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4章:偽装結婚を提案されました

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 早めの昼食を食べて、装備のお店へ向かう。露店から比較的近い場所にお店があって、歩いて10分程の距離だった。何気に手つなぎのままでしたが。そしてそのことに気が付いたのは、お店に到着してからでした…慣れすぎでしょう、私。

 お店に入ると、若い女性が店番をしていたけれど、おやじを呼んでくると言って奥に行ってしまった。なので、きょろきょろと周りを見るけど…武器は勿論、鎧とか服、帽子なんかも飾ってある。ただ、サンプルなのか…日本でのショップみたいに、ずらっと服をかけていないみたいなんだけど、どうするんだろう?

「おう、ぼっちゃん、今日はべっぴんさん連れてどうした?」

 と、考えているとドアから現れたのはいかにも職人ですっていう感じの厳つい、筋肉質の男性だけど…べっぴんて…

「装備を見に来たに決まってるだろうに。後、ぼっちゃんは止めろ。すまない、ユカ。悪い人ではないんだが、職人はこういうやつが多くてな」
「ははは。随分な口を利くじゃねぇか。って、装備っていうと、ハンターか?このべっぴんさんがか?」
「ああ。狩り主体ではなく薬草なんかの採集系が主体だな。だから、金属の採集依頼は受けないぞ」
「あ~まあ、おなごに鉱石を取ってこいとはいわんよ。ふーん、そうか…するとこの辺りか」

 キルギスさんの説明で納得したのか、カウンターから出て来て服と手袋、あと…スカーフなのか、ストールなのか…一枚の布を出して来る。疑問に思っているのが分かったのか、その布を広げて見せて来る。

「物によっては粉が飛ぶからな。こういう布で鼻や口を覆うんだ。依頼の品によって着けるか決めればいい」
「…この近辺ではそういう物はないはずだから必要ないと思うんだが」
「ぼっちゃん、これは寒い時にも使えるんだから、持っていた方がいいぞ」

 と、この装備はキルギスさんは想定していなかったみたいだけど…寒い時か。確かに見せてくれた大きさは大判のストールだから、マフラー代わりにもなるし羽織るだけでも結構違うよね。生地もそこそこ厚みあるし。

「そうか…それならそれも貰おう。サイズは…」
「ああ、それならちょっと待ってろ」

 って、特に何かを選ぶでもなく、話が進んでしまったけど…いいのかな?と思っていたら、最初に受付にいた女性がまた出てきた。サイズ調整をするからと試着室に通されて、女性の大き目サイズを着せられて、サイズを詰めるのだと言って色々寄せたり抑えたりしてサイズが決まった。

「デザインとか何か希望はありますか?」
「デザインですか?」
「はい。よくあるのが、動きやすい様に肩や肘周りは緩めにして、手首周りを幅広目にぴったりめにしてボタンで止めるとか…こちらはズボンですが、上からスカート状の物を履くとか、布を巻き付けるとかもありますよ」

 と、サイズ確認しながら女性にデザインのアドバイスを聞いた。なるほど、採集だからそこまで動く訳じゃないけど、ハンターとして狩りをするなら動きやすさも重要なのかな。でも、デザインの事を聞かれてもな…

「一応野草とかの採集メインにする予定なんです。おすすめとかありますか?」
「そうですねぇ…それなら先ほど言った手首周りをぴったりにした方がいいですね。密集してる草花だと袖が邪魔になる可能性がありますから」

 他は好みの問題です。と言われて、ひとまず袖はアドバイスの通りにしてもらう。ただ、ボタンも好きな物を選んだ方が良いと言われて後でサンプルを見せて貰う事に。後は、ズボンに関してはそのままにして貰った。ゆったりカーゴパンツだけど、ひざ下が絞ってあって歩いたり走ったりしても邪魔にならなさそうだったから。

 そうして装備は2、3日で調整が出来上がると言われたけど、キルギスさんに取りにくると言われてしまった。支払い?もちろんキルギスさん持ちですよ…まだ収入がないからね…野草とか薬草で返せるほどの稼ぎになるか分からないけど、頑張らないと…!
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