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最終章:女神への願い。

第39話:勇者と魔王は友達になれる?

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「つまりユキナ様達はそのシャドウという魔物を倒す為に魔物と手を組んだ、という事なのですね?」

 姫が勝手に納得してくれてるけれど、本当は手を組んでからその話を知ったんだよね。
 面倒だから言わないけど。

「だいたいそんな所かな」

「少し疑問なのですがどうして……その、魔王様は」

「ラシュカルでいい」

「はい。ではラシュカル様はどうしてユキナ様に、その……」

 なんか姫がいろいろ言葉を選びすぎて喋りにくそうだなぁ。

「私はユキナに惚れてしまってな。彼女になら自分と魔物の未来を託してもいいと、そう判断しただけだ」

 うわ、ドストレート!! やっば、この人やっぱりすごいわ。さすがに照れる……!

「あら、あらあらあら! そうなのですか!? ラシュカル様がユキナ様に!? クラマ様が居るのに!?」

「関係ないだろう。仮にユキナが誰と思いあっていようとも私の気持ちが変わるわけではないからな。妻にするならユキナ以外居ないと心に決めている」

「まぁ! なんと素敵な……ラシュカル様、私貴方を応援いたしますわ!」

 ……なんだこれ。さらっと求婚されてるんだけどマジで言ってるの?

 リーナ姫が急に目を輝かせてラスカルの手を取りきゃっきゃと盛り上がっている。

 女子って、どの世界でも恋バナがすきなんだねぇ……。

 それはそうとさっきからリィルの視線が痛いんだけどなんでそんな睨んでくるの? なんか悪い事した?

「リィル怒ってる?」

「怒ってますよ」

 こっちもドストレートだった……。

 彼は綺麗な顔に皺を寄せながらも「そのシャドウとやらを探し出す方法は考えているのですか?」と話を進めてくれた。やっぱり賢い。

「実はその事で相談に来たんだよね。こういう時に頼れるのはやっぱりリィルだけだからさ」

「そ、そうですか……? 期待されているのであれば、勿論尽力いたしますが……」

 リィルは尖った耳をぴこぴこさせてソワソワし始める。
 なんだか以前よりも感情が分かりやすくなったなぁ。

「それでさ、何かいい方法ってあったりする? 古文書とかあれからも調べてたんでしょ?」

「えぇ、エイムと一緒に古文書に関しては調べておりましたが……特定の個人、ではなく種族全般をあぶりだす方法というのはなかなか難しいかもしれませんね」

 ……特定の個人?

「待って、特定の個人なら可能なの?」

「えぇ、と言っても居場所を知る物ではありませんが」

 それはそれでちょっと気になるなぁ。前から気になってた事を試せるかもしれない。

「ねぇリィル。それって相手の名前とか外見とか分からなくても平気なの?」

「そうですね。術者が対象を知ってさえいれば可能です。強くイメージをして頂き、そのイメージに一番近しい相手を探してコンタクトを取る、というだけの古代魔法ですが……」

「それだ! それ僕使えるようになりたい! ちょっと話したい人が居るんだよ! 今回の件とはあまり関係ないかもだけど……出来れば教えてほしいな」

 リィルはニコニコしながら「構いませんよ。久しぶりに修行とまいりましょうか」と、なんか怖い事言い出した。

「お、お手柔らかにお願いね……?」

 その人に聞けばもしかしたらこの世界の事もいろいろ分かるかもしれないし、少しでも前に進んだらいいな。

 逆に怒らせたりしたら何が起きるかわからないけど……。

「おまえまさか……」

 クラマが何か気付いたみたいにちょっと焦った声を出した。

「うん、その魔法でさ、神様と話してみようと思うんだ。うまくいくか分からないけど……あの人なら何か知ってるかもしれないし」

「まぁ……しかしこの世界とは関係ないのではないか? 召喚したのは姫達だろう?」

 それはそうだけど、あの時神様は僕の願いを叶えると言って姿を女性に変え、別の世界に導いた。
 多分それは間違いないんだよね。
 神様は姿を変えただけで、偶然同じタイミングでリーナ姫達が僕らを召喚した、って……いくらなんでもおかしいでしょ。

 だから必ず関係はある。
 あの神様がこの世界の神なら、何か知ってるかもしれない。

「ではクラマ殿、ユキナ殿が魔法をマスターするまでの期間は久しぶりに稽古といきましょうか」

 エイムさんがクラマに向かって微笑む。ちょっと怖い。

「以前よりももっと実戦寄りの稽古をつけてさしあげますよ」

「俺もここを出た時よりは強くなったぞ。今回こそ一本取ってやるさ」

 クラマもエイムさんと稽古するのは楽しみだったみたい。やる気に満ち溢れてる。

「お嬢ちゃん、おいらはどうしてたらいい? やる事もなければ街から出てるけどよ……」

「何言ってんの、もっごは僕の足なんだから一緒に居てくれなきゃ困るってば」

「お、おう……お嬢ちゃんがそれでいいならいいけどよ」

 もっごは大きな瞳をきょろきょろとあちこちへ動かして落ち着かなそう。

「もっごはいろいろ気にしすぎ。僕が一緒に居てほしいから一緒に居て。嫌なら仕方ないけど」

「嫌な訳ねぇだろ。分かった、そこまで言われちゃしょうがねーなぁ!」

 もっごが照れたように足をちょこまかと動かしているのが可愛い。

「もっごもラスカルも僕の……」

 しもべって言い方なんか嫌なんだよなぁ。
 そうだ、あれにしよう。雰囲気出るし。

「二人とも僕の眷属なんだから一緒に居てくれなきゃ困るからね♪」

「眷属か……ふむ、悪くないな」
「おいら、どこまででもついていくぜ!」

 頼もしい眷属が増えたものだ。

「じゃあ僕もやるべき事をやるよ。今の所前に進む為には少しでも可能性がある事をやらないとね!」

「しかし……私はユキナの所ではなくクラマの方へ行くとしよう」

 ラスカルが急にそんな事言い出した。何か考えがあるのかな?

「そんな顔をするな。別にお前と居るのが嫌なのではない。むしろ……いや、それはいい。今後クラマの戦力は重要だからな。そこのエイムという戦士と私、二人がかりでしごいてやろうというのだ」

 なるほどね。でもエイムさんだけでも毎日かなり苦労してたみたいだけど大丈夫なのかな?

「望むところだ……!」

 クラマはやたらやる気になってる。
 僕がピンチにならないと力が出ないって制限があるけど、元の能力が高くなればきっとその分強くなれる筈だから頑張ってね。

「これで堂々とお前を叩きのめせるな……!」

「クラマだけの力で私にかなうと思っているのか馬鹿め」

「表に出ろ……!」
「ふふ、いいだろう。さっそく始めようじゃないか」

 あぁ、クラマの奴ラスカルと喧嘩したいだけだな……。

 でもちょっと嬉しい。
 クラマがああやって感情をぶつけられる相手ってきっと今まで僕しか居なかったから。

 二人はいい友達になれるんじゃないかな?

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