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1章 冒険の始まり

13話 セージ君の症状

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「……タンジー? どうかしたの?」
「あ、おかあさん、ただいま。お兄さんとお話してたんだ!」


 タンジーが少し元気になってくれてよかった。


「リョウさん! 早速来てくれたんですね!」


 な、なんか……前回と違ってサラさんの勢いが強いな。


「考え事をしながら散歩していたら、ここに来てたんです」

「そうでしたか……でも、来てくれて嬉しいです! 起きてはこれないけれど、セージもきっと喜びます」


 ……なんで俺はこんなに歓迎されてるんだろう。応急処置して運んできただけだが……


「お兄さん、今からお昼ごはんだけど食べてく?」
「それはいい案ね!」


 サラさんは満面の笑みを浮かべているが……俺、食べたばっかりなんだよな……


「リョウさん、あまりいいものはありませんが、お礼をかねてご一緒にいかがですか……?」

「すみません……実は俺さっき食べてきてしまいまして……」

「そうですか……」


 明らかにがっかりした顔をしたサラさん。……このまま帰るのは後味悪いな……


「そうだお兄さん、タンジーにくれたっていうおくすり、まだないかな? もしかしたらセージも元気になれるかも!」

「ごめんね。お薬はもうないんだ……」


 タンジーもがっかりしてうつむいてしまったが、症状を詳しく見たら分かることがあるかもしれないな……


「サラさん、セージ君の様子を見させて貰えませんか? もしかしたら、なにか分かることがあるかもしれません」
「本当ですか!?」


 サラさんがかなりの勢いで詰め寄ってきた。近いって!!


「サラさん、落ち着いて下さい。少しでも病気について分かればと思っただけでして……治せるという訳では──」
「お願いします。見てあげて下さい」


 サラさんは、さっきまで違って真剣な表情で頭を下げてきた。


「たとえ、なにも分からなかったとしても、リョウさんを責めるようなことは決して致しません」
「お兄さん、タンジーからもおねがい! セージを見てあげて!」


 もともと見てみるつもりではあったけど、ここまで家族を心配する思いには、応えたいな。


「分かりました。何が出来るかはわからないけれど……セージ君を見させて下さい」



 サラさんがタンジーの昼食準備をしている間に、俺がセージ君の寝ている部屋に入ると──鳥肌が立った。

 部屋の温度がかなり下がっていたからだ。


 セージ君はどうやらかなり熱があるみたいで、顔も赤く……息も苦しそうだ。

 時たま軽く痙攣けいれんしている……これは……正直あまり時間がないかもしれないな……


「サラさん、かなり部屋の温度低いですね」


 サラさんがこちらに来たので室温について聞いてみた。


「はい……熱が高かったので濡らしたタオルを当てたのですが……急に痙攣けいれんするようになってしまい……」


 恐水病に近いな……確かあれは水を見たり飲んだりするのを恐れるようなものだったはずだが……


「他に体を冷やすには、部屋の温度を下げるしか……」

「なるほど……納得です。サラさん、俺はすぐ宿に戻ります。調合スキルで熱を下げるれるものが作れないか試してみます」


 覚えたスキルに調合スキルがあったからな……詳しく調べたら、使えるものがあるかもしれない。


「よろしくお願いします……」


 サラさんに頭を下げられる。……無事に出来ることを願うしかないな……


「出来る限りの事はします。セージ君をしっかり見ていてあげてください」


 そう言って急いで帰ろうとすると、タンジーから呼び止められた。


「お兄さん、セージなおりそう?」

「……頑張ってお薬作れるか試してくるよ」


 ふとテーブルを見ると、かなり色が薄いスープと硬そうなパンを食べているのが目に入った。


「よかったらこれも食べて。サラさんの分も置いておきますから、よかったら食べてください」

 ストレージから、森で採取した果物を数種類テーブルに出しておいた。


「リョウさん……」
「お二人まで倒れてしまったら大変ですからね……では、お邪魔しました」


 二人に見送られて、早足で宿に戻る。女将さんに一声かけて、調合をするから部屋にこもることを伝えた俺に、女将さんがなにかを持ってきた。

 調合するための器、混ぜるための棒、細かく材料を刻むための包丁を貸してくれた。


「あんたの顔を見りゃわかる。急ぐんだろう?」


 女将さんはニヤリと笑い──


「部屋を汚してもツケにしとくから、遠慮せずにやりな!」


 ……ツケだと、遠慮なくは……いや、今はそれどころじゃないか。


「ありがとうございます!」


 女将さんに頭を下げて部屋にもどり、メニューから調合をタップして詳細を開く。

 さあ、やれるだけやってみよう!
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