上 下
35 / 108
2章:日本へ戻ってきました

35

しおりを挟む
 早い方がいいと言うので、道の駅へ止まってスキルを隠す方法を教えて貰うんだけど…

「そういえば、他人のスキルを見る事出来るんですか?一応見る事は出来ないって聞いたんですけど」
「普通はね。でも、神官が機関に入る事を希望する人のスキルを確認できるし」
「それは…魔法で誓約するからって…」
「その誓約を見た事ないんだけど…あのゆるさだと、ちょっと信用できない」

 あー…なるほど。松田さんはその辺りを理解しているからこそ、偽装すべき、ってことか。

「この偽装は…大丈夫なんですか?」
「うん、俺がしっかり確認したから問題ないよ。なんなら神殿のスキル調べる玉ですら欺いたし」

 おお、それはすごい…

「あと、この魔法の事も秘密ね。隠している事を知られたら、何を隠しているのか追及されるだろうし」
「そ、そうですね…」
「じゃあ教えるけど…俺も声に出しちゃうと問題が起きるから、これ、そのまま覚えて」

 そう言って出されたのはメモ機能。そこにずらっとやり方が掛かれてる。

「声に出すと…意識が沈む…?」
「そう。アイテムボックスはウインドウが出るんだけど…これは、自分の深層に潜り込むような感じだから、椅子を倒してやった方がいいかな」

 書かれていたのは、ただ『深層へアクセス』の、一言だけ。戻り方は、『深層よりディスコネクト』。そしてやり方は…

「スキルの文字が漂ってるから、表示しないって思いながら文字にタッチ…」
「分かりやすい様にがんばりました」
「ありがとうございます…」
「俺も活用しようと思って作ったからさ」
「松田さんもバレると危険なんですか?」

 そう聞けば、受け取り方次第かな。という。全魔法を使いこなす者というスキルらしい。

「…確かに、受け取り方ですね」
「得意不得意があるらしくてね、全部使えるんだすごいね、流石異界の人、で終了だから」

 その言い分に笑ってしまう。すっごいふんわりさんばっかりか。

「そんなに時間掛からないはずだから、さくっと行ってきて。俺はお茶しとくし」

 …いつの間にコーヒーが…あ、アイテムボックスか。本当に使いこなしてるなぁ。と思いながら、椅子を倒して…

「深層へアクセス」

 ぷつり、と…テレビの電源を落とした時の様に、目の前が真っ暗になった。



 ふ、と…目を開ければ、薄暗い部屋に突っ立っていた。そして…目の前にちらつくのは、文字…

「これが、スキルの文字ってやつね…」

 八方美人があるわよ!くそう!
 他にもあの神殿で読み上げられたスキルが漂ってる。私の周りをくるくる回ってるようで、右から左へと文字が流れる。
 あの時は音声で流れたから、気になる物しか覚えられなかったけど…今はじっくり見ることが出来る。

「これって…神殿行かなくても分かるってことね」

 松田さんが声にすると問題が、って言ってたから、多分一回しか使えない物でもないのかも。松田さんの意識が沈んじゃったら、二人とも意識なくなるから困るって事だよね。
 しっかし…文字を読むけど、属性魔法とか生活魔法はあるけど、松田さんの全魔法を使いこなす者、というのはないわね。A+とかB-とかが、得意不得意になるのかも?
 臨機応変とか、身体強化(オート)、演算A-、マクロ使い…なんてのもある…マクロって、あのマクロ?PCの表計算の?仕事で使ってるけど、それでこのスキルがついてるとか?謎すぎる…器用貧乏って、おい。
 なんだか文字が薄いのもあるんだけど…なんだろうこれ。商人とか、書記官もある…これって向こうでのおすすめ職種かなぁ。後で松田さんに聞こう。製作者は松田さんだし、分からないとは言わせないわよ!

「まあ…そんな事より…こいつか」

 世界の垣根を超越した者。こいつだけ、目の前に固定されてたのよね。だから探す必要もなかったんだけど、じっくりスキルを見られるなんてなさそうだったから後回しにしてしまった。
 表示しない、と思いながらタッチ…表示しない、表示しない…と、繰り返し考えながらそっと触れれば、そこにあると分かるのに、透明になって見えなくなった。

「よし、これでOKっと。もやもやするスキルもあるけど…これはこれで気を付けよう」

 うん、自戒の為に残しておこう。そんなにスキルを確認する必要性はないけども。
 さて、じゃあ戻ろう…

「深層よりディスコネクト」

 ここへ来る時と同じように、ぷつり、と…真っ暗になった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】ペンギンの着ぐるみ姿で召喚されたら、可愛いもの好きな氷の王子様に溺愛されてます。

櫻野くるみ
恋愛
笠原由美は、総務部で働くごく普通の会社員だった。 ある日、会社のゆるキャラ、ペンギンのペンタンの着ぐるみが納品され、たまたま小柄な由美が試着したタイミングで棚が倒れ、下敷きになってしまう。 気付けば豪華な広間。 着飾る人々の中、ペンタンの着ぐるみ姿の由美。 どうやら、ペンギンの着ぐるみを着たまま、異世界に召喚されてしまったらしい。 え?この状況って、シュール過ぎない? 戸惑う由美だが、更に自分が王子の結婚相手として召喚されたことを知る。 現れた王子はイケメンだったが、冷たい雰囲気で、氷の王子様と呼ばれているらしい。 そんな怖そうな人の相手なんて無理!と思う由美だったが、王子はペンタンを着ている由美を見るなりメロメロになり!? 実は可愛いものに目がない王子様に溺愛されてしまうお話です。 完結しました。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

【完結】人生2回目の少女は、年上騎士団長から逃げられない

櫻野くるみ
恋愛
伯爵家の長女、エミリアは前世の記憶を持つ転生者だった。  手のかからない赤ちゃんとして可愛がられたが、前世の記憶を活かし類稀なる才能を見せ、まわりを驚かせていた。 大人びた子供だと思われていた5歳の時、18歳の騎士ダニエルと出会う。 成り行きで、父の死を悔やんでいる彼を慰めてみたら、うっかり気に入られてしまったようで? 歳の差13歳、未来の騎士団長候補は執着と溺愛が凄かった! 出世するたびにアプローチを繰り返す一途なダニエルと、年齢差を理由に断り続けながらも離れられないエミリア。 騎士団副団長になり、団長までもう少しのところで訪れる愛の試練。乗り越えたダニエルは、いよいよエミリアと結ばれる? 5歳で出会ってからエミリアが年頃になり、逃げられないまま騎士団長のお嫁さんになるお話。 ハッピーエンドです。 完結しています。 小説家になろう様にも投稿していて、そちらでは少し修正しています。

【完結】胃袋を掴んだら溺愛されました

成実
恋愛
前世の記憶を思い出し、お菓子が食べたいと自分のために作っていた伯爵令嬢。  天候の関係で国に、収める税を領地民のために肩代わりした伯爵家、そうしたら、弟の学費がなくなりました。  学費を稼ぐためにお菓子の販売始めた私に、私が作ったお菓子が大好き過ぎてお菓子に恋した公爵令息が、作ったのが私とバレては溺愛されました。

「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?

白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。 「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」 精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。 それでも生きるしかないリリアは決心する。 誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう! それなのに―…… 「麗しき私の乙女よ」 すっごい美形…。えっ精霊王!? どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!? 森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。

外では氷の騎士なんて呼ばれてる旦那様に今日も溺愛されてます

刻芦葉
恋愛
王国に仕える近衛騎士ユリウスは一切笑顔を見せないことから氷の騎士と呼ばれていた。ただそんな氷の騎士様だけど私の前だけは優しい笑顔を見せてくれる。今日も私は不器用だけど格好いい旦那様に溺愛されています。

転生令嬢はのんびりしたい!〜その愛はお断りします〜

咲宮
恋愛
私はオルティアナ公爵家に生まれた長女、アイシアと申します。 実は前世持ちでいわゆる転生令嬢なんです。前世でもかなりいいところのお嬢様でした。今回でもお嬢様、これまたいいところの!前世はなんだかんだ忙しかったので、今回はのんびりライフを楽しもう!…そう思っていたのに。 どうして貴方まで同じ世界に転生してるの? しかも王子ってどういうこと!? お願いだから私ののんびりライフを邪魔しないで! その愛はお断りしますから! ※更新が不定期です。 ※誤字脱字の指摘や感想、よろしければお願いします。 ※完結から結構経ちましたが、番外編を始めます!

告白さえできずに失恋したので、酒場でやけ酒しています。目が覚めたら、なぜか夜会の前夜に戻っていました。

石河 翠
恋愛
ほんのり想いを寄せていたイケメン文官に、告白する間もなく失恋した主人公。その夜、彼女は親友の魔導士にくだを巻きながら、酒場でやけ酒をしていた。見事に酔いつぶれる彼女。 いつもならば二日酔いとともに目が覚めるはずが、不思議なほど爽やかな気持ちで起き上がる。なんと彼女は、失恋する前の日の晩に戻ってきていたのだ。 前回の失敗をすべて回避すれば、好きなひとと付き合うこともできるはず。そう考えて動き始める彼女だったが……。 ちょっとがさつだけれどまっすぐで優しいヒロインと、そんな彼女のことを一途に思っていた魔導士の恋物語。ハッピーエンドです。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。

処理中です...