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一章 森の中の小さな村

13話 一件落着……かな……?

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 村人全員から村長としてふさわしくないと言われ、乱心して暴れだした村長。

 キョウセンの剣を両手で持ち、まるで剣に振り回されているかのようにめちゃくちゃに剣を振るっている。

 僕は村長の真後ろにいたけど、めちゃくちゃに剣を振ってるのは避けにくいから少し後ろに下がっていた。


「わ、私は……私は、悪くないんだぁぁ!! なのに、どいつもこいつも!!」

「いや、どう考えても悪いだろ……人の事よく言えたもんだなぁ……?」
「突っ込んでる場合じゃないぞぃ! お主も早く逃げるのじゃ!」

「俺のことはいい! ジィさんこそ、さっさと離れろよ!」


 ……二人共譲り合って逃げようとしないや……

 あまりやりたくなかったけど、仕方ないかな──


「おお、お前達が、余計なことを言わなければ、こんなことには、ならなかったんだぁぁぁ!!」
「ぬぅ! やらせぬぞ!」


 錯乱した村長はついに二人をターゲットにしたのか、二人めがけて剣を振り上げた。

 キョウセンをかばったお爺さんは避けるのを諦めて杖を構え、受け流しを試みたみたいだけど……

 村長が右上段から振り下ろして来た剣を、木の杖で受け流すのは荷が重かったのか……

 お爺さんの杖が折れてしまった……


「ぬぅ……!」
「ジィさん!」
「「「司祭様!!」」」


 村人達の悲鳴が上がった時、僕はすでに村長の背後から左側に回り込んでいた。


「村長、ごめんなさい!」


 僕は少ししゃがみながら腰に両手を構え、全身のバネを使って体当たりするように掌底をぶち当てる──


 ──格闘術スキル〖双掌撃〗──


「ぐがはっ……」


 村長の横っ腹に当たった掌に、あばらが折れる感触が伝わってきた……!

 僕の全体重を掛けた一撃は、剣を振り下ろそうとしていた村長を数メートル吹き飛ばした。

 でも、全身全霊を込めてスキルを模倣した一撃を放った僕の両腕には、ものすごい痛みが走った……

 痛い……痛過ぎる……! 

 あまりの痛みに僕は地面に座り込んでしまった。両腕に、全く力が入らないや……

 多分、折れてはないと思うんだけど……

 やっぱり夢と違って特別に鍛えていたわけじゃないから、反動がキツ過ぎるよ……!


「ムト君! 大丈夫かの!?」

「うん。お爺さん達は、大丈夫……?」

「ワシらは大丈夫じゃ! ムト君が守ってくれたからのぅ!」


 吹き飛んだ村長の手からお爺さん達の方に剣が飛んでいったけど、お爺さんが折れた杖で防いでくれていたみたい……!

 よかった……

 ……でも、タイミングがギリギリだったから村長には全く手加減が出来なかったな……

 ……! そうだ、早く村長を回復して貰わないと!!


「お爺さん、村長に回復を、お願いします……!」
「じゃが、ムト君の腕が──」
「僕は大丈夫です! お願いします!」

「……すぐ戻るから、少し待っておるのじゃぞ!」


 そう言ってお爺さんは村長の元に向かってくれた。

 ……はっきり言って空元気だから、ほんとは全然大丈夫なんかじゃないけど……

 村長が死んじゃうよりは、マシかなぁ
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