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家へ引っ越してから

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 門を通ろうとしたら兵に止められてしまったけれど、レイがわたくしの前に立つ。

「話が行っているはずです。この方が、ラクシュ=ノア=ディベル筆頭護衛騎士官の奥様ですよ」
「っ!それは申し訳ございません。確かに聞いていた特徴と一致します」

 レイがそう言ってくれると、兵はそう言って頭を下げる。その挙動がこう、腰から直角になるようにしたものだから、わたくしが慌ててしまったわ。

「奥様、お手を失礼します」

 しかもレイがそう言って、お仕着せの袖についている琥珀をその兵士に見せるから、土下座でもするのではという勢いで頭を下げる。

「大丈夫ですわ。しっかり門をお守りしてくださっているという事ですもの」

 こういうのは慣れていないから、そう言ってレイに行きましょうと促し、兵にはお疲れ様。と声を掛けて入った。余り気に止まないで欲しいけれど大丈夫かしら。いくら特徴を聞いていたとしても、初見で判断するのは難しいわよねぇ。紹介をお願いしておくべきだったかしら。
 そうそう、城から出る時は大丈夫だったのよね。出る方は余り注意深く見ていないのかもしれないわね。…それはともかくとして。

「レイ、今のは旦那様には言わないでちょうだい」
「………かしこまりました」

 そう答える前の間が怖いのだけれど。

「お願いよ?どの様に特徴を伝えてくださったのかわかりませんけれど、言葉だけではわかりにくいですもの。それで叱られたら可哀想ですわ」
「分かりました。伝えませんのでご安心ください」

 本当に大丈夫かしら。


 そうして、執務室へと到着すれば、ラクシュ様の笑顔に出迎えられましたわ…

「あまり長く離れているのは耐えられなくなりそうで怖いです」
「そんな大げさな…これからは警備などもなさるのでしょう?」
「そうですが…少しだけ抱きしめていいですか」
「おいおい、余所でやれ余所で」

 ルーヴェリア様からストップがかかって助かったけれど、ルーヴェリア様のお顔がものすんごくげんなりしているというか嫌そうというか。

「存分にいちゃついて貴方に見せつけてやろうかとしたのですが」
「あーもー憎たらしい」

 えぇと…何かあったのかしら。ラクシュ様の言葉もどうかとは思いますが、いつもであれば笑って返して来るのが常ですのに。

「どうやら、お菓子を焼いていただけないようで拗ねてますね」
「焼いていただけない、のですか?何か問題でも?」
「もしお身体に何かあったら困る、と言われたそうで」
「…お后様も召し上がってらっしゃるのですよね?」
「そうですね。どうやらルーヴェリア様の、といいますか、魔力なしが狙われるという話を聞いていたようで。心配なら私が見ている前で焼いていただければいいんですがね」

 食べ物に毒物が入れられる危険性でも聞いたのかしら。でも、ラクシュ様、そこまでしなくても分かるとおっしゃっていたような?

「どうせなので、ネルアと一緒に行って、ジョセフィーヌ嬢とネルアと私で一緒に何か焼きましょうか。うん、それがいいですね」
「え、でもそれではジョセフィーヌ様の手作りとは違うのでは」
「ああ、ジョセフィーヌ嬢はジョセフィーヌ嬢で作っていただければいいのです」

 何故かお茶に呼ぶより先に、一緒にお菓子を作る事になりそうです。楽しそうなのでいいですけれどね。
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