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38:ヒーロー側【わがままを叶えるなど当然】と連動

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 名前を呼ぶ許可についての返答が、可愛い笑顔という困る返しにどきどきしつつも困っていると、ラクシュ様の視線がふっと、あのお茶の缶が並べられた場所に向く。

「で…お前、まだ絞り込めていないのですか」
「申し訳ございません」
「…仕方ありませんね。ちなみにこれで全種ですか」
「いえ、後いくつか手に入らない物がございまして」
「何?」
「…申請はしているのですが」
「ああ、お前の立場では手に入り難い物もありますし仕方ありませんが…それくらい、おねだりしなさい。ほら、これ」

 レイと話始めたラクシュ様だけど、レイが怒られるのかと思って、どう止めようかと思っていると、おねだりとか言い出して、頭が真っ白に…と、思ったら、ラクシュ様は上着のポケットから缶を取り出した。と言っても…タバコの箱より小さくて薄い缶だけど。それをぽいっとレイに投げ…た?腕の動作なかったけど。

「お前が求める物、全種はいっています」
「…なんで持ってるんです」
「なんで持っていないと思うんですか。あの方がいつ何時、ソレを言い出すかなんて分からないというのに」
「いや、今いないでしょうに」
「常にご用意していますが」
「(うわぁ…)…では、手持ちがなくなるのでは」
「あれだけなら、コレにも持たせていますから問題ありませんよ」

 ラクシュ様はそう言って、背後に立っていた騎士服の人へと手のひらを出せば、その手の上に乗せられる、似たような缶。

「…あの、それは…」
「これですか?ルーヴェリア様が急に飲みたいとわがままを言い出すお茶です」

 先ほどレイに渡したものは、それ以外にも入っているらしい。あの小さな缶に?と驚くけれど、一杯分だけ入っているとか。後でちゃんとした物を用意すると言っているけれど。
 それにしても、わがままって何よ…なんだか子供に対する様な言い分だけれど…第二王子様よね。ルーヴェリア様と言っていたし。以前もそうだったけれど…失礼にならないのかしら。一応、今は…父の侍従もいるのに。

「脈略なく言い出すので、困るんですよね。警邏中に言われた時は、本当にどうしようかとおもいました」
「…警邏…王都の見回り、ですわよね。どうなさったんですか?」
「手持ちはありましたし、幸い近くにレストランがありましたので、そちらで淹れてさしあげました」
「それは、助かりましたね」

 レストランの人もびっくりしたのでは…貴族街のレストランならまだ…違うかもしれないけれど、王族が来るなんて、そうそうないはずだし。…まあ、レストランで食事したいという理由ではない所がなんともだけど。
 しかし…流石王族と言うべきなのか…それにきちんと対応できるラクシュ様がすごいと言うべきか…反応に困る。
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