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沢山のスライム

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 さて、まずは何から始めていこうか。
 初めてのことに首を傾げて悩んでいるとスライムが言ってくる。


「ごはんー、おなかすいたー」


 たしかに最初はまず飯の確保か。衣食住の確保ができないとまともな生活なんてできないもんな。


「よし、それなら食えるものを探しにいくか」


 スライムを肩に乗せると森の中を歩いていく。



 しばらく歩くと木に果物のようなものが実っていた。
 りんごに似ているようだけど、あれは食べられるのだろうか?


「とってくる……?」


 スライムが尋ねてくるので頷くと手の方に移動してくる。

 また投げろということなのだろうか?

 全力でその果物めがけて放り投げる。
 スライムは木にへばりつき、実っている果物をどんどん落としてくれるので、それを拾っていく。

 これである程度の食材は確保できたか。問題は食えるか……だな。

 どうやったらそれを確かめられるのかと迷っているとスライムが戻ってきて、落ちていた果物を一つ、口の中に入れていた。


「おいしい……、ごしゅじんさま、すごーい!」


 なぜか俺が褒められる。

 どうやら、普通に食べられるものらしい。
 試しに一齧りしてみる。

 程よいかみごたえとみずみずしさ、あと甘さが口の中に広がっていく。
 味はやはりりんごに近い感じだな。普通に食えるようだし、これで飯の確保は問題ないか。

 できればもっといろんなものが食べたいところだが、他にも確保すべき物はいくらでもある。


「次は飲み物だな。水の確保をしないと」
「みずー、こっちー」


 スライムが何かを見つけたようで先に跳ねていく。
 その後を追いかけながら、スライムって意外と便利だなと思い始めていた。

 そして、たどり着いたのは透き通った水が流れる綺麗な小川だった。
 ここまで綺麗だと飲み水としても使えそうだ。


「よくやった。これで生きていくことはできそうだ」


 スライムを持ち上げて精一杯褒めてあげる。


「ごしゅじんさまのおかげ。まりょく、くれるから」


 どうやら召喚で出したスライムは魔力を使って生きているようだった。

 ただレベル0のスライムが消費する魔力はかなり微弱で減っているように見えなかった。
 でも、スライム一匹でこれだけ役に立つなら更に数が増えたらどうなるのだろうか?

 それにこの子も一匹だけだったら寂しいかもしれないもんな。


「お前、仲間は欲しいか?」
「なかま?」


 スライムは体を傾げていた。
 召喚で呼び出したからだろうか。俺の話していることがよくわからないようだった。


「そうだな、試しに召喚してみるか。召喚サモン


 再び俺は召喚魔法を使用する。
 巨大な魔法陣が現れて、光とともに軟体生物が現れる。

 うん、スライムだ……。

 やはり今の俺にはどうやってもスライムしか召喚できないようだった。


「まぁ一匹より二匹の方ができることは多いもんな」


 いや、それならばもっとたくさんのスライムがいればもっと効率よく生活ができるようになるんじゃないだろうか。
 二匹に増やしてもほとんど魔力が減っていない。これならまだまだ増やしていけそうだ。



 それなら調子に乗ってスライムを増やしていった。


「よし、これだけいればかなり楽できそうだ」


 目の前には埋めつくすほどのスライムたち。その数は百を超えてそうだ。
 それだけ召喚しても魔力はほとんど減らない。


「なにするー?」


 やる気を見せてくれるスライムたち。
 食べ物と飲み物を確保出来たら次は……住むところだな。


「とりあえず周囲を調べてきてくれ」
「わかったー」


 スライムたちは皆散り散りに行き、あとに俺一人だけ残されていた。
 周囲の捜索はスライムたちに任せて問題なさそうだ。その間に俺は自分の能力について更に詳しく調べていく。

 まず、召喚したスライムたちが見てる景色は俺自身も見れるらしい。ただ、視点切り替えのように一体ずつの景色しか見られない。
 同時に見ようとして気絶しそうになったので、一度に複数の視点は処理できないのだろう。

 二つ目。百体以上召喚してようやく一時間に魔力が一減る程度だった。ただし、一時間で一魔力が回復するので実質何も消費していないのと同じだった。

 そして、三つ目。スライムたちは体が液状で柔らかく、狭い場所に入っていける上に高所から落ちてもダメージがないようだ。
 あとは動きも意外と素早く、ジャンプ力もある。
 捜索に充分役に立ってくれそうだ。

 最後にこの青いスライムたちは物を体内に取り込めるらしい。
 それほど一度に多く取り込めるわけじゃないが、数が多ければあっという間に大量の物を集めることができた。

 それならば家を作るために木材を集めてもらおうとする。


「もくざいー?」
「あつめるー?」


 指示を出すとスライムたちは各々飛び跳ねて散り散りに去っていく。

 そして、戻ってくると木の枝や葉っぱと言ったものを置いていくスライムたち。

 目の前に山のように……。

 って、こんなものどうやって使うんだ!?

 俺が考えてたのは丸太のようなものだったのだが、流石に大きなものになるし、スライムたちには運ばなかったようだ。

 仕方ない、これで何かできないかを考えてみるか……。

 少し頭を捻らせるが、地面に葉っぱを引いてベッドにするくらいしか思いつかなかった。


「せめて、この木の枝が箱のように固まればな……」


 箱ならばまだ積み上げていけば家みたいになってくれる。
 思わず呟くとスライムたちが聞き返してくる。


「はこー? まとめるー?」
「あぁ、箱にできれば……」
「まかせてー」


 自信たっぷりに言ってきたかと思うと、積まれている木の枝を体内に取り込んであった。
 一体で取り込める量はそれほど多くないので、山が少し小さくなっただけだった。

 そして、しばらくするとスライムが体内から木の枝を取り出す。
 ただ、それは先ほどの枝ではなく、箱状に固められていたのだった。


「できたよー」


 嬉しそうに言ってくるスライム。
 これなら家も作れそうだ。

 早速俺は残りの木の枝も箱のように固めてもらい、ブロックを積み上げていった。
 そして、壁だけが出来上がった。

「すごーい。これならおそわれないねー」


 スライムが喜んでいたが壁は押せば簡単に崩れるし、屋根がないので雨風も凌げない。魔物に襲われたらひとたまりもないだろう。

 まだまだ、改良が必要だな。
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