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1章 冒険の始まり
18話 たくましいタンジー
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これは……かなりの額だな。もしかして……
「サラさん……これ、セージ君の治療費にするために貯めていたお金だったんじゃありませんか?」
「そうですよ。リョウさんのお陰でセージだけじゃなくてタンジーまで無事だった……だからこのマネを──」
「受け取れません。子供のために貯めていたお金なら、子供に使ってください。」
「でも……お礼を──」
「お礼なら、生活が安定してからでも全然遅くないですよ? だから、ちゃんとしたものを子供達に食べさせてあげて欲しいです」
「……」
俺にとってはサラさん達が、健康に過ごしてくれたらそれだけでいいんだけどね……
しかしサラさんはなにかぶつぶつ言っている……やはり納得できてないよな……
「あ、お母さんとお兄さん! こんにちは!」
そこにタンジーが走ってきた。
「タンジーちゃん、こんにちは!」
もうすっかり元気だな。やはり、子供は元気が一番だな!
「タンジー、どうかしたの? ……まさかセージになにか……」
「んーん、ちがうよ! セージなら、ぐっすりねちゃってへんじないから、お母さんをさがしにきたの! 気付いたらいないんだもん!」
サラさんは、しまったという顔をしている……伝言をしてなかったのか?
「ごめんね、一声かけるの忘れちゃってた」
「もー、お母さんいつもぼーっとしてるんだから、気を付けてよね!」
いつもなんだな……タンジーの方がお母さんっぽい。
「お母さん、セージがおきたらごはんあげるんでしょ? ここにいていいの?」
「でも……まだリョウさんにお礼が──」
「もう! お兄さんとお話したいだけでしょ!」
おお! タンジー! 頑張れ!
「お兄さんには、わたしが村のあんないしてくるから、お母さんはセージをおねがいね!」
「えぇ……ずるい……」
……サラさんが拗ねてる……本当にタンジーの方が上手だな。
って、いつから村の案内されることになったんだ!?
「さいしょにだまってお兄さんのところに行ったのはお母さんなんだから、次はわたし、だよね?」
「……はぁい。 ……リョウさん、お礼の件はまた後程……タンジーをよろしくお願いしますね」
そう言ってサラさんは、とぼとぼと帰っていった。
さっき一瞬だが、タンジーから威圧が……?
こんなに小さいのに、凄いな……
そんなことを考えていると、タンジーはくるっとこちらを向いて、
「お兄さん、うちのお母さんがごめいわくおかけしました……お母さんは、やさしい人にすごくほれっぽいんです……」
え……惚れっぽいって、大丈夫なのか?
悪いやつに騙されたりしそうだが……
「お父さんが、まものにやられちゃってから、おとこの人がお母さんのおしごとの手伝いにきたりして、やさしくされるとすぐああなって……」
……サラさんは、男性に依存するタイプだったんだな……
というか、タンジー……子供なのに苦労してるな……
「でも、おとこの人たちはお母さんねらいの人ばかりで、ほんとうにやさしい人なんかいなかった。だから、わたしがお母さんを守ってきたんだよ」
「タンジーちゃんは、優しいんだな」
「ううん、お父さんいなくなって、お母さんがいつも泣いてたの……そのとき思ったんだ。わたしがお母さんもセージも守るんだって」
思わず、タンジーの頭を撫でていた。こんなに小さいのに、沢山のものを背負ってるんだな……
「やっぱりタンジーちゃんは優しいよ。でも、そんなに頑張りすぎたらタンジーちゃんが疲れちゃうだろ? たまには、宿屋の女将さんとかに頼るのもいいんじゃないかな?」
「……うん、かんがえとく。……お兄さんは、ほんとうにやさしいよね」
「本当にって……」
「だって、わたしのことをしんぱいしてくれるおとこの人は今までいなかったよ?」
……何て事だ……身近には、最低なやつしかいなかったのか……?
「お兄さんが、お父さんになってくれたらあんしんなんだけど……」
思わず、頭を撫でる手が止まってしまった……
「だいじょうぶ、おしつけたりしないよ。お兄さんにも、えらぶけんりがあるからね!」
……どこで覚えてくるんだ、そんな言葉……
どうやら苦笑していたらしく、俺の顔を見上げていたタンジーは、
「そのかお……どこでおぼえてきたんだ? っておもってるでしょ!」
「正解。よく分かったね?」
「お母さんにやさしくしてた人たちのかおをかんさつしてたら、なんとなく分かるようになったんだ……」
無言でまた頭を撫でる。この様子だと、さっきの威圧も覚えるべくして覚えたんだろうな……
不憫だ……
「あ、ごめんなさい……はなしこんじゃった……」
「大丈夫だよ。タンジーちゃんの頑張っていた話が聞けて良かった」
「きいてくれてありがとう! お兄さんはなしやすいから、いっぱいはなしちゃった!」
はしゃいでいるタンジーを見た俺は、父親ってこんな心境なのかな……などと思っていた。
やっぱり、子供は楽しそうにしてないとな!
「じゃあ、村をあんないしようとおもうんだけど、きぼうはある?」
「うーん……タンジーちゃんのお任せコースでどうかな?」
すると、タンジーは満面の笑みを浮かべて、
「まかせて!」
と気合いの入った返事をしてくれた。
「まずはここ!」
タンジーに連れてこられたのは、薬瓶のマークの店だった。
「ぼうけんしゃの人ならいちどはおせわになる、くすりやさんだよ!」
「おお! やっぱり薬屋か。ポーションの素材とかもあるのかな?」
「んー、そこまではわからないけど……おばあちゃんにきいたらきっとわかるよ!」
そんな話をしていたら、背筋がまっすぐなおばあさんが薬屋から出てきた。
「あ、おばあちゃん。こんにちは!」
「やあタンジーちゃん。こんにちは。……このおじさんは誰だい?」
明らかに不審者を見る目で俺を見るおばあさん。
すると、身体中を探られてるような感覚があり、思わず後ろに飛び退く。
今のはなんだ!?
「……へぇ、感覚は鋭い方だね。冒険者かの?」
「……はい、昨日から宿屋でお世話になっている、リョウって言います」
そう言いながらも、鋭い目付きを向けてくるおばあさん。
……もしかして……俺を鑑定してないか?
そう思って、おばあさんの目を強く見返すと、探られてるような感覚が消えた。
「……あんた、なかなかやるね。とてもレベルが十一とは思えないよ」
「……やっぱり鑑定してましたか。この世界には、個人情報保護法とか……ないだろな……」
ため息をつきながらも、おばあさんからは目を離さない。そんな時──
「おばあちゃん! しょたいめんの人をいきなりかんていするのはよくないよ! お兄さんにあやまって!」
タンジーが怒り出した。
「タ、タンジーちゃん……でも──」
「でもじゃないの! お兄さんは、いのちのおんじんさんなんだよ! 森でおおかみからたすけてくれたんだから!」
驚いたのか、驚愕の表情を浮かべるおばあさん。
「……あんた、それは本当かい? そんな低いレベルでザワメキの森林の──」
「……、お ば あ ち ゃ ん ……」
「ヒィッ!!」
ゾクッとするほどの殺気がタンジーから発せられた。
……え、威圧にしても強すぎないか!? おばあさん、がたがた震えてるぞ……
「おばあちゃん? 人のはなしをきかないで、わるぐちを言うのは、わるい人なんだよ……?」
「ごっごめんよ、タンジーちゃん!! ワシが悪かったから、威圧を解いておくれ!」
うおお……タンジー……怒るとすごい怖いな……
これなら狼くらい楽勝だったんでは……?
「サラさん……これ、セージ君の治療費にするために貯めていたお金だったんじゃありませんか?」
「そうですよ。リョウさんのお陰でセージだけじゃなくてタンジーまで無事だった……だからこのマネを──」
「受け取れません。子供のために貯めていたお金なら、子供に使ってください。」
「でも……お礼を──」
「お礼なら、生活が安定してからでも全然遅くないですよ? だから、ちゃんとしたものを子供達に食べさせてあげて欲しいです」
「……」
俺にとってはサラさん達が、健康に過ごしてくれたらそれだけでいいんだけどね……
しかしサラさんはなにかぶつぶつ言っている……やはり納得できてないよな……
「あ、お母さんとお兄さん! こんにちは!」
そこにタンジーが走ってきた。
「タンジーちゃん、こんにちは!」
もうすっかり元気だな。やはり、子供は元気が一番だな!
「タンジー、どうかしたの? ……まさかセージになにか……」
「んーん、ちがうよ! セージなら、ぐっすりねちゃってへんじないから、お母さんをさがしにきたの! 気付いたらいないんだもん!」
サラさんは、しまったという顔をしている……伝言をしてなかったのか?
「ごめんね、一声かけるの忘れちゃってた」
「もー、お母さんいつもぼーっとしてるんだから、気を付けてよね!」
いつもなんだな……タンジーの方がお母さんっぽい。
「お母さん、セージがおきたらごはんあげるんでしょ? ここにいていいの?」
「でも……まだリョウさんにお礼が──」
「もう! お兄さんとお話したいだけでしょ!」
おお! タンジー! 頑張れ!
「お兄さんには、わたしが村のあんないしてくるから、お母さんはセージをおねがいね!」
「えぇ……ずるい……」
……サラさんが拗ねてる……本当にタンジーの方が上手だな。
って、いつから村の案内されることになったんだ!?
「さいしょにだまってお兄さんのところに行ったのはお母さんなんだから、次はわたし、だよね?」
「……はぁい。 ……リョウさん、お礼の件はまた後程……タンジーをよろしくお願いしますね」
そう言ってサラさんは、とぼとぼと帰っていった。
さっき一瞬だが、タンジーから威圧が……?
こんなに小さいのに、凄いな……
そんなことを考えていると、タンジーはくるっとこちらを向いて、
「お兄さん、うちのお母さんがごめいわくおかけしました……お母さんは、やさしい人にすごくほれっぽいんです……」
え……惚れっぽいって、大丈夫なのか?
悪いやつに騙されたりしそうだが……
「お父さんが、まものにやられちゃってから、おとこの人がお母さんのおしごとの手伝いにきたりして、やさしくされるとすぐああなって……」
……サラさんは、男性に依存するタイプだったんだな……
というか、タンジー……子供なのに苦労してるな……
「でも、おとこの人たちはお母さんねらいの人ばかりで、ほんとうにやさしい人なんかいなかった。だから、わたしがお母さんを守ってきたんだよ」
「タンジーちゃんは、優しいんだな」
「ううん、お父さんいなくなって、お母さんがいつも泣いてたの……そのとき思ったんだ。わたしがお母さんもセージも守るんだって」
思わず、タンジーの頭を撫でていた。こんなに小さいのに、沢山のものを背負ってるんだな……
「やっぱりタンジーちゃんは優しいよ。でも、そんなに頑張りすぎたらタンジーちゃんが疲れちゃうだろ? たまには、宿屋の女将さんとかに頼るのもいいんじゃないかな?」
「……うん、かんがえとく。……お兄さんは、ほんとうにやさしいよね」
「本当にって……」
「だって、わたしのことをしんぱいしてくれるおとこの人は今までいなかったよ?」
……何て事だ……身近には、最低なやつしかいなかったのか……?
「お兄さんが、お父さんになってくれたらあんしんなんだけど……」
思わず、頭を撫でる手が止まってしまった……
「だいじょうぶ、おしつけたりしないよ。お兄さんにも、えらぶけんりがあるからね!」
……どこで覚えてくるんだ、そんな言葉……
どうやら苦笑していたらしく、俺の顔を見上げていたタンジーは、
「そのかお……どこでおぼえてきたんだ? っておもってるでしょ!」
「正解。よく分かったね?」
「お母さんにやさしくしてた人たちのかおをかんさつしてたら、なんとなく分かるようになったんだ……」
無言でまた頭を撫でる。この様子だと、さっきの威圧も覚えるべくして覚えたんだろうな……
不憫だ……
「あ、ごめんなさい……はなしこんじゃった……」
「大丈夫だよ。タンジーちゃんの頑張っていた話が聞けて良かった」
「きいてくれてありがとう! お兄さんはなしやすいから、いっぱいはなしちゃった!」
はしゃいでいるタンジーを見た俺は、父親ってこんな心境なのかな……などと思っていた。
やっぱり、子供は楽しそうにしてないとな!
「じゃあ、村をあんないしようとおもうんだけど、きぼうはある?」
「うーん……タンジーちゃんのお任せコースでどうかな?」
すると、タンジーは満面の笑みを浮かべて、
「まかせて!」
と気合いの入った返事をしてくれた。
「まずはここ!」
タンジーに連れてこられたのは、薬瓶のマークの店だった。
「ぼうけんしゃの人ならいちどはおせわになる、くすりやさんだよ!」
「おお! やっぱり薬屋か。ポーションの素材とかもあるのかな?」
「んー、そこまではわからないけど……おばあちゃんにきいたらきっとわかるよ!」
そんな話をしていたら、背筋がまっすぐなおばあさんが薬屋から出てきた。
「あ、おばあちゃん。こんにちは!」
「やあタンジーちゃん。こんにちは。……このおじさんは誰だい?」
明らかに不審者を見る目で俺を見るおばあさん。
すると、身体中を探られてるような感覚があり、思わず後ろに飛び退く。
今のはなんだ!?
「……へぇ、感覚は鋭い方だね。冒険者かの?」
「……はい、昨日から宿屋でお世話になっている、リョウって言います」
そう言いながらも、鋭い目付きを向けてくるおばあさん。
……もしかして……俺を鑑定してないか?
そう思って、おばあさんの目を強く見返すと、探られてるような感覚が消えた。
「……あんた、なかなかやるね。とてもレベルが十一とは思えないよ」
「……やっぱり鑑定してましたか。この世界には、個人情報保護法とか……ないだろな……」
ため息をつきながらも、おばあさんからは目を離さない。そんな時──
「おばあちゃん! しょたいめんの人をいきなりかんていするのはよくないよ! お兄さんにあやまって!」
タンジーが怒り出した。
「タ、タンジーちゃん……でも──」
「でもじゃないの! お兄さんは、いのちのおんじんさんなんだよ! 森でおおかみからたすけてくれたんだから!」
驚いたのか、驚愕の表情を浮かべるおばあさん。
「……あんた、それは本当かい? そんな低いレベルでザワメキの森林の──」
「……、お ば あ ち ゃ ん ……」
「ヒィッ!!」
ゾクッとするほどの殺気がタンジーから発せられた。
……え、威圧にしても強すぎないか!? おばあさん、がたがた震えてるぞ……
「おばあちゃん? 人のはなしをきかないで、わるぐちを言うのは、わるい人なんだよ……?」
「ごっごめんよ、タンジーちゃん!! ワシが悪かったから、威圧を解いておくれ!」
うおお……タンジー……怒るとすごい怖いな……
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