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第3章 アデレードの挑戦
第44話 不快な会見
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一方、リーフェンシュタール家のの屋敷にも黒ずくめ格好をした男が2人現れ、尊大な態度と甘い匂いを漂わせていた。面会に応じたカールだったが、直ぐに不快な気持ちになった。
「犯罪者を探している? そんな余所者が、この領内に入って来たという報告は受けていないが」
厳しい声でカールが、男達に告げた。
「えぇ。ですから、探させて下さいと申し上げているのですよ。伯爵」
相対する男達が意地が悪そうに口を曲げる。
「見つかれば、我々もすぐ退散しますよ。こんな辛気臭いところからはね」
「伯爵にはご迷惑をお掛けしませんから」
「……その割にはお仲間が勝手に家に入り込もうとしたと、領民から苦情が来ているが?」
「お優しくて無知な農民の誰かが匿っているんじゃないかと思いましてね」
言葉使いこそ一応取り繕っているが、言葉の端々から、この田舎もん共が、という感情が男達から透けて見えた。
「重ねて言うが、そんな者がこの領内に入ったという情報はない。早々に去りたまえ」
「山にでも隠れているかもしれませんぞ」
「本当にそうなら、その者は助からんだろう。何の準備もなく山に入ったら死ぬだけだ」
カールが脅すように続ける。
「朝晩はまだまだ冷える。それに危険な熊や狼もその辺をうろついている。いや、もっと得体の知れない生き物もいるかもしれんな。それでも良ければ探しに行くが良い。死ぬかもしれんが、止めはせん」
「……我々をサウザー家の使いと知っての態度かそれは?」
男がイライラしながら問うが、カールは眉一つ動かさない。
「誰であろうと、ここは私の領地だ。他の誰にも好きにさせるつもりはない」
カールが不快さを隠そうとせず険のある表情を見せる。顔の傷と相まって恐がらせるには十分だ。こういう時に、顔の傷が役に立つ。男達は、一瞬怯んだ様子を見せる。
「こ、後悔するぞ!」
「ふん、所詮は田舎の山賊よ」
捨て台詞を吐き、男達は乱暴にドアを開けると、わざと足音を立てて出て行った。
「仮にも名門貴族の使いがあんな粗野な連中ですか?」
彼らが出て行った代わりに、執事が部屋に入ってきて不満気に呟く。
「臣下の質は主人の質に直結すると言いますが、あれでは……」
「サウザー公爵家の評判が芳しくないのは知っていたが、あんな連中を雇い入れているとはな」
最早、家の品格も教育も何もない。ただのチンピラではないか。
サウザー家はこの国でも名門として名高く、現国王の妹はサウザー家に嫁いでいるくらいだ。だが、その息子はすこぶる素行が悪い。特に父である先代のサウザー公が病気で隠居してから歯止めが効かなくなっているようだ。
「しかし、たかが犯罪者一人をこんな北の端の山奥まで追ってくるとは何事だ?」
リーフェンシュタール領はサウザー領とは隣接していないし、王都からも遠い。犯罪者を追うにしても執拗過ぎないだろうか、という疑念が湧く。
「一体何の咎めを受けているのでしょうね、その人は……探してみますか?」
「そうだな。あとあの連中から目を離さないようにしてくれ」
「かしこまりました」
他所の揉め事に巻き込まれるのは、勘弁して欲しいが……。
「出ていく前に、窓を全部開けてくれ。この甘い匂い、耐えられん」
「犯罪者を探している? そんな余所者が、この領内に入って来たという報告は受けていないが」
厳しい声でカールが、男達に告げた。
「えぇ。ですから、探させて下さいと申し上げているのですよ。伯爵」
相対する男達が意地が悪そうに口を曲げる。
「見つかれば、我々もすぐ退散しますよ。こんな辛気臭いところからはね」
「伯爵にはご迷惑をお掛けしませんから」
「……その割にはお仲間が勝手に家に入り込もうとしたと、領民から苦情が来ているが?」
「お優しくて無知な農民の誰かが匿っているんじゃないかと思いましてね」
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「重ねて言うが、そんな者がこの領内に入ったという情報はない。早々に去りたまえ」
「山にでも隠れているかもしれませんぞ」
「本当にそうなら、その者は助からんだろう。何の準備もなく山に入ったら死ぬだけだ」
カールが脅すように続ける。
「朝晩はまだまだ冷える。それに危険な熊や狼もその辺をうろついている。いや、もっと得体の知れない生き物もいるかもしれんな。それでも良ければ探しに行くが良い。死ぬかもしれんが、止めはせん」
「……我々をサウザー家の使いと知っての態度かそれは?」
男がイライラしながら問うが、カールは眉一つ動かさない。
「誰であろうと、ここは私の領地だ。他の誰にも好きにさせるつもりはない」
カールが不快さを隠そうとせず険のある表情を見せる。顔の傷と相まって恐がらせるには十分だ。こういう時に、顔の傷が役に立つ。男達は、一瞬怯んだ様子を見せる。
「こ、後悔するぞ!」
「ふん、所詮は田舎の山賊よ」
捨て台詞を吐き、男達は乱暴にドアを開けると、わざと足音を立てて出て行った。
「仮にも名門貴族の使いがあんな粗野な連中ですか?」
彼らが出て行った代わりに、執事が部屋に入ってきて不満気に呟く。
「臣下の質は主人の質に直結すると言いますが、あれでは……」
「サウザー公爵家の評判が芳しくないのは知っていたが、あんな連中を雇い入れているとはな」
最早、家の品格も教育も何もない。ただのチンピラではないか。
サウザー家はこの国でも名門として名高く、現国王の妹はサウザー家に嫁いでいるくらいだ。だが、その息子はすこぶる素行が悪い。特に父である先代のサウザー公が病気で隠居してから歯止めが効かなくなっているようだ。
「しかし、たかが犯罪者一人をこんな北の端の山奥まで追ってくるとは何事だ?」
リーフェンシュタール領はサウザー領とは隣接していないし、王都からも遠い。犯罪者を追うにしても執拗過ぎないだろうか、という疑念が湧く。
「一体何の咎めを受けているのでしょうね、その人は……探してみますか?」
「そうだな。あとあの連中から目を離さないようにしてくれ」
「かしこまりました」
他所の揉め事に巻き込まれるのは、勘弁して欲しいが……。
「出ていく前に、窓を全部開けてくれ。この甘い匂い、耐えられん」
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