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ディベル侯爵家のメイドの名前を聞けたと安堵していたのだけれど…席に座りなおしたレイ…昨日からついているメイドに、名前は覚えなくてもいいと言われてしまった。
「覚えなくていいだなんて、そんな」
「今ここへ派遣されている私達ですが…そのままネルア様付になるかどうか、まだ分かりませんので」
「…ですが、騎士様からのお手紙には…王都で過ごす場合に、不足がないようにと」
そう、書いてあったもの。だから…きっと、このままなのだと思うのだけれど。
「恐れながら。レイは、おそらくそのままネルア様付になると思います」
「今はまだ不確定要素です」
「…はい」
不確定要素…デボラも、おそらくと言っていたから、決定してないという事?でも、それじゃあ、意味がないのでは?
「私共ディベル侯爵家の…メイドは、少々変わった使い方をしますので…先ほども話しましたが、違う領地に行ったり、です」
「そうなのですね…けれど、それでは…」
「固定される場合もございます。ただ…それらのお考えは、あの方次第ですので」
あの方、というと…侯爵様かしら。いえ、奥方かもしれないけれど…確かに今朝着替えながら聞いた事もあるし…でも。
「あまり頻繁に変わってしまうのも、落ち着かなくて嫌だわ」
「では、そのようにお伝えしておきます。ただ、やはり…能力や得意不得意で変わる事もあり得ると、ご理解頂きたいです」
確かに。今このグランシュネル公爵領にいる、ディベル侯爵家のメイドの人数は少ないものね。ラクシュ様の日常がどうなのか分からないけれど、流石にこの人数で回すのは…お休みも欲しいだろうし。
でも、ちょっとだけしか分からないけれど、このメイド達、得意不得意とかあるのかしら…
「先ほど…デボラさんは裁縫が得意という事でしたけれど、レイさんは…聞いてもいいかしら」
「私共の事は、どうぞレイ、デボラとお呼びください」
「…わかりました。それで、どうなのです?」
「私は、これといって得意という物はございませんが…不得意という物もございません」
「それはすごいですわね。ですが…嫌いな物とか、苦手な…食べ物とか、そういう物も一切、ですの?」
得意不得意がないといっても、何かしらあると思うのよね。だからそう聞けば、ことり、と小首をかしげて考えているようですが…いちいち可愛いわね。挙動が。
「まだ未経験の物に関しては、何とも言えませんけれど…これといってございませんね。ネルア様は苦手な物、ございますか?」
と、却って聞き返されてしまった。今後の為にも。という事だけれど…
「食事は…今の所、苦手な物はございませんが…ただ、余り辛い物は…」
「かしこまりました。他には」
「イモ虫が苦手ですわ。いずれ綺麗な蝶になるものだと分かってはいるのですけれど」
あとは黒いアイツとか…ただ、今までこの世界で生きてきて、見たことがないから言わない。いるのかもしれないけれど…ただ、掃除が行き届いていて、とか、生息地域が違う、とかかもしれないから…虫の図鑑でまで調べたくないし、目にしたことがない虫が嫌いというのも、ちょっとおかしな人に見られてしまうしね。
そんな話をしながらお茶をして、お茶休憩を終わりにしてからは、レイも一緒に人形作りをしたのだけれど…流石にデボラ程ではないけれど、私達より綺麗にさくさくと針を通していくその姿に、得意不得意がなくてコレとか…ディベル侯爵家のメイドって…と、遠い目をしてしまったのは、ここだけの秘密だ。
「覚えなくていいだなんて、そんな」
「今ここへ派遣されている私達ですが…そのままネルア様付になるかどうか、まだ分かりませんので」
「…ですが、騎士様からのお手紙には…王都で過ごす場合に、不足がないようにと」
そう、書いてあったもの。だから…きっと、このままなのだと思うのだけれど。
「恐れながら。レイは、おそらくそのままネルア様付になると思います」
「今はまだ不確定要素です」
「…はい」
不確定要素…デボラも、おそらくと言っていたから、決定してないという事?でも、それじゃあ、意味がないのでは?
「私共ディベル侯爵家の…メイドは、少々変わった使い方をしますので…先ほども話しましたが、違う領地に行ったり、です」
「そうなのですね…けれど、それでは…」
「固定される場合もございます。ただ…それらのお考えは、あの方次第ですので」
あの方、というと…侯爵様かしら。いえ、奥方かもしれないけれど…確かに今朝着替えながら聞いた事もあるし…でも。
「あまり頻繁に変わってしまうのも、落ち着かなくて嫌だわ」
「では、そのようにお伝えしておきます。ただ、やはり…能力や得意不得意で変わる事もあり得ると、ご理解頂きたいです」
確かに。今このグランシュネル公爵領にいる、ディベル侯爵家のメイドの人数は少ないものね。ラクシュ様の日常がどうなのか分からないけれど、流石にこの人数で回すのは…お休みも欲しいだろうし。
でも、ちょっとだけしか分からないけれど、このメイド達、得意不得意とかあるのかしら…
「先ほど…デボラさんは裁縫が得意という事でしたけれど、レイさんは…聞いてもいいかしら」
「私共の事は、どうぞレイ、デボラとお呼びください」
「…わかりました。それで、どうなのです?」
「私は、これといって得意という物はございませんが…不得意という物もございません」
「それはすごいですわね。ですが…嫌いな物とか、苦手な…食べ物とか、そういう物も一切、ですの?」
得意不得意がないといっても、何かしらあると思うのよね。だからそう聞けば、ことり、と小首をかしげて考えているようですが…いちいち可愛いわね。挙動が。
「まだ未経験の物に関しては、何とも言えませんけれど…これといってございませんね。ネルア様は苦手な物、ございますか?」
と、却って聞き返されてしまった。今後の為にも。という事だけれど…
「食事は…今の所、苦手な物はございませんが…ただ、余り辛い物は…」
「かしこまりました。他には」
「イモ虫が苦手ですわ。いずれ綺麗な蝶になるものだと分かってはいるのですけれど」
あとは黒いアイツとか…ただ、今までこの世界で生きてきて、見たことがないから言わない。いるのかもしれないけれど…ただ、掃除が行き届いていて、とか、生息地域が違う、とかかもしれないから…虫の図鑑でまで調べたくないし、目にしたことがない虫が嫌いというのも、ちょっとおかしな人に見られてしまうしね。
そんな話をしながらお茶をして、お茶休憩を終わりにしてからは、レイも一緒に人形作りをしたのだけれど…流石にデボラ程ではないけれど、私達より綺麗にさくさくと針を通していくその姿に、得意不得意がなくてコレとか…ディベル侯爵家のメイドって…と、遠い目をしてしまったのは、ここだけの秘密だ。
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