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3章:異世界と日本との二重生活の始まり

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 日本に戻って、翌日。松田さんから連絡があり、来週の土曜日に東京へ来るとの事。なので、来週はあっちの世界には行かないで欲しいとも。
 まあ、神様の件とか、あっちの世界に技術持ち込むとか、そういう話もしたいしね。ただ、キルギスさんの心配性が発動すると怖いから、土曜日の夕食だけ、あっちで一緒に食事してほしいとは言われましたが。
 まあ、手紙も電話もできない、本当に隔絶された世界だしね。しょうがないよね。

 ということで、土曜日。
 待ち合わせたのは、なんとレンタルオフィスというか、会議室というか。

「じゃあ、この書類を入力してください」
「はい、かしこまりました」

 という嘘の会話をし、後はPCでさも作業してますっていう音を流した上で、松田さんの遮音結界の中で会話するというなんとも変な状況。

「…ここまでする必要あります?」
「気づく人は気づくよ。まあ、それはともかくとして…神様ってどういう事?」
「ちなみにあっちの世界って、神様とかそういう存在はどうなんです?実在するモノなのか、こっちと同様空想なのかとか」
「空想ではあるけど、落ち人の存在があるから、実在するとは思われてるよ。ただ、実際見たり、啓示があったりとかはないかな。俺たち落ち人も特にこっちに落ちて来る時に何か言われることもなかったしそんな話は聞いた事ないし」

 あーまあ、そうよね。私も振り向いたら森の中だったし。でも、なぁ。あの神様、なんか抜けてるというか、手抜きが過ぎるというか。
 松田さんに神様の言った事を伝えれば、案の定呆れたというような顔をする。

「手を加えるだけ加えて、後は気が向いたときに確認するだけって、ふざけてるよね…」
「突っ込み満載でした」

 でもまあ、今回に限って言えば…間に合ったのか?いや、再召喚は結局キルギスさんのご両親が心配したから行ったのであって、神様の手じゃないのよね…

「キルギスさんが魔王になってしまうと神様が認定しちゃったからには…高梨さんを生贄にするしかない訳だけど」
「生贄ってひどくないですか」
「いや、まあ実際そうじゃない?あっちに行く気なかったのに、再召喚されるわ神様にお願いされるわで、逃げられないじゃん」
「その一端を松田さんも担ってる訳ですが」

 そう突っ込みをいれると、ははは…と、乾いた笑いをする。

「それを言われると何も言い返せないけどね…じゃあ、まあ…あの世界での生活を楽しんでもらうしかないんだけどねぇ」

 観光とか食べ物とか、と、指折り数えているけれど。

「そうそう、あの世界への転移方法、xとyで経緯緯度を示すんだけど、それ、マップ表示って言えばできるよ」
「は?」
「んーRPGゲームとかやったことあると理解しやすいんだけどねぇ。ある?」

 余りやりこんではいないけれど、一応手を出したことはある。…長続きしなかったけどね。

「日本だとなんか使えないんだけど、向こう行ったら…そうだなぁ。スマホとかのマップをイメージして言えばたぶん表示される」

 向こうに行ったら試してみてと言われて、本当に何でもありだなと思う。

「だから言ったじゃん。あっちの世界は、想像力も、原子やらそういうのでも、マクロでもなんでも魔法になるって」

 緩すぎるんだけど、本当にあの世界、大丈夫なのか!?と、心配になる。この世界のすべてを魔法で再現できそうじゃない!?
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