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好き

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「そうですかね?」
「あぁ、本当に面白いよ。もうあいつらに見てもらおうとしないのか」

 レオン様は時戻り前私のことをいつも心配してくれていた、と思う。この人から授業を受けていたとはいえ、内面まではよく知らない。だから、レオン様がどんな人か尋ねられたら、よくわからない、としか答えられないだろう。

「私はもうあの人たちいらないんです。愛してくれない親なんて必要ないですから」
「そうか、だいぶ変わったんだな」

 そう私のことを見つめる瞳は寂しそうだった。なんでそんな瞳でこちらを見るのだろうか。その理由に時戻りをしたことも関係しているのだろうか。そんなことを考えながらレオン様を見ていると、目の前にいきなり背中が割り込んできた。

「随分と親しげですね、ブルーゲンベルク殿」

 アルだった。いきなり親しげに話だした私たちを不思議がっている。

「この間リュシーと会ったばかりなのではなかったのですか?」
「今回は、そうだ。だが、なぜ第三王子殿下は演技をなさっているのだ?きっとあなたも記憶が残っているはずだ」

 その言葉を受けてアルは少し嗚咽を漏らした。まって、アルも記憶が残っているって言ったの?え、どういうこと?

「まぁ、無駄話をしている暇はないか。本題に入ろう」
「は、はい。そうですね」

 アルにも記憶が残っている、その事実を知るためにも早く話を始めたほうがいいだろう。至って冷静になれない頭で、レオン様の話を聞き始めた。

「リュシエンヌ、まず聞きたいことは?」

 一番の当事者である私から質問をさせてもらえるらしい。たくさん聞きたいことはあるけれど、一貫してこれだろう。

「なぜ、レオン様は時戻りを?」

 ずっと考えていた。どうして私を生き返らせたのか。時を戻したのか。その犯人がいるのであれば、それを一番最初に聞きたかった。

「リュシエンヌが好きだったからとしか言いようがない」
「は?」

 私は頭が固まり、アルはレオン様に突っかかりに行き、ルリは黄色い声をあげた。まさにカオス。その原因となるレオン様はケロッとした顔をしていた。

「どういうことか説明してもらっても?」
「リュシエンヌはずっとあいつらからの愛を求めて頑張っていただろう?その姿に見事惹かれてしまったんだ。もちろん内面、外見全てに惹かれた。いつまで経っても満たされない瞳。それがとても綺麗だったから。リュシエンヌには俺が発案した魔法を一番に教えていた。そのとき俺に必死に教わるリュシエンヌは本当に可愛かった。どうせこんなことしても、愛されないのに。どうせ、リュシエンヌだってわかっていたんだろう?」

 狂気に満ちているその瞳。久しぶりに見た気がする。こんなふうに変わっている人だからこと賢者と言われるほどなのだろう。それにしてもだいぶ痛いところをつく。

「はい。そしてそれをあなたが面白がっていることも知っています。だから時戻りを?それにパーティーの時今度は死なせないなんてセリフ言ってきたじゃないですか」

 それだけでは少し理由が弱いと感じた。時戻りはそもそも禁忌とされている魔法。自らの命をも犠牲とする魔法。それを私が好きだからなんて子供のような理由でするほどの方ではなかったはず。

「だから本当だって。それとも俺がリュシエンヌのことを好きだってことが信じられないのか?」

 私はそう言われて素直に頷いた。二人を置いてけぼりにしてしまっている。本当に申し訳ない。でも、ちょっと待っていてほしい。こうなった理由をちゃんと確かめたいんだ。

「そんなに信用ないのかぁ。じゃあとっておきのこと言う。本当に俺としても恥ずかしいことだったから言いたくなかったんだけど。リュシエンヌが処刑された後、俺はそのショックで力を暴走させてしまった。そのせいで何人もの人を殺した。そこにあの男たちは含まれている」


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