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閑話 初建築後
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「ケンゴ様、初依頼どうでしたか?」
無事に依頼を達成したあと、研吾の部屋にやってきたミルファーが聞いてくる。
「うーん、まだ簡単な依頼だったからかな。あまり達成感がないな。むしろ魔法について驚かされたばっかりだったぞ」
たしかに電気で使うようなものは見て回ってもなかった。そのかわり、魔法で何でも出来る。それがこの世界の常識のようだ。
「はい、結構便利なんですよ。ただ、ケンゴ様はお使い出来ませんので、もし何かあったときは私に言いつけてくださいね」
「その時は頼むよ」
研吾はミルファーに笑みを見せる。
「そういえば私のほうも驚かされましたよ。ちょっとしたことでずいぶんと見違えるものなのですね」
「あぁ、そうなんだ。ちょっとしたことなんだけど、それでも、直してみるとずいぶん変わっただろう?」
研吾がニヤリと微笑みを浮かべるとミルファーも笑みを返してくれる。
「そういえば、まだこの世界のことを全然とわからないな。また時間が取れたときに町を案内してくれないか?」
「いいですよ。これからでも大丈夫ですけど?」
「いや、今日はちょっと休ませてくれるか? さすがに疲れが……」
研吾はあくびをかみ殺しながら言う。すると、ミルファーは小さく微笑むと頭を下げる。
「それならお食事はすぐ近くの定食屋に行ってみませんか?」
特に断る理由もなかったので研吾は頷く。
そして、ミルファーの案内の元、木造の風情漂うお店にやってきた。
昔からお店を開いていそうな、歴史を感じさせるその佇まいは料理を見る前からこの店はおいしいと感じさせてくれるようだった。
「さぁ、入りましょう」
建物ばかり見ているとミルファーに促される。たしかに既に日も落ちて辺りも暗くなっている。研吾の顔にも疲れの色が見えていた。こんなところでじっくりと見ていても仕方ないだろう。
「あぁ、そうだな」
研吾は両引扉を開き、中に入る。中も木のテーブル、椅子といったものが並べられていた。
しかし、小寂れた様子があるからか、あまり人も多くない。
空いてるなら助かると研吾たちは空いている席に座る。
「あっ、たいしょー。いつもの一つ……。ケンゴ様はどうしますか?」
「そうはいってもなぁ……」
文字はなんとか読めるものの、そこから料理を想像出来ない。
なんだ、このサワ魚のサラマンドラ焼きって?
他にも想像も付かないようなものばかりだ。ということで仕方なく研吾はミルファーと同じものを頼んだ。
そして、やってきたのはどこかで見覚えのある肉料理だった。
生姜焼き? いや、ちょっと違うか? でも何だか似てるな。
そんなことを考えながら恐る恐る口に運ぶ。
ミルファーは本当においしそうに頬に手をあてて恍惚の表情を浮かべていた。
研吾も口に運んだとたんにその表情は驚きに変わる。
「うそ……何この味? 見た目は生姜焼きなのにもっと濃厚で……でもこってりしているかと言えばそうでもない。……うん、とにかく美味い!」
言葉で言い表せなかったが、とにかく今まで食べたことのないような味ですごく美味かった。それからは夢中で食べていき、気がつけばお皿の中身は空になっていた。
「どうでしたか?」
ミルファーが聞いてきたので研吾は笑顔を見せながら言う。
「あぁ、すごく美味かった。また来よう」
そう言うとミルファーも嬉しそうに頷いた。
無事に依頼を達成したあと、研吾の部屋にやってきたミルファーが聞いてくる。
「うーん、まだ簡単な依頼だったからかな。あまり達成感がないな。むしろ魔法について驚かされたばっかりだったぞ」
たしかに電気で使うようなものは見て回ってもなかった。そのかわり、魔法で何でも出来る。それがこの世界の常識のようだ。
「はい、結構便利なんですよ。ただ、ケンゴ様はお使い出来ませんので、もし何かあったときは私に言いつけてくださいね」
「その時は頼むよ」
研吾はミルファーに笑みを見せる。
「そういえば私のほうも驚かされましたよ。ちょっとしたことでずいぶんと見違えるものなのですね」
「あぁ、そうなんだ。ちょっとしたことなんだけど、それでも、直してみるとずいぶん変わっただろう?」
研吾がニヤリと微笑みを浮かべるとミルファーも笑みを返してくれる。
「そういえば、まだこの世界のことを全然とわからないな。また時間が取れたときに町を案内してくれないか?」
「いいですよ。これからでも大丈夫ですけど?」
「いや、今日はちょっと休ませてくれるか? さすがに疲れが……」
研吾はあくびをかみ殺しながら言う。すると、ミルファーは小さく微笑むと頭を下げる。
「それならお食事はすぐ近くの定食屋に行ってみませんか?」
特に断る理由もなかったので研吾は頷く。
そして、ミルファーの案内の元、木造の風情漂うお店にやってきた。
昔からお店を開いていそうな、歴史を感じさせるその佇まいは料理を見る前からこの店はおいしいと感じさせてくれるようだった。
「さぁ、入りましょう」
建物ばかり見ているとミルファーに促される。たしかに既に日も落ちて辺りも暗くなっている。研吾の顔にも疲れの色が見えていた。こんなところでじっくりと見ていても仕方ないだろう。
「あぁ、そうだな」
研吾は両引扉を開き、中に入る。中も木のテーブル、椅子といったものが並べられていた。
しかし、小寂れた様子があるからか、あまり人も多くない。
空いてるなら助かると研吾たちは空いている席に座る。
「あっ、たいしょー。いつもの一つ……。ケンゴ様はどうしますか?」
「そうはいってもなぁ……」
文字はなんとか読めるものの、そこから料理を想像出来ない。
なんだ、このサワ魚のサラマンドラ焼きって?
他にも想像も付かないようなものばかりだ。ということで仕方なく研吾はミルファーと同じものを頼んだ。
そして、やってきたのはどこかで見覚えのある肉料理だった。
生姜焼き? いや、ちょっと違うか? でも何だか似てるな。
そんなことを考えながら恐る恐る口に運ぶ。
ミルファーは本当においしそうに頬に手をあてて恍惚の表情を浮かべていた。
研吾も口に運んだとたんにその表情は驚きに変わる。
「うそ……何この味? 見た目は生姜焼きなのにもっと濃厚で……でもこってりしているかと言えばそうでもない。……うん、とにかく美味い!」
言葉で言い表せなかったが、とにかく今まで食べたことのないような味ですごく美味かった。それからは夢中で食べていき、気がつけばお皿の中身は空になっていた。
「どうでしたか?」
ミルファーが聞いてきたので研吾は笑顔を見せながら言う。
「あぁ、すごく美味かった。また来よう」
そう言うとミルファーも嬉しそうに頷いた。
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