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反乱軍(1)
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「く、クロウリッシュ様!? そちらのお方は?」
館に戻ってきたら、使用人たちに驚かれてしまう。
まぁ、突然少女を連れてきたら当然だろう。
「この子があの有名な魔女……と言うやつだ」
「く、クロウリッシュ様!? そんな危険な相手をどうして!?」
「どうしてって珍しいだろう?」
これを押し通すしか館にルリカを住まわせる方法はないかな、と思いにやら微笑んで見せる。
「なるほど……。そう言う事情でしたらかしこまりました。部屋は用意したほうがよろしいでしょうか?」
「あぁ、頼む」
「あ、あの、クロウリッシュ様? 私はその……、別に部屋がなくても――」
「そうなると俺の部屋に一緒に寝ることになるが?」
「そ、その、別の部屋ならありがたいです……」
ルリカがシュンと落ち込んだ様子を見せる。
いや、頬を染めているところを見ると恥ずかしがっているのだろう。
「それよりも今の国の状態を知りたいのだが――」
「国の……? どういうことでしょうか?」
さすがに直接『国が国民から不満を持たれていると聞いたが――』とは聞けないか……。
「政策の評判とかそういったものだな。今後の参考になるかと思ってな」
「そういうことでございますね。ただ、あまり評判は芳しくありませんね。やっぱり国を襲っている大不況が原因でしょうか――?」
「大不況……? そんな風には見えないが――」
「それはクロウリッシュ様が公爵子息であらせられるからですね。実際は毎日食べていくのすら怪しい状況らしいです」
「――やっぱりそうか。それならいろんなところで反乱とかが起こってるんじゃないのか?」
「……やっぱりわかりますか。実はそうなんですよ。ご主人様が王都へ行かれているのもそれに対処するからでして――」
なるほどな……。
やはり国を襲う勢力はあるのか。
「この近くにもいるのか?」
「そうですね……。この近くでしたらクロウリッシュ様が連れられている魔女の集団が一つ、あと先日暴動を起こした集団が一つですね。少し離れた村々にも小粒の勢力がいるとは聞いております」
「そうか……。それは早めに対処しておく必要があるな」
「クロウリッシュ様が直接当たられるのですか? さすがに危険では?」
「このまま放置しておくわけにもいかんだろう?」
仲間に引き入れることが出来れば大幅な戦力アップが見込めるもんな。
国に潰されるまでに動いておかないと。
「かしこまりました。では、兵や冒険者を雇えるだけ準備を――」
「いや、それもいらん。必要な兵くらい自分で集める。雑兵を集めて下手に内から崩されても困るからな」
「かしこまりました……」
「あっ、でも、一人だけ連絡を取って欲しい相手がいる」
「その方とは?」
「Sランク冒険者、ジークフリードだ――」
それを告げたあとに俺はにやりと微笑んでいた。
◇
さすがにSランク冒険者と連絡を取り合うのは時間がかかるようだ。
その間に村にいる反乱軍と接触をしておこう。
「あの、クロウリッシュ様? ブライトさんには連絡を取らなくて良いのですか?」
「あぁ、それも必要になるな。ルリカ、頼んでも良いか?」
「わかりました。すぐに連絡してきますね」
「俺の方も今晩から行動を起こす。あとから付いてきてくれ」
「はい、そのようにお伝えさせていただきますね」
ルリカは一礼したあとに館を出て行く。
俺も早速今夜から出られるように準備を始めて行った。
◇
近くの村へとたどり着く。
その凄惨さは思わず顔を背けてしまうほどだった。
作物も何も植わっていない畑。
村の道にはガリガリに痩せこけた人たちが座り込んでいる。
そして、俺の姿を見た瞬間にすがるように近づいてくる。
「な、何か食べ物を恵んでくれませんか?」
さすがにそのまま放っておく訳にはいかないか……。
そこまで食料は持ってきたわけではないが――。
俺は手荷物から食料を取り出すとそれを座り込んでいた人に渡す。
「これだけしか渡せないが大丈夫か?」
「あ、ありがとうございます。このお礼は必ず――」
それだけ言うと必死になって渡した食料を食べ始める。
その様子を微笑みながら眺める。
「そうだな、それなら教えて欲しいことがあるのだが――」
「なんなりと聞いてください。私にわかることでしたら――」
「それならこの村にいるという反乱軍について――」
「知らん!」
さっきまでの雰囲気とは打って変わり、きっぱりと言い切ってくる。
そのあまりの否定感から逆にこの村に反乱軍がいることをはっきり知ることが出来た。
「なるほどな……。ありがとう。この村にいることがわかった。早速探してみる」
「ど、どうして――」
「むしろ今の反応でどうしてわからないと思ったんだ?」
「――くっ、かくなる上は恩人だが、秘密を隠すために……」
懐に手を入れてくる。
「まだまともに体調も戻っていないんだろう? そんな状態で俺に勝てると思うな。それに反乱軍をどうこうするつもりはない。ただ話がしたいだけだ」
「話? どういうことだ?」
「簡単なことだ。共に志を同じくするもの同士、挨拶をするのはおかしいことではあるまい」
「ま、まさか貴方様もこの国を憂いて……」
「あぁ、だから反乱軍がいる場所へ案内してくれ」
「か、かしこまりました。では付いてきてください」
男に案内されて、俺は小さな小屋へと案内された。
館に戻ってきたら、使用人たちに驚かれてしまう。
まぁ、突然少女を連れてきたら当然だろう。
「この子があの有名な魔女……と言うやつだ」
「く、クロウリッシュ様!? そんな危険な相手をどうして!?」
「どうしてって珍しいだろう?」
これを押し通すしか館にルリカを住まわせる方法はないかな、と思いにやら微笑んで見せる。
「なるほど……。そう言う事情でしたらかしこまりました。部屋は用意したほうがよろしいでしょうか?」
「あぁ、頼む」
「あ、あの、クロウリッシュ様? 私はその……、別に部屋がなくても――」
「そうなると俺の部屋に一緒に寝ることになるが?」
「そ、その、別の部屋ならありがたいです……」
ルリカがシュンと落ち込んだ様子を見せる。
いや、頬を染めているところを見ると恥ずかしがっているのだろう。
「それよりも今の国の状態を知りたいのだが――」
「国の……? どういうことでしょうか?」
さすがに直接『国が国民から不満を持たれていると聞いたが――』とは聞けないか……。
「政策の評判とかそういったものだな。今後の参考になるかと思ってな」
「そういうことでございますね。ただ、あまり評判は芳しくありませんね。やっぱり国を襲っている大不況が原因でしょうか――?」
「大不況……? そんな風には見えないが――」
「それはクロウリッシュ様が公爵子息であらせられるからですね。実際は毎日食べていくのすら怪しい状況らしいです」
「――やっぱりそうか。それならいろんなところで反乱とかが起こってるんじゃないのか?」
「……やっぱりわかりますか。実はそうなんですよ。ご主人様が王都へ行かれているのもそれに対処するからでして――」
なるほどな……。
やはり国を襲う勢力はあるのか。
「この近くにもいるのか?」
「そうですね……。この近くでしたらクロウリッシュ様が連れられている魔女の集団が一つ、あと先日暴動を起こした集団が一つですね。少し離れた村々にも小粒の勢力がいるとは聞いております」
「そうか……。それは早めに対処しておく必要があるな」
「クロウリッシュ様が直接当たられるのですか? さすがに危険では?」
「このまま放置しておくわけにもいかんだろう?」
仲間に引き入れることが出来れば大幅な戦力アップが見込めるもんな。
国に潰されるまでに動いておかないと。
「かしこまりました。では、兵や冒険者を雇えるだけ準備を――」
「いや、それもいらん。必要な兵くらい自分で集める。雑兵を集めて下手に内から崩されても困るからな」
「かしこまりました……」
「あっ、でも、一人だけ連絡を取って欲しい相手がいる」
「その方とは?」
「Sランク冒険者、ジークフリードだ――」
それを告げたあとに俺はにやりと微笑んでいた。
◇
さすがにSランク冒険者と連絡を取り合うのは時間がかかるようだ。
その間に村にいる反乱軍と接触をしておこう。
「あの、クロウリッシュ様? ブライトさんには連絡を取らなくて良いのですか?」
「あぁ、それも必要になるな。ルリカ、頼んでも良いか?」
「わかりました。すぐに連絡してきますね」
「俺の方も今晩から行動を起こす。あとから付いてきてくれ」
「はい、そのようにお伝えさせていただきますね」
ルリカは一礼したあとに館を出て行く。
俺も早速今夜から出られるように準備を始めて行った。
◇
近くの村へとたどり着く。
その凄惨さは思わず顔を背けてしまうほどだった。
作物も何も植わっていない畑。
村の道にはガリガリに痩せこけた人たちが座り込んでいる。
そして、俺の姿を見た瞬間にすがるように近づいてくる。
「な、何か食べ物を恵んでくれませんか?」
さすがにそのまま放っておく訳にはいかないか……。
そこまで食料は持ってきたわけではないが――。
俺は手荷物から食料を取り出すとそれを座り込んでいた人に渡す。
「これだけしか渡せないが大丈夫か?」
「あ、ありがとうございます。このお礼は必ず――」
それだけ言うと必死になって渡した食料を食べ始める。
その様子を微笑みながら眺める。
「そうだな、それなら教えて欲しいことがあるのだが――」
「なんなりと聞いてください。私にわかることでしたら――」
「それならこの村にいるという反乱軍について――」
「知らん!」
さっきまでの雰囲気とは打って変わり、きっぱりと言い切ってくる。
そのあまりの否定感から逆にこの村に反乱軍がいることをはっきり知ることが出来た。
「なるほどな……。ありがとう。この村にいることがわかった。早速探してみる」
「ど、どうして――」
「むしろ今の反応でどうしてわからないと思ったんだ?」
「――くっ、かくなる上は恩人だが、秘密を隠すために……」
懐に手を入れてくる。
「まだまともに体調も戻っていないんだろう? そんな状態で俺に勝てると思うな。それに反乱軍をどうこうするつもりはない。ただ話がしたいだけだ」
「話? どういうことだ?」
「簡単なことだ。共に志を同じくするもの同士、挨拶をするのはおかしいことではあるまい」
「ま、まさか貴方様もこの国を憂いて……」
「あぁ、だから反乱軍がいる場所へ案内してくれ」
「か、かしこまりました。では付いてきてください」
男に案内されて、俺は小さな小屋へと案内された。
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