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1章 冒険の始まり
34話 森での採取
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顔を軽くはたいて気合いを入れ直した俺は、周囲を警戒し始めたのだが……
僅か数分で、俺は戸惑っていた。
まだ森に入ってすぐの場所なのに、なぜこんなことに──
《リョウさん、リョウさん! こっちにもたくさんのオドルタケがありますよ!》
「おおっ! こっちにはシメジタケが沢山だ!」
《あっ! リョウさん後ろにエノキノタケが!》
……こんな感じで、キノコフィーバーしていた。
山奥とかの日陰に生えてるならわかるぞ?
でも、ここは樹が適度に距離を空けて生えていて、風通しも日当たりもいいのに……
何故か、様々なキノコがめちゃくちゃ大量に生えてるんだ……
こんなに沢山あるなら、一部もらったくらいじゃ全然減らないからな。
うーん……晩御飯は、キノコご飯やキノコ鍋、もしくはキノコのソテーとかもいいんじゃないだろうか!?
──などと、完璧に気が緩みまくっていた。
でも仕方ないんだ、全く魔物の気配がないんだもの。
キノコを食べる生き物とか居そうなんだがな。
この辺りには水気のある木の実や果物が一切ないから、過ごしにくいのかもしれないが。
十分ほどで、ストレージにはかなりのキノコが集まった。
これだけあれば、毎食キノコ料理作っても一週間はもつな!
あとは、果物の類いがあれば文句無しなんだけど……
「ブレン、果物か花が近くにあるかどうか、空から見てもらえないか?」
《わかりました! ちょっと飛んで見てきますね!》
肩に止まっていたブレンにお願いをしたら、すぐに空へ飛んでいった。
……ぐるぐる旋回しながら高度を上げていくのは、なんか訳があるんだろうか?
俺が上空を見上げていると、ブレンが旋回をやめてホバリングしながら周囲を見回し始めた。
そしてある方向を向いた時に動きを止め、次の瞬間……急降下し始めた。
えっ!? 突っ込んでくる!
「ブレン! 危ないぞ! って……うわあっ!!」
槍を手放して、野球のボールを取るように両手で構えていたら、手の平にすっぽりとブレンが入り──
ボスン!
俺は強い衝撃を抑えきれずに、地面に尻餅をついた。
「ぐはっ……うぅ、いたた……はっ、ブレン!? 大丈夫か!?」
俺が慌てて手の平を覗き込むと、見た感じ外傷はないようだが……
なんか、目が変なような……?
《はうぅ……目が、回って……》
「無茶しすぎだろ……少し休みな。警戒はしてるからさ」
《うぅ、申し訳ありません……》
数分休んだだけで、ブレンはめまいから立ち直った。
思ったより、回復早かったな……無理してないだろうな?
《ご迷惑お掛けしました……》
「もう少し休んでいてもいいんだぞ?」
《いえ、大丈夫です! 状態異常耐性のスキルも持ってますから!》
大丈夫アピールなのか、俺の腕で翼を交互に広げたりポーズをとったりしている。
こうして見てると、懐っこい小鳥なんだよな。
なぜかな……ブレンの動きが、だんだん求愛行動してる雄の様に見えるのだが……?
「おーい、ブレン?」
《はっ!! 私は、なにを……?》
えぇ……やっぱり鳥化してきてないか?
「やっぱり、時間が経ったら完全に鳥に──」
《ならないです! ……ならない、はずなんです……》
落ち込んでる……やはり気にしてはいるのか。
今後は、行動を止めるだけにして、余計なことを言わないように気を付けねばな。
「それで、どうだった? なにか見つかったかな?」
《……私は鳥じゃない……私は人……》
「ブレン、おーいブレン! 帰ってこーい!」
《あ……すみません、呼びました?》
やっと正気に戻ってくれたか……
これは、かける言葉に気を付けないとな。
「空から、なにか見えたか教えてくれないか?」
《えっとですね、旅人の祭壇が見えましたよ! 方向は、あちらです!》
そう言ってブレンは翼で方向を示してくれた。
……果物や花は見つからなかったんだろうか?
ブレンが示す方を見ると、奥に行くほど木々の間隔がかなり狭まっているように見える。
「道が険しくなってるように見えるね。初日もあんな感じだったかな」
《おそらく、モンスターも出るはずです。ここまでより、警戒はしっかりお願いしますね。》
「了解。気を付けていこう」
槍をしっかりと両手で握り、いつでも戦えるようにしておく。
ここからが本番だな。
《まだ安全に戦うには、装備もレベルも不足しています。危険だと思ったら、逃げなきゃ駄目ですよ?》
「わかった。少なくとも、熊が出たら村に引き返そう」
狼と同じく、熊も昔と同じなら……
狼みたいに攻撃を受け止めることは不可能だろうからな。
旅人の祭壇目指してしばし歩いていると、周りの景色はがらりと変わった。
木々の密度が高くなり、薄暗く湿ったような空気を感じる。
こういう感じの方が、キノコありそうなんだけどな。
《リョウさん、道を外れますが、右側を向いてまっすぐ十メートルほど進んでみてください》
「もしかして、狼のドロップ品見つけた?」
《見つけてはいません。ですが、二匹目を倒した場所です》
なら見つかったも同然だな。他に触れる存在はいないわけだし。
そう思いながら道をそれて進むと足元には牙や爪のような物が落ちていた。
「ブレン、これかな? いくつかあるけど」
肩から地面に降りてじっくりと観察したブレンは、すぐに肩に戻ってきた。
《間違いないようです。少し多いですが、狼のドロップ品ですね》
「じゃあ回収だな」
俺は地面に手をつけると、頭で念じた。
(目の前のドロップ品を収納)
すると、牙と爪は目の前から消失した。
うまく収納できたみたいだな。
確認のために、ストレージを開いてアイテムの詳細を見てみる。
『フォレストウルフの牙
武器や装飾品の素材として利用できる。品質は悪い〗
『フォレストウルフの爪×2
武器や装飾品の素材として利用できる。品質は悪い〗
品質は悪いのか。
まあ、二日も放置したんだから仕方ないよな……
────
オドルタケ✕10株入手
シメジタケ✕10株入手
エノキタケ✕10株入手
森狼の牙✕1入手
森狼の爪✕2入手
僅か数分で、俺は戸惑っていた。
まだ森に入ってすぐの場所なのに、なぜこんなことに──
《リョウさん、リョウさん! こっちにもたくさんのオドルタケがありますよ!》
「おおっ! こっちにはシメジタケが沢山だ!」
《あっ! リョウさん後ろにエノキノタケが!》
……こんな感じで、キノコフィーバーしていた。
山奥とかの日陰に生えてるならわかるぞ?
でも、ここは樹が適度に距離を空けて生えていて、風通しも日当たりもいいのに……
何故か、様々なキノコがめちゃくちゃ大量に生えてるんだ……
こんなに沢山あるなら、一部もらったくらいじゃ全然減らないからな。
うーん……晩御飯は、キノコご飯やキノコ鍋、もしくはキノコのソテーとかもいいんじゃないだろうか!?
──などと、完璧に気が緩みまくっていた。
でも仕方ないんだ、全く魔物の気配がないんだもの。
キノコを食べる生き物とか居そうなんだがな。
この辺りには水気のある木の実や果物が一切ないから、過ごしにくいのかもしれないが。
十分ほどで、ストレージにはかなりのキノコが集まった。
これだけあれば、毎食キノコ料理作っても一週間はもつな!
あとは、果物の類いがあれば文句無しなんだけど……
「ブレン、果物か花が近くにあるかどうか、空から見てもらえないか?」
《わかりました! ちょっと飛んで見てきますね!》
肩に止まっていたブレンにお願いをしたら、すぐに空へ飛んでいった。
……ぐるぐる旋回しながら高度を上げていくのは、なんか訳があるんだろうか?
俺が上空を見上げていると、ブレンが旋回をやめてホバリングしながら周囲を見回し始めた。
そしてある方向を向いた時に動きを止め、次の瞬間……急降下し始めた。
えっ!? 突っ込んでくる!
「ブレン! 危ないぞ! って……うわあっ!!」
槍を手放して、野球のボールを取るように両手で構えていたら、手の平にすっぽりとブレンが入り──
ボスン!
俺は強い衝撃を抑えきれずに、地面に尻餅をついた。
「ぐはっ……うぅ、いたた……はっ、ブレン!? 大丈夫か!?」
俺が慌てて手の平を覗き込むと、見た感じ外傷はないようだが……
なんか、目が変なような……?
《はうぅ……目が、回って……》
「無茶しすぎだろ……少し休みな。警戒はしてるからさ」
《うぅ、申し訳ありません……》
数分休んだだけで、ブレンはめまいから立ち直った。
思ったより、回復早かったな……無理してないだろうな?
《ご迷惑お掛けしました……》
「もう少し休んでいてもいいんだぞ?」
《いえ、大丈夫です! 状態異常耐性のスキルも持ってますから!》
大丈夫アピールなのか、俺の腕で翼を交互に広げたりポーズをとったりしている。
こうして見てると、懐っこい小鳥なんだよな。
なぜかな……ブレンの動きが、だんだん求愛行動してる雄の様に見えるのだが……?
「おーい、ブレン?」
《はっ!! 私は、なにを……?》
えぇ……やっぱり鳥化してきてないか?
「やっぱり、時間が経ったら完全に鳥に──」
《ならないです! ……ならない、はずなんです……》
落ち込んでる……やはり気にしてはいるのか。
今後は、行動を止めるだけにして、余計なことを言わないように気を付けねばな。
「それで、どうだった? なにか見つかったかな?」
《……私は鳥じゃない……私は人……》
「ブレン、おーいブレン! 帰ってこーい!」
《あ……すみません、呼びました?》
やっと正気に戻ってくれたか……
これは、かける言葉に気を付けないとな。
「空から、なにか見えたか教えてくれないか?」
《えっとですね、旅人の祭壇が見えましたよ! 方向は、あちらです!》
そう言ってブレンは翼で方向を示してくれた。
……果物や花は見つからなかったんだろうか?
ブレンが示す方を見ると、奥に行くほど木々の間隔がかなり狭まっているように見える。
「道が険しくなってるように見えるね。初日もあんな感じだったかな」
《おそらく、モンスターも出るはずです。ここまでより、警戒はしっかりお願いしますね。》
「了解。気を付けていこう」
槍をしっかりと両手で握り、いつでも戦えるようにしておく。
ここからが本番だな。
《まだ安全に戦うには、装備もレベルも不足しています。危険だと思ったら、逃げなきゃ駄目ですよ?》
「わかった。少なくとも、熊が出たら村に引き返そう」
狼と同じく、熊も昔と同じなら……
狼みたいに攻撃を受け止めることは不可能だろうからな。
旅人の祭壇目指してしばし歩いていると、周りの景色はがらりと変わった。
木々の密度が高くなり、薄暗く湿ったような空気を感じる。
こういう感じの方が、キノコありそうなんだけどな。
《リョウさん、道を外れますが、右側を向いてまっすぐ十メートルほど進んでみてください》
「もしかして、狼のドロップ品見つけた?」
《見つけてはいません。ですが、二匹目を倒した場所です》
なら見つかったも同然だな。他に触れる存在はいないわけだし。
そう思いながら道をそれて進むと足元には牙や爪のような物が落ちていた。
「ブレン、これかな? いくつかあるけど」
肩から地面に降りてじっくりと観察したブレンは、すぐに肩に戻ってきた。
《間違いないようです。少し多いですが、狼のドロップ品ですね》
「じゃあ回収だな」
俺は地面に手をつけると、頭で念じた。
(目の前のドロップ品を収納)
すると、牙と爪は目の前から消失した。
うまく収納できたみたいだな。
確認のために、ストレージを開いてアイテムの詳細を見てみる。
『フォレストウルフの牙
武器や装飾品の素材として利用できる。品質は悪い〗
『フォレストウルフの爪×2
武器や装飾品の素材として利用できる。品質は悪い〗
品質は悪いのか。
まあ、二日も放置したんだから仕方ないよな……
────
オドルタケ✕10株入手
シメジタケ✕10株入手
エノキタケ✕10株入手
森狼の牙✕1入手
森狼の爪✕2入手
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