セラフィム学園高等部

01:星野宵子

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　セラフィム学園とは、所謂金持ちのお嬢様や、お坊ちゃまが入学される、幼少中高一貫校なのだが、稀に変なヤツが混ざって来る。

　高等部1年に入学予定の、星野ほしの宵子よいこさんも、間違いなく変なヤツに分類されるだろう。

　彼女の実家は、小さな干物加工会社。父は社長といっても、従業員20人程度の小さな工場だったのだが⋯⋯。

　事件は、宵子さんが中学3年生の夏休みに起きた。

　彼女は学校一の秀才で、県内で一番の進学校を受験するつもりだった。模試も余裕の合格圏内で、ゴロゴロと畳にひっくり返り、ゲームをやっていた時。

　血相を変えた父親が、部屋に駆け込んで来たのだ。

　いよいよ会社が倒産したのかと思いきや⋯⋯。

「宝くじが当たったぁぁぁぁぁぁ！！！！」

　8億円。

　ラッキーなこと、この上ない。星野家は、海風に晒されてボロボロになった、築30年の木造住宅を引き払い、一等地のマンションへお引越し。

　そこまでは良かった。

　しかし、これまで慎ましやかに暮らしていた、星野一家は、お金の使い道が分からず、途方に暮れた。

　で、宵子さんの母さんが提案したのだ。

「あんた、折角だし、セラフィム学園に行きなさいよ！　お金もあるんだし」

「やだね」

　勿論、宵子さんは拒絶。お金はあるが、その他諸々足りないモノが多過ぎる。教養とか、教養とか、教養とか！！


　まあ、宵子さんの場合、教養が無いというだけ、まだマシかもしれない。母の方は、脳内お花畑。

「あたし、アソコの制服、着てみたかったのよね～」
　
「着れば」

「娘がセラフィムのお嬢様だなんて、誇りだわ～」

「つい最近まで、埃まみれの部屋にいたんだけど」

「卒業後は海外留学なんて、良いんじゃない？！」

　⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯海外留学。

　その言葉に乗せられて、宵子さんは、セラフィム学園を受験し、いとも簡単に受かってしまった。

　そして、新学期が始まる一週間前の今日、バカバカしいほど巨大な寮に、段ボール三個と一緒にやって来たのだ。