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お揃い
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「へ?」
「うん、とてもおいしいね」
おいしいね、じゃないのだが??それは私の食べかけだし、そういうのって間接キスっていうのでは?動揺する私を楽しそうにアルは見ている。
「アル?どうして私の食べたのですか?アルのは持っているじゃありませんか」
「それは、本物のキスはまだできないけど、こっちなら許してくれるかなって思ったから?」
いたずらっ子のような微笑みを浮かべた。もう、何も言うことが出来なくなってしまったので私はそのまま私のだったアルの食べかけを食べ始めた。
「っえちょっと!」
アルが叫んだが齧り付くのは止められずそのまま私は一口、口に含んだ。どうしたの?って喋りかけたかったけれど、流石に口にものが入った状態で話すなんてできなかったから、よく噛んで飲み込んでから話しかけた。
「急にどうしたのですか?」
アルはそっぽ向いている。心なしか耳が赤いように見える。
「――から」
小さすぎて聞こえなかった。
「こちらを向いて話してくれませんか?」
そういうとアルは体をこちらへ向けてくれた。
「まさか僕が食べた後をリュシーがそのまま食べると思わなかった」
と、早口言葉のように話した。顔を見ると真っ赤っかに染まっている。その気に私も染まってしまって勢いながらに話した。
「だ、だってあなたがそうやって食べるものだから!!」
「だから僕は交換しようと思っていたんだ!!」
あ、そうだ。アルが持っていたのは確かにだれにも口がつけられていない串だった。あぁ、もう。なんだかしてやられた気分だ。先にやってきたのはアルの方なのになんでこんなにも恥ずかしい思いしなきゃいけないの!?ちょっと頭が冷えてきた時、振り返ったら敬語を使うのを忘れていたことに気がついた。
「ごめんなさい、アルに敬語を使うの忘れてしまいました」
「いいよ。リュシーに敬語使われると嫌だ」
「それでも」
断ろうとするがアルの強い意思を感じたため黙ることにした。
「わかった。けど社交界では敬語をつけさせて」
「それでいいよ」
ちょっと納得がいってなさそうな表情をしながらもアルは了承してくれた。
「食べ終わったら何する?」
「行きたい場所があるんだ。着いてきてくれる?」
「?うん、もちろん」
敬語を使わないって今のところルリとアルだけだなぁ。すごい距離が縮まったように感じる。それにしても行きたいところってどこなんだろう。それに二時間っていうのはあっという間だし、きっとそこへ行って戻らなくてはいけなくなるだろうな。
「ここだよ、アクセサリー店。記念に何かお揃いで買いたくて」
行きたいって言っていたのはここだったのか。一際オシャレなお店に急に入るから何かと思えば、あたりには恋人同士がたくさんいた。すごい居た堪れなくなってしまう。それに、見てみれば貴族と平民が混じっているような気がする。
「ここは平民にも貴族にも人気なんだ。だからきっと僕でも買えるものがあると思って」
平民と貴族両方にもウケがいいサービスを提供できるお店なのか。きっと凄腕の方が経営しているのだろう。そうでなきゃ、平民と貴族が同じ空間で選ぶなんて貴族が許すはずがないから。
ピアスにイヤリング、ちいさなオルゴールのようなものもおいてあった。それに貴族でも少し手が届かない金貨十枚のものから平民が簡単に買うことのできる銅貨30枚のものまであった。貴族用のものは確かに豪華で宝石などが散りばめられているものがあったが、そこを除けば平民用のものと大差ないものでいっぱいだった。
数あるものの中で私が選んだのは、質素なネックレスだった。でも質素だって言われても綺麗な宝石が付いていたし、お値段も値が張っているものではない。
「お嬢ちゃんこれがいいってだいぶロマンチックだなぁ」
「え、なんでですか?」
いきなり店の人に話しかけられた。ロマンチック?何がなんだ?と思いながら店の人が何かをしているのをじっと見ていた。
「これなもう一つのやつとあわせると、ほらハート型になるんだ。だからロマンチック」
た、確かに変な形をしているなとは思ったけれど、二つ組み合わせるとハート型になるなんて思ってなかった。
「ああ、あのこれやっぱり――」
「店主、これください」
「アル!?」
「あいよ、まいどあり!!」
あぁ、もう!!なんで今日はこうもうまくいかないんだろう!!
「リュシー、機嫌直してください」
「いやです」
帰りの馬車の中で私は思いっきり臍を曲げていた。いつの間にかまた敬語に戻ってしまっているけど。
「――!?」
いきなりアルが近づいてきて腕を私の方に回した。突然のことに反応できずにそのまま固まっていると首に何か冷たいものが当たった。
「似合ってる」
アルは満足そうな微笑みを浮かべて私の対面の席に座った。冷たいものはどうやらネックレスだったらしい。
「あ、りがとうございます」
「こちらこそ」
窓からオレンジ色の夕陽が差し込む。私たちの顔が赤いのはたぶんそれのせいだろう。
初めての街はとても楽しくて、とても恥ずかしかったけれど私の記憶に大事に大事にしまわれた。
「うん、とてもおいしいね」
おいしいね、じゃないのだが??それは私の食べかけだし、そういうのって間接キスっていうのでは?動揺する私を楽しそうにアルは見ている。
「アル?どうして私の食べたのですか?アルのは持っているじゃありませんか」
「それは、本物のキスはまだできないけど、こっちなら許してくれるかなって思ったから?」
いたずらっ子のような微笑みを浮かべた。もう、何も言うことが出来なくなってしまったので私はそのまま私のだったアルの食べかけを食べ始めた。
「っえちょっと!」
アルが叫んだが齧り付くのは止められずそのまま私は一口、口に含んだ。どうしたの?って喋りかけたかったけれど、流石に口にものが入った状態で話すなんてできなかったから、よく噛んで飲み込んでから話しかけた。
「急にどうしたのですか?」
アルはそっぽ向いている。心なしか耳が赤いように見える。
「――から」
小さすぎて聞こえなかった。
「こちらを向いて話してくれませんか?」
そういうとアルは体をこちらへ向けてくれた。
「まさか僕が食べた後をリュシーがそのまま食べると思わなかった」
と、早口言葉のように話した。顔を見ると真っ赤っかに染まっている。その気に私も染まってしまって勢いながらに話した。
「だ、だってあなたがそうやって食べるものだから!!」
「だから僕は交換しようと思っていたんだ!!」
あ、そうだ。アルが持っていたのは確かにだれにも口がつけられていない串だった。あぁ、もう。なんだかしてやられた気分だ。先にやってきたのはアルの方なのになんでこんなにも恥ずかしい思いしなきゃいけないの!?ちょっと頭が冷えてきた時、振り返ったら敬語を使うのを忘れていたことに気がついた。
「ごめんなさい、アルに敬語を使うの忘れてしまいました」
「いいよ。リュシーに敬語使われると嫌だ」
「それでも」
断ろうとするがアルの強い意思を感じたため黙ることにした。
「わかった。けど社交界では敬語をつけさせて」
「それでいいよ」
ちょっと納得がいってなさそうな表情をしながらもアルは了承してくれた。
「食べ終わったら何する?」
「行きたい場所があるんだ。着いてきてくれる?」
「?うん、もちろん」
敬語を使わないって今のところルリとアルだけだなぁ。すごい距離が縮まったように感じる。それにしても行きたいところってどこなんだろう。それに二時間っていうのはあっという間だし、きっとそこへ行って戻らなくてはいけなくなるだろうな。
「ここだよ、アクセサリー店。記念に何かお揃いで買いたくて」
行きたいって言っていたのはここだったのか。一際オシャレなお店に急に入るから何かと思えば、あたりには恋人同士がたくさんいた。すごい居た堪れなくなってしまう。それに、見てみれば貴族と平民が混じっているような気がする。
「ここは平民にも貴族にも人気なんだ。だからきっと僕でも買えるものがあると思って」
平民と貴族両方にもウケがいいサービスを提供できるお店なのか。きっと凄腕の方が経営しているのだろう。そうでなきゃ、平民と貴族が同じ空間で選ぶなんて貴族が許すはずがないから。
ピアスにイヤリング、ちいさなオルゴールのようなものもおいてあった。それに貴族でも少し手が届かない金貨十枚のものから平民が簡単に買うことのできる銅貨30枚のものまであった。貴族用のものは確かに豪華で宝石などが散りばめられているものがあったが、そこを除けば平民用のものと大差ないものでいっぱいだった。
数あるものの中で私が選んだのは、質素なネックレスだった。でも質素だって言われても綺麗な宝石が付いていたし、お値段も値が張っているものではない。
「お嬢ちゃんこれがいいってだいぶロマンチックだなぁ」
「え、なんでですか?」
いきなり店の人に話しかけられた。ロマンチック?何がなんだ?と思いながら店の人が何かをしているのをじっと見ていた。
「これなもう一つのやつとあわせると、ほらハート型になるんだ。だからロマンチック」
た、確かに変な形をしているなとは思ったけれど、二つ組み合わせるとハート型になるなんて思ってなかった。
「ああ、あのこれやっぱり――」
「店主、これください」
「アル!?」
「あいよ、まいどあり!!」
あぁ、もう!!なんで今日はこうもうまくいかないんだろう!!
「リュシー、機嫌直してください」
「いやです」
帰りの馬車の中で私は思いっきり臍を曲げていた。いつの間にかまた敬語に戻ってしまっているけど。
「――!?」
いきなりアルが近づいてきて腕を私の方に回した。突然のことに反応できずにそのまま固まっていると首に何か冷たいものが当たった。
「似合ってる」
アルは満足そうな微笑みを浮かべて私の対面の席に座った。冷たいものはどうやらネックレスだったらしい。
「あ、りがとうございます」
「こちらこそ」
窓からオレンジ色の夕陽が差し込む。私たちの顔が赤いのはたぶんそれのせいだろう。
初めての街はとても楽しくて、とても恥ずかしかったけれど私の記憶に大事に大事にしまわれた。
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