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私のお母様はただ一人
しおりを挟む「公爵、夫人」
「あら、もうおかあさまって呼ばないのね?寂しいわぁ?」
金色の髪に赤色の目。レオナ・フロライン公爵夫人。私が死刑になる前、どうしてお母様が死んだのか、閣下がどれだけお母様を邪険に思っていたのかを全て教えてくれた女だ。
「はい、もう私公爵夫人のことをおかあさまなんて呼びません。だって私のお母様はただ一人ですもの」
あなたは私のお母様じゃない。私のお母様のいる場所をすぐに奪った女。本当になぜこんな女にも私は愛されようと頑張っていたのだろうか。この女に好かれたいなんて今じゃまったくもって思わない。
「あぁ、今の目。あの忌々しい女とそっくりだわ。その老人みたいな白の髪に黄色の目!!さっさと私の前から消えてちょうだい!!」
「私が先にここにいたのですが。あなたがべつ」
――――バチンッッッ!!!
私が言いたいことを言い終わる前に乾いた音が鳴り響いた。
「うるさいわね、さっさとその口を閉じなさい。私の方が偉いの。だからあなたは黙って私の言うことを聞けばいい。それにこの間までだったら鬱陶しいぐらいに付き纏っていたのに急になんの心変わり?」
私はどうやらこの女に頬を叩かれたらしい。公爵夫人が持っているその扇子で。頬はだんだんと熱を持ってきている。かなり強い力で叩かれたのか熱いものがポトっと地面に落ちた。どうやら切ってしまったみたいだ。どうしようか。
「急に黙りこくってどうしたの?叩かれたところが痛かったのかしら?身の程を知りなさい」
「きゃあぁぁああああぁあ!!!!だ、誰かーー!!!!」
「な、何しているの!?」
私が急に叫び始めると、公爵夫人は動揺し始めた。いや、誰だってそうか。急に目の前の人が叫び始めたらそりゃ混乱するだろう。一分もしないうちに兵士がやってきた。
「お嬢様と公爵夫人?何があったのですか?」
「お、おかあさまが急にわたしのことを扇子で叩いてきたのです。ほらその証拠に私の頬から血が流れているでしょう?」
私は地面に座り込んで、弱々しい演技をした。さっきの様子とは打って変わった私を公爵夫人は狼狽えて見ているだけ。
「きっとわたしがおかあさまとおとうさまの仲を引き裂いていた前妻の子供だから。。ごめんなさいお母様。わたしなんかが生まれてきてしまって。どうしたらこの罪を償えますか?あぁそうだ私が死ねばいいのですね。待っていてください、すぐに」
「お嬢様、そんなことありません。どうか気を確かに。まずは屋敷に戻ってその怪我の手当をしましょう」
「あ、ありがとう」
「公爵夫人このことは公爵様に報告をさせていただきます。どうかご自身でお戻りください。失礼致します」
「わたしは一人で戻れます。ですからおかあさまの護衛をお願いしても?」
「いや、それは」
「いえ、わたしよりおかあさまの方が立場は上です。それに命の尊さも。ですからおかあさまの護衛を」
「お嬢様が、そこまでおっしゃるのなら」
「ありがとう。では失礼致しますわ」
私は平然とその場から立ち去った。
「あの子は嘘をついている!!!」って叫ぶ声が後ろから聞こえるけど気にしない。勝負を持ちかけたのはあなたの方ですよ、公爵夫人。笑うのを我慢しようと思ったけれど無理だった。
「ふふふっ」
大きく笑うと不審がられてしまうから小さく。愛妾からなりあがった女と、前妻の子供。どちらが可哀想で周りの人はどちらの言うことを聞くかなんて明白だ。私決めたわ。お母様には申し訳ないけれどこの立場を利用してあの二人の評価を一番下まで下げてあげる。お母様のことを邪魔だなんて思ったこと後悔させてあげるわ。
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