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助けてもらってもきっと
しおりを挟む「俺が教えたこと、しっかりと覚えているんだな。そう俺は10年時を戻した。だから二人を犠牲とした。一人はそこにいる第三王子。一人はリュシエンヌの妹、リリアだ」
「――!」
アルは自らが犠牲にされていたことに驚いた。よく覚えていないという最期がそのような終わり方だったなんて、きっと私がアルだったとしても驚くし何も言えなくなってしまうだろう。それにしてもリリア、か。皆殺しといってもリリアだけ残しておいたのだろう。でも、なんでアルとリリアなんだろう。そう考えていると、フッとレオン様が笑った。
「なぜその二人なのかって?」
「え、あ。はい。レオン様とその二人は全く接点がないと思いましたので」
心の中を読まれたみたい。それとも私がわかりやすかっただけだろうか。レオン様は顔から笑みを消して、打って変わった様子で話し始めた。
「それは、リュシエンヌのこと守れたはずなのに放置していたからかな」
その言葉は私のことをただただ思ってくれているもので。アルにはひどく冷たく突き刺さる言葉だった。今は私が変わったから、アルは私のことを大切に思ってくれている。だけど、前は私がアルに興味を持っていなかったから。だから、アルは私に興味を示さなかった。それは仕方がないこと。
「私が悪かっただけです。私がアルに興味を示していなかったから」
「違う。リュシエンヌ。そういうことを言ってるんじゃない」
否定するため発言する。だが、冷たい目を向けられた。私は怯んでしまい、何も話せなくなってしまった。
「フロライン家の異常には気づけたはずだ。リリアは頻繁にドレスが変わっていてリュシエンヌは何度も同じドレスを着ている。いつも公爵と夫人がいるのはリリアの隣。リュシエンヌは?誰か隣にいたか?なぁ、婚約者様。無関心って嫌いよりも酷いよな」
「――!」
リリアが生まれるまで、あと数ヶ月の間は頻繁にドレスは買ってもらっていた。だが、リリアが生まれてからは全くもって買ってもらっていない。私がもらった以上の服をもらうのにそう時間は掛からなかった。でも、それは私が悪いと思っていた。もっと頑張ればもっともっと。リリアみたいに笑いかけてもらえる。あの三人の輪の中に入れると。そう思ってた。それで死んでしまったのは私の責任。私が固執しすぎていただけ。だから、誰も悪くない。でも、レオン様の話に少し心が揺れてしまった。
「私、レオン様が言うことはちょっとわかっちゃいます」
「リュシー」
アルが申し訳なさそうな瞳で私を見る。
「誰かが助けてくれたら、誰かが私のことを少しでも認めてくれたらって。でもそれじゃ駄目なんです。リリアが私を気にしてくれても、アルが私のこと愛してくれていてもあの時の私は両親からの愛が欲しかったから。それはレオン様だって身に染みているはずです」
レオン様はまっすぐ私のことを見てくれている。そうだ、いつも真っ直ぐに私を見てくれていた。多少歪んで変わっているところはあるけれどとても真面目な人なんだ。
「だから、今更なんです。それに一度ああやって死ぬことができたからアルとはこういう関係を紡げているし、ルリも大切にできているんです」
私はアルと、ルリを見ながらそういった。レオン様はふっと笑ってくれた。
「そうか。でもリュシエンヌが許したとしても俺は許さない」
「それでいい。僕もそれがいい」
アルも色々と思うことがあったのだろう。そんなに思い詰めなくていいとでも声をかけるべきなのだろうか。でも、それじゃアルは思い詰めることをやめないだろう。だから、私は何も声をかけないことにした。
「リュシエンヌ様、私はリュシエンヌ様のこと大好きですから。信じてくださいね」
「うん。私もルリのこと大好きだよ。嘘じゃないってわかってるから大丈夫」
ルリの頬を撫でながら私はそういった。ルリは嬉しそうに私の手に頬をすり寄せた。そんなことをしていると右の頬に誰かの手が触れた。
「僕も愛してますからね」
「へ!?」
振り向くとすぐ近くにアルの顔があった。それにいきなり、愛してるってどうしたの。いや、アルはいっつもいきなりだっけ。
「リュシエンヌ、だいぶ愛されてるな。まぁ俺もその一人だが」
そう言いながらレオン様は空いている左の頬に触れる。もう、何も身動き取れない。どうしよう。頭もすごいパンクしてる。レオン様はこういうことしないと思っていたのに。あ、そうだったレオン様私のこと好きだって言ったんだった。そう考えると今こうなっているのは結構まずい?
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