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家へ引っ越してから

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「やめてください、ラクシュ様っ」

 例えレイがラクシュ様へと何か攻撃したのだとしても、女性を膝で押さえつけるとか…っ!

「そんなに慌てなくても大丈夫ですよ」

 そう言って、ラクシュ様はレイの上からどくけれど…レイが起き上がってこない?

「れ、レイ?」
「しばらくそのままで。お仕置きです」
「お仕置きって」
「腰の関節外したので、動けないだけですよ。後で戻しますし、問題ありません」

 こ、腰?関節って…外せるものなの…肩とかは、分かるけれど…でも、痛みとかあるはずよね。だから、直していただけないかと言ってみる。

「お願いです、ラクシュ様…」
「ふふ…そうやってお願いされるのも、イイですね」
「っ、ネルア、様」
「おまえは黙っていなさい。だいじょうぶ…身体が辛い事は、わかってますから、ね?」

 そう言って、頬を両手で包まれて…至近距離で、あの顔面を見せられて…魂飛ばしましたよ。ええ。ラクシュ様は、ただわたくしをだきしめていただけで満足して…ルーヴェリア様の元にもどったのだと、他のメイドに教えられましたが。

「レイ、痛みとか、ございませんの?」
「問題ございません」

 魂を飛ばしていた状態から回復して、一番に確認したのはそれだった。ただ…

「一撃位入れられるように、精進しますね」

 と、続けて言われて、そうじゃない。と、心の中で突っ込みを入れていたわよ。

「しかし…当主のアレ、何か対策しないと困った事になりそうですね」
「対策…」

 レイにお茶を淹れて貰って話をするけれど…お店を使ってもらうとか、そういう事?と聞けば、そうではないという。

「単純な欲求とかではない様な気もします」

 そんな事を言われても。

「どちらかというと、狂う方が近いんじゃないですかね」

 いえ、それを言われましても…ではどうしろと?ルーヴェリア様には、声を聞かせろと言われましたが…ラクシュ様、声を聴くだけでたまらなくなるとか言いませんでしたか。

「…言いましたね、確かに」

 声を聞かせないと狂う、聞いてもたまらなくなる、となったら、もうどうしろと。

「別の方の意見を聞きましょう」

 レイがそう言って…後日、連れて来たのは、ラクシュ様の傍によくいるあの執事の人だった。

「そう言われましても…」

 と、その人も困った顔をしてましたわね。ええ、そうですよね。レイに、付き合い長いし、何かないのかと言われてましたが。

「今までの当主で、名を呼ぶ事を許した女性がいないもので、何とも言えないんですが」

 確かに、ラクシュ様で2人目、という話だったかしらね。事例が少なすぎて、対処方法がわからない、と。

「ただ…声…うーん。観劇を見に行って、それまでに何かありましたかね」

 何か、と言われましても。

「いや…観劇に行く前、店を使うとか言ってましたな。そこですかね」

 お店を使う使わない、という話がどう関係するのかしら。

「当主とのセックスが嫌なのだととらえたのかもしれませんね」

 ちょっと、真顔で何を言うのかしらこの人。父と同じ位…いえ、少し若い?それ位の人に言われて、なんと反応したらいいのかわからないわ。

「どういうプレイをしているのか分かりませんが、求めてみた事は?」

 その質問に、答えられると思っているのかしら。

「ネルア様を言葉攻めするのもその辺にしていただけませんか」
「至って真面目な話でしょうに。当主がおかしくなるのを止めたいのでしょう?」

 確かにそうだけれど…

「態度をがらりと変える事は難しいとは思いますが…意外と、男は単純馬鹿なので」

 求められると、それはそれで。と言って笑う。
 …それって解決方法にならないで、火に油を注ぐことになるのでは?
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