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第2章:冒険の始まりと新たな仲間。
第29話:シュラの秘密。
しおりを挟むなんだか、今のシュラちょっと怖い。
彼は無言でどんどん突き進んでいく。
クラマの事なんてどうでもいいのかな。
それとも、僕とクラマを遠ざける事自体が目的?
分からない。
仲間にこんな考えを持つ事自体ダメだって分かってるけど、それでも不安になるほど今のシュラは様子がおかしかった。
「どうしてシュラは……魔力反応の元へ行こうとしてるの?」
「それはお前が知らなくてもいい事だ」
やっぱり彼は何か明確な目的があってそこへ進んでいる。
もしかして、既に彼の精神も操られていたりしないだろうか?
「とにかくついてこい」
「……ついていくのはいいよ。でも理由は説明して。クラマだって早く探さなきゃならないのに……この先にクラマは居ないんでしょ?」
「……居ないだろうな」
「だったらどうして?」
「お嬢ちゃん、そのくらいに……」
なんで? どうしてそこでもっごが止めに入るの?
「もしかして……もっごは何か知ってるの?」
「……知らねぇ」
今の間は何? 一瞬シュラの方を見て、それから言ったよね。なんで?
「うそ、教えてよ。僕をこの先に連れて行く事が目的なの? クラマと分断したのもそれが理由?」
「か、勘弁してくれ……おいらに聞かれても理由は、わからねぇよぅ」
もっご……。君も、なんて事ないよね?
「……よせ、そいつは答えられない。主であるお前が答えよと命じたなら答えるのがしもべの役目、それが出来ぬ時はお前が想像するよりもずっと大きい苦痛が襲う」
シュラの言葉にハッとしてお尻の下のもっごを見る。
「……すまねぇ、おいらは知らねぇ……」
もっごは苦しそうで、大きな瞳に涙が浮かんでいた。
「ごめん、もういいよ。無理させちゃったんだね……本当にごめん」
僕は馬鹿だ。もっごまで疑うなんて……。
もっごを撫でながらもう一度「ごめんね」と呟くと、辛かったはずのもっごまで「ごめんよ……」なんて言うもんだからこっちまで泣きそうになってしまった。
「大丈夫、もっごは何も知らないんだよね。……でも、シュラ、君なら答えられるでしょ? これは全部君の描いたシナリオなの?」
「……違う」
「ならなんで? ちゃんと教えてよ」
シュラがこちらに振り向いた。
その表情は、僕が思っていたものとは違って……とても辛そうだった。
「頼む、今は私を信じてくれ」
しばらく彼の鋭い目と見つめ合う。
「……はぁ、もういいよ。分かった、その代わり後でちゃんと説明してもらうしクラマとも合流するから。あっちだって危険なんだからさ。いい?」
「ああ、魔力反応はもうすぐだ。そいつを片付けたらすぐに勇者を迎えにいこう」
「約束だからね?」
シュラは目を瞑り、「分かった」と静かに呟いた。
そうと決まればさっさとその魔力反応の主ってやつをぶっ倒しちゃおう。
もしかして魔王だったりしないよね? ちょっと不安ではあるけど、どっちにしてもここの魔物の理性を奪った相手だっていうのなら僕だって容赦はしない。
殺さなくたってよかった命が沢山あったはずなんだ。
進む事数分。
到着したのは行き止まりだった。
「……だめじゃん」
「いや、魔力反応は間違いなくこっちだ。おそらくこの辺りに……」
シュラが壁をぺたぺた触ったかと思ったらガコン! と大きな音がして壁がスライドした。
隠し扉……!
「やはりか。魔力反応の元へ繋がる道が無かったので不安ではあったが正解だったようだな」
彼は扉が開くなり躊躇せず先へ進む。
僕ともっごも慌てて後を追うけれど、その先に居たのは……。
巨大な金棒を持った鬼のような魔物。
ヤバい、めっちゃ強そうじゃん……。
「カイラ、お前か……」
「おいおい侵入者が誰かと思えばなんでぇ、お前さんだったのかい」
シュラとこのカイラって魔物、知り合い……?
二人は睨み合い、お互いに武器を構える。
カイラは金棒を、シュラは魔法の剣を。
「ここの魔物はお前が?」
「そうさ。馬鹿正直に誰かさんの命令に従うだけの阿呆共ばかりだったからな。俺様の部下にしてやったのよ」
やっぱり魔物の自我を奪っていたのはカイラっていう魔物なのか。
僕の中にも怒りがふつふつと湧いてくるのを感じた。
「それは魔物達の意思か?」
「こんな雑魚どもの意思なんて関係ないだろう? 俺様みたいなのと主従契約できるんだから喜んでるだろうぜ。俺みたいなのに使われる為に生きてるんだからよぉ!」
「呆れて物も言えんな……貴様のような奴はここで死ね」
カイラとシュラの関係とかもうどうでもいい。
そんな事より僕も黙って見てるだけなんて嫌だ。
「シュラ、こいつが魔物操ってたんでしょ? 僕もやるよ」
「ユキナは下がっていろ。こいつは私一人でやる」
「危ないよ!」
「ぎゃははは! 人間に心配されるとは落ちぶれたもんだなぁおい魔王様よ!」
……えっ。
「……ま、おう?」
シュラはこっちを見てくれない。
もっごを見ても目を逸らす。
「シュラ、君って……」
「ユキナ、説明は後だ。ウッド……いや、もっご。ユキナを下がらせろ。彼女を守れ」
「お、おうよ!」
「うわっ!?」
もっごは立ち上がった僕の足を払って自分に乗せると、すたこらとカイラから距離を取った。
「ちょっともっご! 待ってっ!」
「お嬢ちゃん、頼む。今は魔王様を信じてやってくれ……! それにお嬢ちゃんが近くにいたら全力で戦えないぜ!」
シュラ、いや、魔王。
君は……。
なかなかいい登場の仕方をするじゃないか!
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