上 下
54 / 150
家へ引っ越してから

54

しおりを挟む
 朝…目が覚めて、いつもと違う天井に、がばりと起き上がって、はっとする。

「おはようございます。当主でしたらすでに城に上がりましたよ」
「いえ、そうでは、」

 いつもと同じレイの挨拶に、しどろもどろに答える、暖かいタオルを差し出されて、それに顔を埋めつつ、思い出す。そうよ、昨日から邸宅へ越したのだわ。しかも…夜、しっかりがっつりされたわね…途中から記憶がないのだけれど。
 うう…今日顔合わせるのが恥ずかしい。

 そうは言っても、行かない訳にはいかないので。

「おはようございます」
「おはよう」
「おはようございます」

 いつもの様に食事の部屋へと行けば、いつもと変わらなくてほっとする。

「今日は一緒に料理を取りに行きましょう」
「ええ。わかりましたわ」

 ルーヴェリア様へお茶を出し終えると、ラクシュ様にそう言われ、一緒に料理を取りに行く事に。けれど、キッチンへと向かう道すがら、

「昨夜はすみません。がっつきすぎました」
「え、いえ、その…」

 この顔からがっついたとかいう言葉が出るとは…どう返事したらいいものかわからなくて、しどろもどろに返すしかない。

「今日、最悪来られないかと思いましたが、良かったです。顔色も悪くないですしね」
「…少し遅くなりましたので、馬車を使いましたわ」
「毎日馬車でもいい位ですよ」

 そう言って、ラクシュ様はくすくすと笑う。運動不足になってしまうと言えば、

「毎晩、とはいいませんが…してますでしょう?運動」

 アレを運動と言われるとちょっと嫌なのだけれど。



 朝食を取りながら、今日はラクシュ様と一緒にアクセサリーを作りに行くのだというお話しをされたわ。ルーヴェリア様はいいのかと言ったら、食後、執務室へと移動して、ある程度処理する書類を仕分けてから行くのだという。
 ルーヴェリア様が俺も行きたいとぶーぶー言ってましたが…

「そう言って、書類仕事から逃げたいだけでしょう」
「えーだっていい加減思いっきり身体動かしたいし」
「あんた、毎朝毎朝剣の鍛錬つき合わせておいて何言ってるんですか」
「お前避けるから面白くないんだよ」
「それなら私ではなく兵を相手にすればいいでしょうに」
「だってそれだと叩きのめして叱られるし」

 …武術は得意という話だったけれど、本当に得意なんですね。というか…それを避けるラクシュ様がすごいのかしら。

「一度、見てみたいですわ」

 鍛錬であれば、スポーツを観戦するのと大差ない、はずだし…流石にルーヴェリア様とラクシュ様で、怪我をするような事もないはずだし、と思ってそう言えば、何故か二人は対照的な反応を示した。ルーヴェリア様はいつもの様に、いいぞ。とからからと笑っていらっしゃるけれど、ラクシュ様は苦虫をかみつぶしたような顔をしている。

「駄目、ですか?」
「駄目ではありませんが…力加減誤りそうなので、本当に避けるだけでよければ」
「え、あれで加減してるの、お前」
「加減しなかったら貴方の首飛ばしてます」
「えええ…」

 ちょっと…敬愛する主だというのに、首飛ばすとか何故そうなるのよ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

二人の甘い夜は終わらない

藤谷藍
恋愛
*この作品の書籍化がアルファポリス社で現在進んでおります。正式に決定しますと6月13日にこの作品をウェブから引き下げとなりますので、よろしくご了承下さい* 年齢=恋人いない歴28年。多忙な花乃は、昔キッパリ振られているのに、初恋の彼がずっと忘れられない。いまだに彼を想い続けているそんな誕生日の夜、彼に面影がそっくりな男性と出会い、夢心地のまま酔った勢いで幸せな一夜を共に––––、なのに、初めての朝チュンでパニックになり、逃げ出してしまった。甘酸っぱい思い出のファーストラブ。幻の夢のようなセカンドラブ。優しい彼には逢うたびに心を持っていかれる。今も昔も、過剰なほど甘やかされるけど、この歳になって相変わらずな子供扱いも! そして極甘で強引な彼のペースに、花乃はみるみる絡め取られて……⁈ ちょっぴり個性派、花乃の初恋胸キュンラブです。

ドクターダーリン【完結】

桃華れい
恋愛
女子高生×イケメン外科医。 高校生の伊吹彩は、自分を治療してくれた外科医の神河涼先生と付き合っている。 患者と医者の関係でしかも彩が高校生であるため、周囲には絶対に秘密だ。 イケメンで医者で完璧な涼は、当然モテている。 看護師からは手作り弁当を渡され、 巨乳の患者からはセクシーに誘惑され、 同僚の美人女医とは何やら親密な雰囲気が漂う。 そんな涼に本当に好かれているのか不安に思う彩に、ある晩、彼が言う。 「彩、      」 初作品です。 よろしくお願いします。 ムーンライトノベルズ、エブリスタでも投稿しています。

地味女で喪女でもよく濡れる。~俺様海運王に開発されました~

あこや(亜胡夜カイ)
恋愛
新米学芸員の工藤貴奈(くどうあてな)は、自他ともに認める地味女で喪女だが、素敵な思い出がある。卒業旅行で訪れたギリシャで出会った美麗な男とのワンナイトラブだ。文字通り「ワンナイト」のつもりだったのに、なぜか貴奈に執着した男は日本へやってきた。貴奈が所属する博物館を含むグループ企業を丸ごと買収、CEOとして乗り込んできたのだ。「お前は俺が開発する」と宣言して、貴奈を学芸員兼秘書として側に置くという。彼氏いない歴=年齢、好きな相手は壁画の住人、「だったはず」の貴奈は、昼も夜も彼の執着に翻弄され、やがて体が応えるように……

辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

鳴宮鶉子
恋愛
辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

処理中です...