普通の人生からの死

アキラ

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普通の人生からの死

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 私の名前は水野みずの真鈴まりん

 本当に普通の子だった。それが私の理想だった。

 だけど私の理想は壊された。


 小学生の頃は皆と同じ赤いランドセルを背負って、沢山友達を作った。一人っ子のためか両親に可愛がられ、大抵の欲しいものは買ってもらえた。日本の一般家庭だったから特に不自由もなかったし、自分の部屋もあった。

 中学でも特に勉強や運動が出来るわけでもなかったけど特別苦手なこともなかった。コーラス部に入ってソプラノを歌ったけど別に上手ではない。学期末の通知表も普通だった。

 高校では吹奏楽部に入った。一番人数が多いクラリネットをしたが、ここでも特に上手ではなかった。けれど、やはり友達は出来た。

 大学はそこら辺の短大に行って一般企業に就職して主婦にでもなろうかなと考えていたのが今、高二の頃だ。


 自転車に乗って学校に行こうとした日のことだった。

 その日は特に寝坊したとか大会だとかもなく、本当に普通の日になるはずだった。

 いつも通りに「行って来ます」と言って家を出て、自転車に跨ってペダルを踏み込んだ。

 もう2年目の、見慣れた通学路を自転車で漕いで行って、角を曲がった。そこで昨日の雨の水溜りにタイヤを突っ込んでしまった。
 紺色の靴下に水が跳ねて、反射的に止まった。道路の真ん中だったのだ。焦って来た道の端に戻ろうと自転車から降りて、押して歩こうとした。

 だが、私が向かっている曲がり角からトラックが来た。トラックの運転者も遅れて気づいたようだが、急に止まることは出来なかった。私は真正面からトラックに轢かれてしまった。
 救急車の音を聞いたのが最後だった。

 私は救急車の音が近づいてくるのと近所の人達が騷めいているのを意識が遠くなりながら聞いていた。
 救急車が到着した頃にはもう意識がなかったのだと思う。

 人生短かったなと思いながら意識が遠のいて行く。

 あぁ、もっと長生きしたかったな。もっと友達作りたかったな。普通の人生過ごしたかったな。
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