしたらいい?」
「じゃあまず、小皿と岩塩を持ってきてもらえるかな?」
「はーい!」
タンジーが小皿を用意してくれてるうちに次の作業だ。
猪肉を取り出して、どんどん薄くスライスしていく。
一塊の猪肉をスライスし終わると、お湯は既に沸騰していた。
「はい! 小皿とがんえんだよ!」
「ありがとう。どっちもすぐ取れるところに置いておいてね」
「じゃあここにおくね!」
タンジーが置いた場所を確認しつつ、沸騰しているお湯に切っておいたコモンセージ草を入れて、菜箸で軽く混ぜる。
十分に香りが出てきたら、薄くスライスした猪肉をニ枚だけ入れてしゃぶしゃぶする。
すぐに色が変わったので、一枚を小皿に取ってまず一口。
(ふむ……コモンセージ草は大きめに切ったから香りは強すぎないし、猪肉の臭みもほどよく散らされてるな)
とりあえず満足できる感じだったので、次に岩塩を軽くふって残りを口に放り込むと──
(!! これはうまい! レタスとか、野菜と一緒に食べても美味しそうだ!)
「タンジーも一枚食べてみるか?」
「うん!」
一応小皿をゆすいでから、茹でた猪肉を取って渡す。
俺と同じように最初はそのまま食べ、次に岩塩を振って食べていたが、どうやらタンジーは岩塩がない方がいいらしい。
なら、お好みで岩塩を振ってもらえばいいかな。
方向性が決まったので、どんどん猪肉をしゃぶしゃぶしていく。
その間にタンジーに中皿とザルを一つ持ってきてもらい、茹で上がった猪肉はザルに入れていく。
山積みになった猪肉の水気を切って、中皿に移せば完成だ!
茹でた猪肉は、余ったとしても翌日好きな味付けにして食べることも出来るしな。
それと……セージ君の様子からして、いくつか猪肉を塊で置いていった方がいいかもしれないな。
出来上がった豚……じゃなくて猪肉のしゃぶしゃぶを持って隣の部屋に運ぶ。
部屋に入った瞬間、刺すように鋭い視線が飛んできて思わず怯んでしまった……
セージ君の目が見開かれていて、血走っているようにも見えるからだ。
《おいおい……どれだけ肉に飢えたらこうなるんだよ……》
《これは……副作用なんでしょうか……? ほとんど食事も取れない状態から、ムキムキになってしまったわけですし……》
頭の中で独り言を呟いたつもりが、ちょっと念が強かったのかブレンにも聞こえてしまったようだな……
《って、副作用!? だとしたらこの状態は俺のせいじゃないか……!》
《リョウさん落ち着いて! 皆さん驚いてますよ!》
「お兄さん、どうしたの? 入り口で止まったら、わたしが入れないよ~」
タンジーの声で我に返ると、サラさんは心配したような顔で、セージ君は若干目を血走らせながらも不思議そうな顔をしていた。
どうやら、顔に出てしまっていたらしいな。
《リョウさん、まずは食事を運びましょう? さっきの話はまた日を改めて考えた方がいいと思います》
《そう、だな……》
俺は軽く頭を振って、意識を無理矢理に切り替えた。
「ごめんな、タンジー。ちょっと考え事しちゃってさ」
「歩きながらかんがえごとするのは、あぶないからやめた方がいいよ?」
「はい……気を付けます」
まさか、十歳前後の子に諭されてしまうとは……情けない……
テーブルに猪肉しゃぶしゃぶを置くと、セージ君の視線が猪肉に固定された。
まだ茹でたてだから、すごくいい香りが漂ってるんだよな。
俺は苦笑しながらセージ君の前に猪肉を取り分けた皿を置く。
「できたら、野菜やパンと一緒に食べてほしいんだけどな?」
「わかりました! いただきます!」
一言声をかけたが、果たして何割伝わってるんだかな……
そう不安に思わせるほどの勢いで猪肉を噛みちぎり、飲み込んでいくセージ君。
絶対消化に悪いぞ……
さりげなくセージ君の皿にサラダやパンを乗せると、一瞬だけ微妙な顔をしたが……
食べるペースを落としつつ、野菜やパンも一緒に食べてくれたからひと安心だ。
「あの、リョウさん……色々ごめんなさいね?」
「いえ、こちらこそこんな時間に上がり込んだ上に勝手に色々やっちゃって……申し訳無いです」
申し訳なさそうに謝ってきたサラさんに、俺も頭を下げた。
夜間にいきなりお邪魔して質問責めしたり、キッチン借りて料理したり……
明らかに非常識だったと、つい先程思い至った。
……何が〖俺のやってることは普通のはず〗だよ……
「あ、頭を上げてください! 私の方こそ色々とやってもらってばかりで……」
「ですが──」
「もー、二人ともなにやってるの? ……お肉なくなっちゃうよ?」
タンジーに呆れたように言われ、二人して顔を見合わせると、思わず苦笑してしまった。
そして猪肉の皿を目を移せば、残りは既に半分を切っていた……
セージ君……いくらなんでも食べすぎだろ……
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