127 / 150
終話:結婚式をして、それから
127
しおりを挟む
馬車で教会へと向かいながら、馬車の中でラクシュ様に指輪をつけたのだけれど、物凄く恥ずかしかったわね。
「仕事上、着けていられないのが悔やまれます」
そう言って、わたくしの左手薬指にある指輪を撫でるから、なんだかうれしくなる。でも、これは仕方ない事だものね。一応、ネックレスにして着ける事も、以前に言ったけれど…それでは駄目なのかしらね。
…ルーヴェリア様が、あー…とか声を漏らしてますが、お妃様達に止められてますわね…ええ、聞こえてませんし見えてませんよ。
それはともかくとして。
この世界での結婚式では、やり方が違う。真っ赤な絨毯もないし。馬車のドアが開けられたけれど、ラクシュ様についているあの人が、ルーヴェリア様達を案内する。そうして、準備が整ったのだろう。ゴーン、ゴーン、と、ベルの音。
ラクシュ様と腕を組んで、一緒に教会内部へと入れば、両親や、領地でお世話になったメイド…もちろん、アンもいるし、修道院の院長先生もいる。子供も、何人か。スゥェン様もだけれど、ケニアもいる。ただ…苦虫を噛んだような顔をしてるわね。そういえば、パーティーはしたけれど、こういう式はしてないから悔しいのかしら。横にいるスウェン様が、なんだかにやりと笑ってますが。隣のラクシュ様からよくやったとか聞こえましたが、何かあるのかしら。
ああ、ルーヴェリア様はもちろんだけれど、王太子様とその婚約者様達も全員いらっしゃるわ。スタンフォード様も。王様とお后様の姿も見えて、冷や汗が…
「大丈夫ですよ」
と、それが分かったのか、ラクシュ様に小声でそう言われました。思わずラクシュ様を見てしまえば、にこりと笑顔で返されました。それだけで落ち着いてしまうのだから、不思議ね。
わたくし、いつからこんなにもラクシュ様の事を…信頼していたのかしら。
思えば…最初はただひたすらに、穏便に修道院生活をしたいと思っていた。
でも…ある意味気障っぽい態度や、その笑顔が可愛く思えて。
周りの状況から逃げられない様にされたわね。
ルーヴェリア様から様々な事を聞いて、懇願されて、ある意味流されるままに結婚してしまったけれど。
なんだか、こんな事、今更考える事ではないわね。ラクシュ様が、誓いの言葉として、わたくしを不幸にさせないと宣誓していますが、それは以前にも言われた事。仕事と私、どちらをとるの、なんて言わないわよ。大丈夫。
「わたくしは、旦那様を支えられる妻になります」
ええ。流石に…仕事内容までは、詳細を聞くのは怖いので聞けませんけれど。ちょいちょい零されてますが…そこから推測するしかないもの。
ただ…わたくしがそう宣誓すると、神父様が頷くけれど…すす…と、横にずれて、ルーヴェリア様が神父様の立っていた場所へと立つ。
「俺の筆頭護衛騎士官、ラクシュ=ノア=ディベル。ルーヴェリア=ディクス=ラ=ルヴージュが今一度問う。お前はその誓いを、この俺に誓えるか」
「はい、我が君。あなたさまに捧げた、名に誓って」
「なら、いい。幸せになれよ」
と、それだけ言って、ルーヴェリア様は下がっていったけれど…えっと…いいのこれ、なにも聞かされてなかったわよ。と、困惑するも、また大きな鐘の音が聞こえて、歓声がする。
この歓声は、参列者のみんなからだけれど…
「おそらく…教会の神に誓ったとしても、うわべだけだと思われたんでしょうね、ルーヴェリア様に」
「え?」
「私が誓うものは、ルーヴェリア様なので」
ああ、神にも等しい、とか言ってたわね。
「ですのでね…不幸には、しませんよ」
歓声の中を、教会の出口へと向かいながらそんな会話をするだなんて、ちょっと締まりがないと思うのだけれど。
「仕事上、着けていられないのが悔やまれます」
そう言って、わたくしの左手薬指にある指輪を撫でるから、なんだかうれしくなる。でも、これは仕方ない事だものね。一応、ネックレスにして着ける事も、以前に言ったけれど…それでは駄目なのかしらね。
…ルーヴェリア様が、あー…とか声を漏らしてますが、お妃様達に止められてますわね…ええ、聞こえてませんし見えてませんよ。
それはともかくとして。
この世界での結婚式では、やり方が違う。真っ赤な絨毯もないし。馬車のドアが開けられたけれど、ラクシュ様についているあの人が、ルーヴェリア様達を案内する。そうして、準備が整ったのだろう。ゴーン、ゴーン、と、ベルの音。
ラクシュ様と腕を組んで、一緒に教会内部へと入れば、両親や、領地でお世話になったメイド…もちろん、アンもいるし、修道院の院長先生もいる。子供も、何人か。スゥェン様もだけれど、ケニアもいる。ただ…苦虫を噛んだような顔をしてるわね。そういえば、パーティーはしたけれど、こういう式はしてないから悔しいのかしら。横にいるスウェン様が、なんだかにやりと笑ってますが。隣のラクシュ様からよくやったとか聞こえましたが、何かあるのかしら。
ああ、ルーヴェリア様はもちろんだけれど、王太子様とその婚約者様達も全員いらっしゃるわ。スタンフォード様も。王様とお后様の姿も見えて、冷や汗が…
「大丈夫ですよ」
と、それが分かったのか、ラクシュ様に小声でそう言われました。思わずラクシュ様を見てしまえば、にこりと笑顔で返されました。それだけで落ち着いてしまうのだから、不思議ね。
わたくし、いつからこんなにもラクシュ様の事を…信頼していたのかしら。
思えば…最初はただひたすらに、穏便に修道院生活をしたいと思っていた。
でも…ある意味気障っぽい態度や、その笑顔が可愛く思えて。
周りの状況から逃げられない様にされたわね。
ルーヴェリア様から様々な事を聞いて、懇願されて、ある意味流されるままに結婚してしまったけれど。
なんだか、こんな事、今更考える事ではないわね。ラクシュ様が、誓いの言葉として、わたくしを不幸にさせないと宣誓していますが、それは以前にも言われた事。仕事と私、どちらをとるの、なんて言わないわよ。大丈夫。
「わたくしは、旦那様を支えられる妻になります」
ええ。流石に…仕事内容までは、詳細を聞くのは怖いので聞けませんけれど。ちょいちょい零されてますが…そこから推測するしかないもの。
ただ…わたくしがそう宣誓すると、神父様が頷くけれど…すす…と、横にずれて、ルーヴェリア様が神父様の立っていた場所へと立つ。
「俺の筆頭護衛騎士官、ラクシュ=ノア=ディベル。ルーヴェリア=ディクス=ラ=ルヴージュが今一度問う。お前はその誓いを、この俺に誓えるか」
「はい、我が君。あなたさまに捧げた、名に誓って」
「なら、いい。幸せになれよ」
と、それだけ言って、ルーヴェリア様は下がっていったけれど…えっと…いいのこれ、なにも聞かされてなかったわよ。と、困惑するも、また大きな鐘の音が聞こえて、歓声がする。
この歓声は、参列者のみんなからだけれど…
「おそらく…教会の神に誓ったとしても、うわべだけだと思われたんでしょうね、ルーヴェリア様に」
「え?」
「私が誓うものは、ルーヴェリア様なので」
ああ、神にも等しい、とか言ってたわね。
「ですのでね…不幸には、しませんよ」
歓声の中を、教会の出口へと向かいながらそんな会話をするだなんて、ちょっと締まりがないと思うのだけれど。
10
お気に入りに追加
276
あなたにおすすめの小説
離縁しようぜ旦那様
たなぱ
BL
『お前を愛することは無い』
羞恥を忍んで迎えた初夜に、旦那様となる相手が放った言葉に現実を放棄した
どこのざまぁ小説の導入台詞だよ?旦那様…おれじゃなかったら泣いてるよきっと?
これは、始まる冷遇新婚生活にため息しか出ないさっさと離縁したいおれと、何故か離縁したくない旦那様の不毛な戦いである
今世ではあなたと結婚なんてお断りです!
水川サキ
恋愛
私は夫に殺された。
正確には、夫とその愛人である私の親友に。
夫である王太子殿下に剣で身体を貫かれ、死んだと思ったら1年前に戻っていた。
もう二度とあんな目に遭いたくない。
今度はあなたと結婚なんて、絶対にしませんから。
あなたの人生なんて知ったことではないけれど、
破滅するまで見守ってさしあげますわ!
【完結・R18】結婚の約束なんてどうかなかったことにして
堀川ぼり
恋愛
「なに、今更。もう何回も俺に抱かれてるのに」
「今は俺と婚約してるんだから、そんな約束は無効でしょ」
幼い頃からクラウディア商会の長である父に連れられ大陸中の国を渡りあるくリーシャ。いつものように父の手伝いで訪れた大国ルビリアで、第一王子であるダニスに突然結婚を申し込まれる。
幼い頃に交わしたという結婚の約束にも、互いの手元にあるはずの契約書にも覚えがないことを言い出せず、流されるまま暫く城に滞在することに。
王族との約束を一方的に破棄することもできず悩むリーシャだったが、ダニスのことを知るたびに少しずつ惹かれていく。
しかし同時に、「約束」について違和感を覚えることも増え、ある日ついに、「昔からずっと好きだった」というダニスの言葉が嘘だと気づいてしまい──…?
恋を知らない商人の娘が初恋を拗らせた執着王子に捕まるまでのお話。
※ムーンライトノベルズにも投稿しています
【R-18・連載版】部長と私の秘め事
臣桜
恋愛
彼氏にフラれた上村朱里(うえむらあかり)は、酔い潰れていた所を上司の速見尊(はやみみこと)に拾われ、家まで送られる。タクシーの中で元彼との気が進まないセックスの話などをしていると、部長が自分としてみるか?と尋ねワンナイトラブの関係になってしまう。
かと思えば出社後も部長は求めてきて、二人はただの上司と部下から本当の恋人になっていく。
だが二人の前には障害が立ちはだかり……。
※ 過去に投稿した短編の、連載版です
【R18】オークの花嫁〜魔王様がヤンデレ過ぎてついていけません!!〜
湊未来
恋愛
新魔王誕生を祝う式典を明日に控え、お祝いムードに包まれた城の中、オークの女戦士『ミレイユ』は、浮き足立つ使用人達を横目に先を急いでいた。
明日の式典前に、この魔王城を去らなければならない。明日の朝、いいや今夜にでもオークの里へと向かおう。
さもなければ、決心が鈍ってしまう。かの御方の晴れ姿など、見ようものなら、きっと縋ってしまう。
『――――、お側に置いてください』と。
魔族の中でも最下層に位置するオークの女戦士が、幼少期から守ってきた魔王様の元を去ろうと決意するが、結局逃げられずにとっ捕まり、女としての喜びを押しつけられるまでの話。
作者的にはハッピーエンドですが、魔王様が病デレ過ぎて、読者様によってはメリバエンドに感じるかもしれません。
※読者様に、FAを頂きました!
ありがたいことに、加工する許可を頂けたので表紙絵へ。ありがとうございます╰(*´︶`*)╯♡
今、私は幸せなの。ほっといて
青葉めいこ
ファンタジー
王族特有の色彩を持たない無能な王子をサポートするために婚約した公爵令嬢の私。初対面から王子に悪態を吐かれていたので、いつか必ず婚約を破談にすると決意していた。
卒業式のパーティーで、ある告白(告発?)をし、望み通り婚約は破談となり修道女になった。
そんな私の元に、元婚約者やら弟やらが訪ねてくる。
「今、私は幸せなの。ほっといて」
小説家になろうにも投稿しています。
所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!
ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。
幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。
婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。
王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。
しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。
貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。
遠回しに二人を注意するも‥
「所詮あなたは他人だもの!」
「部外者がしゃしゃりでるな!」
十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。
「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」
関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが…
一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。
なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる