上 下
44 / 108
3章:異世界と日本との二重生活の始まり

44

しおりを挟む
「じゃあ、とりあえずは機関で教育として、部屋はどうしようか。機関の一室でいいのかな?」

 あ、そっか。最初は領主様の~という話だったからね。

「機関に戻って手配をして来よう。部屋を整える必要はあるだろうが、申請だけならすぐに済むし、整えるのはスーザンに頼むから安心してくれ」

 そういうと、キルギスさんはさっさと出て行ってしまった。えぇ…

「一緒に行くものだと思ったんですけど」
「そうだよねぇ。何も慌てなくても。それとも部屋用意するのに時間かかるのかな?俺の時はそんな事なかったんだけど」
「…安全策とか?」
「俺がいるからそこまで気にしなくてもいいし、なんなら高梨さんの能力知ってるの3人だけだよ?理由がそれならどれだけ心配性なのっていう」

 心配性…あれ、でも、それがひどくて闇落ち寸前だったんじゃ、と考えたところで思い出したこと。神様にお願いされたんだった。それを口にしようとしたけど、まだ松田さんは笑いながら話す。

「なんか意外~領主館だからかな、それとも高梨さんがいるからかな」
「意外、とは?」
「キルギスさんね。一応貴族ではあるけど、末っ子だし機関に長くいるのもあるけど、あんなに丁寧に話す人じゃないんだよね。どっちかっていうとワイルド系」

 話の脈略が分からなくて聞けばそう言われた。…そういえばこっちに転移してきてすぐはそんな感じだった…ような?

「それに一晩だけであんなにくるっと回復するとは思わなかったよ。回復力が違うのかなぁ」
「あ、それは私も思いました。すっごくまぶしかったです…」

 そうこぼすと、げらげら笑われましたけど。今なら言えるかな?

「それはともかくとして…あっちで聞こうと思ったんですが、今は誰も話、聞かれないんですよね?」
「まあ一応?俺を出し抜ける人いるかな?っていう問題はあるけど」

 内容が内容だから、念のために聞けばそう帰ってくる。松田さんの力量がどれくらいなのか分からないけど…まあ、全魔法を使いこなす者だもんね。大丈夫だよね。

「じゃあ忘れないとは思いますが伝えておきますね。こっちに召喚されてこの部屋に来た一瞬だけですけど…神様にキルギスさんの事をお願いされまして」

 と、こぼすと、松田さんの顔が固まった。

「えぇと…ごめん、意味が分からないのと、日本に戻って、東京で会ってからにしよう」

 と、言われて了承した。この世界での神様がどんなものかわからないしね。



 日本に戻ってからと言われたので、その後は無難に国の通貨の事を教わった。機関でも教えてくれるけど、暇だし。ということで。大体日本と同じように、銅貨やら銀貨10枚で上の単位1枚というわかりやすいものだった。とはいえ、種類を覚えないとなぁ。
 そうしてキルギスさんが戻ってきたけど…ソファには座らず私の方に来るなり手を取られた。え、なに!?

「そういえば、名前で呼んでも?」
「あ、はい。どうぞ」
「ユカ…ありがとう」

 そういって、ふわりと笑う…っ!イケメンに名前を呼ばれるとか笑顔とか破壊力すごすぎっ!心臓止まるかと思った!てっきり苗字で呼ばれるんだと思ったのに!後ろで松田さんがにやにやしてるのが腹立たしい!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】ペンギンの着ぐるみ姿で召喚されたら、可愛いもの好きな氷の王子様に溺愛されてます。

櫻野くるみ
恋愛
笠原由美は、総務部で働くごく普通の会社員だった。 ある日、会社のゆるキャラ、ペンギンのペンタンの着ぐるみが納品され、たまたま小柄な由美が試着したタイミングで棚が倒れ、下敷きになってしまう。 気付けば豪華な広間。 着飾る人々の中、ペンタンの着ぐるみ姿の由美。 どうやら、ペンギンの着ぐるみを着たまま、異世界に召喚されてしまったらしい。 え?この状況って、シュール過ぎない? 戸惑う由美だが、更に自分が王子の結婚相手として召喚されたことを知る。 現れた王子はイケメンだったが、冷たい雰囲気で、氷の王子様と呼ばれているらしい。 そんな怖そうな人の相手なんて無理!と思う由美だったが、王子はペンタンを着ている由美を見るなりメロメロになり!? 実は可愛いものに目がない王子様に溺愛されてしまうお話です。 完結しました。

【完結】人生2回目の少女は、年上騎士団長から逃げられない

櫻野くるみ
恋愛
伯爵家の長女、エミリアは前世の記憶を持つ転生者だった。  手のかからない赤ちゃんとして可愛がられたが、前世の記憶を活かし類稀なる才能を見せ、まわりを驚かせていた。 大人びた子供だと思われていた5歳の時、18歳の騎士ダニエルと出会う。 成り行きで、父の死を悔やんでいる彼を慰めてみたら、うっかり気に入られてしまったようで? 歳の差13歳、未来の騎士団長候補は執着と溺愛が凄かった! 出世するたびにアプローチを繰り返す一途なダニエルと、年齢差を理由に断り続けながらも離れられないエミリア。 騎士団副団長になり、団長までもう少しのところで訪れる愛の試練。乗り越えたダニエルは、いよいよエミリアと結ばれる? 5歳で出会ってからエミリアが年頃になり、逃げられないまま騎士団長のお嫁さんになるお話。 ハッピーエンドです。 完結しています。 小説家になろう様にも投稿していて、そちらでは少し修正しています。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

【完結】胃袋を掴んだら溺愛されました

成実
恋愛
前世の記憶を思い出し、お菓子が食べたいと自分のために作っていた伯爵令嬢。  天候の関係で国に、収める税を領地民のために肩代わりした伯爵家、そうしたら、弟の学費がなくなりました。  学費を稼ぐためにお菓子の販売始めた私に、私が作ったお菓子が大好き過ぎてお菓子に恋した公爵令息が、作ったのが私とバレては溺愛されました。

異世界に跳ばされましたが、料理上手なお陰で王太子の胃袋を掴み溺愛されることになりました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも同時投稿しています。

「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?

白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。 「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」 精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。 それでも生きるしかないリリアは決心する。 誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう! それなのに―…… 「麗しき私の乙女よ」 すっごい美形…。えっ精霊王!? どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!? 森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。

外では氷の騎士なんて呼ばれてる旦那様に今日も溺愛されてます

刻芦葉
恋愛
王国に仕える近衛騎士ユリウスは一切笑顔を見せないことから氷の騎士と呼ばれていた。ただそんな氷の騎士様だけど私の前だけは優しい笑顔を見せてくれる。今日も私は不器用だけど格好いい旦那様に溺愛されています。

転生令嬢はのんびりしたい!〜その愛はお断りします〜

咲宮
恋愛
私はオルティアナ公爵家に生まれた長女、アイシアと申します。 実は前世持ちでいわゆる転生令嬢なんです。前世でもかなりいいところのお嬢様でした。今回でもお嬢様、これまたいいところの!前世はなんだかんだ忙しかったので、今回はのんびりライフを楽しもう!…そう思っていたのに。 どうして貴方まで同じ世界に転生してるの? しかも王子ってどういうこと!? お願いだから私ののんびりライフを邪魔しないで! その愛はお断りしますから! ※更新が不定期です。 ※誤字脱字の指摘や感想、よろしければお願いします。 ※完結から結構経ちましたが、番外編を始めます!

処理中です...