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最終章:女神への願い。

第40話:エルフ耳を弄り回す時が来た!

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「なんだか懐かしいですね」

「そうだね♪ あの頃は大変だったけど、毎日楽しかったなぁ」

「そうですか。ではまた厳しい修行といきましょう」

 ……うぅ、優しく教えてくれる気はないらしい。この笑顔が一番おっかないんだよなぁ。

「では古文書のここを見て下さい」

 久しぶりの練習場で、リィルの広げた古文書を覗き込む。

「……ごめん、何書いてあるか全然わかんないや」

「あぁ、そうでしたね。ユキナに読めるわけありませんでした。それでしたらもっと直接的に教えるしかありませんね。少しこちらに来て下さい」

「もしかして馬鹿にしてる? 自分が全く知らない世界の古代文字なんて読める方がどうかしてると思わない?」

「気にしないで下さい。クラマ様がある程度読めると聞いてユキナも読めると思い込んでしまっただけです」

 むかーっ。それって遠回しに嫌味言ってない?

「ちょっとリィル前より性格悪くなってない?」

「私は本来こんな感じですよ。それだけユキナに対して自然体で接する事ができるようになったという事です」

 それは嬉しいけどさぁ。だからといって扱いが適当になるのはちょっとなぁ。
 前からちらほらドSっぽい所あったけど、普段の様子と僕に対する態度が違いすぎる。

 どうにか僕を敬う気持ちを取り戻させたい所だけど……。

「ふふ……さぁ、可愛らしくほっぺを膨らませてないでこちらへ来て下さい」

 そう言ってリィルは僕を手招きするので彼の前に座り込む。

 さらりと可愛らしいとか言ってくるあたりリィルも人が悪い。というかエルフが悪い。

 座り込むと言っても僕が座ってるのはもっごの上だけどね。

「いいですか、まずは頭に強いイメージを……」

 あっ、そうだ。
 そう言えば約束してたんだった。

「えいっ」

 リィルが僕の肩に手を当てて、目を閉じ集中してる隙をついて一気に耳をもしゃもしゃっとこねくり回した。

「ぎゃあぁぁぁっ!!」

「おぉ……! 久しぶりのエルフ耳だ! 先っぽのとここんなふうになってるんだねー。なるほどー♪」

「ちょっ、今、そんな事してる場合じゃ……」

 リィルが僕から逃げようとしたけれど足がプルプル震えていてまともに動けないみたい。
 僕の腕を振り切り、地面を這うように移動してるリィルの背中に飛び乗って後ろからもう一回耳をがっちりキャッチ。

「〇×〇▲×●!?」

「こんな時だからこそ調べられる時に調べておかなきゃ♪ ほらじっとして」

「ふっ、ふーっ、ふーっ!」

 リィルは僕を背中に乗せたまま蹲っちゃってもう妙な唸り声をあげるだけの置物状態になっちゃった。

「という事は約束通りこっからは好きなだけ調べ放題タイムって事で♪」

 ほう、ほうほう……やっぱり耳の付け根のあたりは普通の人間と変わらないんだね。
 耳の穴の方もちょっと独特な形してるけど大体一緒みたい。
 エルフってなんでこんな耳が尖る進化をしたんだろうね?
 耳の上の部分は先っぽの所まで軟骨があるのが分かる。
 それに指を這わせると、耳が長い分人間の耳より強度が低いのかふにふにだった。

 結構触り心地がいい。
 そして人間と違う所がもう一つ。耳たぶがほとんどない。
 福耳とかはエルフにはいないのかな?

 ぐしゃっ。

「うわーっ!」

 急にリィルが崩れ落ちて、上に乗ってた僕まで転げ落ちてしまった。

「も、もっごたすけて」

「あいよ。……しかしお嬢ちゃん、えげつねぇなぁ……いったいそのエルフになんの怨みがあって……」

「え、怨みなんかないってば。帰ってきたら触らせてもらう約束してたんだよ♪ だよね、リィル? おーい。もしもーし」

 リィルは全く動かない。

 あれ、なんかまずったかな……?

「リィルってば、大丈夫?」

 ごろんと彼の身体を仰向けに転がしてみると……。

「……もっご、これって見なかった事にしてあげたほうがいいと思う?」

「……そりゃそうだろうよ」

 仰向けに転がしたリィルは、だらしなく口を半開きにしてよだれをダラダラこぼして失神していた。

 そう言えば性感帯だって言ってたもんなぁ……ちょっと無理させ過ぎちゃったかな?

 仕方ないから気を失ったリィルをもっごに乗せて運んでもらった。

 今日は進められそうにないなぁ。

「まったくリィルってば情けない」

「いや、その発言も鬼畜すぎる」

 もっごがまるで自分はリィルの味方、みたいな雰囲気出してくるのなんなの?

「おいらはこのエルフが哀れでしょうがねぇよ……」

 そう言ってもっごはきちんとリィルを医務室まで届けてくれた。

 今日の所は諦めてまた明日かなー。

 バルコニーに出て中庭を見下ろすと、丁度ラスカルにクラマがぼっこぼこにされてるところだった。

 クラマも頑張ってるなぁ。
 ちょっと気まずいけどリィルがダメだとなんも出来ないし部屋戻って休んでよっと♪

「もっごもおいで。表面ちょっと手入れしてあげるから」

「おっ、ありがてぇ♪」

 僕らはその日のんびり部屋で過ごし、夕方過ぎに部屋に戻ってきたクラマはもう全身ズタボロだった。

 声をかけても虚ろな感じで、そのままベッドに倒れ込んで動けなくなってしまう。

 久しぶりのシュバルツ城だからいろいろクラマとも話したかったんだけど、今はそっとしておいてあげよう。
 クラマも頑張ってるみたいだもんね。

 僕も遊んでないで頑張らなきゃ。

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