上 下
118 / 150
結婚式準備

118

しおりを挟む
 大体は、手紙で聞いてる。とそう言うスタンフォード様だけれど、その魔石がいくら女神級だと分かっていても、認識の違いがあっては上手く行かないから、という事らしい。
 ラクシュ様は、特に箱や布に包むでもなく、ポケットに入れてらっしゃるからすごく不安になるのだけれど、それを見たスタンフォード様も、特に取り扱いを指摘することなく、ただその石を見ている。

「ふぅん…結構無茶な守りを設定するなとは思ったんだが、細部を調整すればなんとかなるな。兄上、ああ、ガルヴァンヌ兄上の都合は?」
「今朝は少々都合が悪いようですが、お昼すぎになれば空くとおっしゃっていましたよ」
「なら、預かっていいか。明日には仕上げられると思う」

 え、明日?そんなにすぐできるものなの?

「ある程度はすでに出来上がっているからな。発動の精度や範囲の設定で上手く行かなかった、らしい」

 そこを何とか出来れば、いい守りになるのにと王太子様が零していたそうで。

「ラクシュ様、範囲とか、わたくし、わからないのですが」
「ネルアの場合、ジョセフィーヌ様達や子供達も傍にいる事を考慮しまして、その辺りも入ってます」
「…聞いてしまってもよろしかったのでしょうか」
「構いませんよ。ネルアだけ守ったとしても、周りの…ネルアが大切にしている人たちに犠牲が出たら、貴女が気に病むでしょうし、知っていれば安心でしょう?」

 確かに、それはそうね。ジョセフィーヌ様達とも仲良くさせていただいて、良くお出かけもするもの。お出かけ先で何かあっても、これがあれば気持ちも違うわね。もちろん、レイ達もいるから大丈夫だとは思うけれど、でもレイ達も怪我とかしてほしくないもの。

◆◇◆スタンフォード視点◆◇◆

 聞いて呆れる。守りの範囲に関して、ルーヴェリア兄上も入れている癖に。もうほんと、こいつルーヴェリア兄上と結婚でもすればいいのに。まあ、そんな事出来ないし、そんな気はないだろうが。
 ガルヴァンヌ兄上からこいつが結婚したと手紙で知らせて来た時には、ルーヴェリア兄上を狂っているのではないかと思う程に大切にしているこいつが結婚とか、なに寝ぼけた事言ってるんだと思ったものだが…本当に愛しているらしいな。なんだあの顔。

 ともかく…ガルヴァンヌ兄上から手紙で、結婚式の日程と、この魔石に関しての相談という手紙が来た時には驚いたもんだ。王家で所有している国宝級の魔石と同等のモノに、ガルヴァンヌ兄上が得意とする、反撃型の防御陣を組み込みたいと。しかも、その防御する対象に上がった名前の羅列に、意味が分からなかった。
 所有者がこいつという事で、ルーヴェリア兄上が入っているのは良いとして、こいつの妻に、ルーヴェリア兄上の妻達5人と、その子供達、とか…まだ生まれてもいないそれらまで組み込むのは骨が折れるんだが。最悪生まれる度に調整が必要かもしれないが、それはそれで勉強になるからいいか。

「さて。それでは…このままこちらで少々お茶を楽しんでいてください。こいつ、しつけしなおしてきます」
「そいつがいたからといって、どうにかなる問題じゃない気がするが」
「どうにか出来るはずなんですがね。まあいいです。詳細をお聞かせする訳にはまいりませんので」

 俺の筆頭であるシルヴが助けてという目で見て来るが、そっと目を逸らす。この当主をどうにか出来るのは俺でなく、ルーヴェリア兄上しかいない。その肝心なルーヴェリア兄上は、ほどほどにしろよー。なんて、気楽な感じで手を振ってるからな。
 ルーヴェリア兄上は兄上で、この当主のやる事成す事、全肯定だからな…時々怒ったりするらしいが。

 襟首をつかまれて、ずるずると引きずられていくそれを視界に入れない様にして、お茶を飲む。本当に、シルヴがあのうるさい女どもをなんとかできるのであれば、教育しなおしてくれるならして欲しいしな。

「で、お前、ちゃんと食べてるの?なんかまた頬痩せてるんだが」
「…食べてる」
「ほんとか?んー…」
「ちょ、何するんですか」
「やっぱり痩せてるなぁ。成長期だろうに、以前より細いって、なに」

 二の腕を掴まれてそれを確認されるとは…!確かに研究が楽しいのもあるから食事がおろそかになってしまうのもある。その他に食べる意欲がないんだから、どうしても食べる回数が減ってしまうから。

「ほら、これ食え。ちょっとクリーム系と、ナッツ系持ってこさせろ」
「用意してございますので、少々お待ちを」
「ちょ、あにう、むぐ」

 だからなんでそうやって口にクッキーを突っ込んでくるんだ!
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

二人の甘い夜は終わらない

藤谷藍
恋愛
*この作品の書籍化がアルファポリス社で現在進んでおります。正式に決定しますと6月13日にこの作品をウェブから引き下げとなりますので、よろしくご了承下さい* 年齢=恋人いない歴28年。多忙な花乃は、昔キッパリ振られているのに、初恋の彼がずっと忘れられない。いまだに彼を想い続けているそんな誕生日の夜、彼に面影がそっくりな男性と出会い、夢心地のまま酔った勢いで幸せな一夜を共に––––、なのに、初めての朝チュンでパニックになり、逃げ出してしまった。甘酸っぱい思い出のファーストラブ。幻の夢のようなセカンドラブ。優しい彼には逢うたびに心を持っていかれる。今も昔も、過剰なほど甘やかされるけど、この歳になって相変わらずな子供扱いも! そして極甘で強引な彼のペースに、花乃はみるみる絡め取られて……⁈ ちょっぴり個性派、花乃の初恋胸キュンラブです。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

地味女で喪女でもよく濡れる。~俺様海運王に開発されました~

あこや(亜胡夜カイ)
恋愛
新米学芸員の工藤貴奈(くどうあてな)は、自他ともに認める地味女で喪女だが、素敵な思い出がある。卒業旅行で訪れたギリシャで出会った美麗な男とのワンナイトラブだ。文字通り「ワンナイト」のつもりだったのに、なぜか貴奈に執着した男は日本へやってきた。貴奈が所属する博物館を含むグループ企業を丸ごと買収、CEOとして乗り込んできたのだ。「お前は俺が開発する」と宣言して、貴奈を学芸員兼秘書として側に置くという。彼氏いない歴=年齢、好きな相手は壁画の住人、「だったはず」の貴奈は、昼も夜も彼の執着に翻弄され、やがて体が応えるように……

ドクターダーリン【完結】

桃華れい
恋愛
女子高生×イケメン外科医。 高校生の伊吹彩は、自分を治療してくれた外科医の神河涼先生と付き合っている。 患者と医者の関係でしかも彩が高校生であるため、周囲には絶対に秘密だ。 イケメンで医者で完璧な涼は、当然モテている。 看護師からは手作り弁当を渡され、 巨乳の患者からはセクシーに誘惑され、 同僚の美人女医とは何やら親密な雰囲気が漂う。 そんな涼に本当に好かれているのか不安に思う彩に、ある晩、彼が言う。 「彩、      」 初作品です。 よろしくお願いします。 ムーンライトノベルズ、エブリスタでも投稿しています。

辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

鳴宮鶉子
恋愛
辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

処理中です...