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1章:癒しを求めたはずが

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 曲がり角で出会ってロマンスとか…うわぁ、ないわ~と思っていたのが分かったのか、キルギスさんは困ったように笑う。

「好みの見た目、好みの性格なんかを身近な人間を買収して聞き出し、出かける算段なんかも同様にさせてしまえば、簡単らしい。ああ、男の場合もその手法が取られるな」

 うわぁ…そうなんだ。でも、

「機関の人がついてる訳じゃないんですか?」
「この世界で生活するなら、ある程度常識を教えたり、仕事の紹介をして上手く行くようならタイミングを見て離れる。後は時々会って、顔を見て話しをしたり、手紙とかかな。だから手が離れるとそういう事が起きるらしいな」

 一応注意をしてはいるらしいけど、惚れてしまえばもうそんな事考えていられなくなるのだとか。

「その人物の家名なんかも調べたりして助言をしたりもするが…まあ、どこの国でもそうだが、そういう時は大抵話を聞かないのでね。なんとも言えないな」

 あーあれよね、恋に燃え上がってる間は、止められると余計燃え上がるってやつよね。世界が違ってもそこは一緒なのね。

「…私としては、うちの親にバレれば逆に囲い込めと言われそうだから、もしこちらの世界へ再び来るような事があれば、注意して欲しい」
「えっと…」
「一応、これでも公爵の末っ子なのでね」

 10人兄弟の末だが、といって笑うけど…公爵って、えーっとどれ位偉いのか見当つかないよ。聞いた事はあるけど、海外の身分なんかわからん!

「機関に属している私がそういう事をするのは少々どころか外聞が悪いのでね。ただ、利用しようとして囲いこむことは、うちはしていない。どちらかというと、他の害になりそうな者に囲いこまれるのであれば、保護の点から囲い込むんだ」

 その同郷の…日本人もそうしているんだって。何かあればその公爵の名前を出していいらしい。
 …それはそれで悪い人だったら、その身分を悪用しそうでどうなのよと思ったけど。

「そのあたりはきちんと考えているよ。そいつは色々と理解があるようだし、人となりも問題ないようだったから。根っからの善人とまでは行かないが、悪人にはなりきれないと笑っていたよ」

 道徳という学問の影響だと言っていたが。という。道徳習ってようが、駄目な人は駄目な気がするんだけど。



 食後のお茶も貰って、火の始末を済ませれば、また馬で移動。燃え残った薪は、魔法で一瞬で灰になった。こんな魔法があれば、銃とか戦闘機とかどうにでもできそうなんだけどな…

「今から行く街は、先ほど言ったうちの親が納める領地なんだ。国でも大きい領地だし、機関の施設もしっかりしているから安心して欲しい」

 風呂もしっかりあるらしい。気になるなら生活魔法で綺麗に出来るらしいけど…

「お風呂は別です」

 と、きっぱり言っていた。キルギスさんは、やっぱり。と言って、笑っていた。多分同郷の日本人にも言われたんじゃないかな。お風呂はいるの面倒っていう場合もあるけど、それはそれ、これはこれ。なくて入れないのと、入らないと決めて入らないのとでは違うし。
 どんなお風呂なんだろう。大浴場…になるかなぁ。五右衛門風呂もありえるけど、入り方分からない。大丈夫かなぁ。

 そんな事を考えながら街へと向かったのだけれど…生活魔法で水ではなくお湯を出す事も可能な人がいて、その人がお風呂当番として常駐しているのだとか。流石魔法…と驚き半分、呆れ半分になるとは思いもよらなかった。
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