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宮殿での生活

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 朝、いつもの様に朝食だけれど…体型の事を、他に人がいる所で言うのは憚れて、どうしようかと思う。でも、後で言う、というのも…

「あ、の…ありがとうございます」

 朝の挨拶をして、そっとラクシュ様に近寄ってそう言えば、ふ、と少しだけ笑う。けれど…

「後で、感想聞かせてください」

 耳に吹き込むのはやめて欲しい。




「王太子様からドレスの色見本が来たから相談したいという要請が来てます。今日か、明後日のどちらかでという事ですがどうします?」
「んー今日でもいいなら今日で」
「かしこまりました。ではそのように。どうせなので私達も少々おでかけしてよろしいですか」
「え、何、デートか」
「デートできれば良かったんですが、グランシュネル公爵様に挨拶に行こうかと。そろそろ領地へと帰られるという事ですし、わざわざ王太子様にお時間作っていただくのも悪いですし」

 そう言われればそうね。まだゆっくりするかもしれないけれど…挨拶は必要よね。




 そうして…馬車に揺られて、タウンハウスへと向かっています。朝、先ぶれは出したそうで、後は結婚祝いのお礼を用意するだけだという事だけれど…結婚祝いの品物、来ていたの!?

「結婚祝い、来ていたのですね」
「ええ。ネグリジェを頂きましたが、趣味ではなかったので」

 趣味ではなかったのだとしても一言あってもいいと思うのだけれど!?…ちょっと、それをどうしたのか言ってよ。捨てたの?どこかにあるの?どっち!

「…処分、しましたの?」

 にこり。

「どこかにございますの?」

 にこり。

「あの…」

 にこにこ笑う顔は、どんな質問をしても変わらなくて、鉄壁でした。

「お返しはお礼状だけでもいいのですが、家族になりましたのでね。きちんとしたお返しをした方が良いかと思いまして。お菓子か、お茶辺りが妥当なのですが、ご両親の好みとしてはどちらが良さそうですか?

 と、結婚祝いの行く末の答え回避なのか、そう聞かれる。ネグリジェとかもらっても、確かに困るけれど。際どい物なんか貰ったら、絶対着たくないし。だからといってそれをどうしたのか位教えてくれてもいいと思うの。
 けれど店が立ち並ぶエリアへと入ったと声を掛けられたので、両親の好みを言わないと御者が困ってしまうわね。

「…父は、ワインが好きで、母はお菓子、ですわ」
「それでしたら、ワインもお付けしましょう」

 両親の好みを言ってみたけれど、この鉄壁の表情は、どうしたら崩せるのかしら。


 そうして、タウンハウスへと到着すると、応接室へと通された。すぐに両親が来たけれど…

「待たせてしまったかな」
「いえいえ、私も本日急に連絡いたしまして申し訳ございません。お時間いただきましてありがとうございます」
「まあ、掛けてくれたまえ。して、名前をどう呼べばいいのか困ってまして」

 そういえばそうよね。義理の息子になったのだし…ただ、それでもラクシュ様のお名前は呼べないし。

「それは申し訳ないですが、変わらずなので…そうですね、ディベルと呼んでいただければ。こちら、どうぞ。結婚祝いのお返しです」
「では、ディベルと呼ぼう。わざわざすまんね。手紙でも全く構わなかったのだが」
「せっかく家族になったのですから、それでは味気ないでしょう。なかなか王都から離れられませんし」
「そうかそうか。して、娘はなぜその格好なのだね。まさか働かせているのかね」

 父に聞かれて、しまったと思う。お仕着せのまま来てしまったのよね。ラクシュ様に促されるまま馬車に乗ってしまったから。いくら上級メイドで、ラクシュ様の傍付で、仕事という仕事は今の所していないと言っても、格好からそう考えてしまうもの。

「働いているというよりは私の傍にいて欲しくて、ルーヴェリア様にわがままを言いました。この格好でしたらルーヴェリア様のお側にいようが、ルーヴェリア様の婚約者のジョセフィーヌ嬢のお側にいようが問題ありませんから」

 貴族の女性でも、今はジョセフィーヌ嬢の傍に行くことは申請して許可を取らなくてはならないそうで。ジョセフィーヌ嬢の気分が滅入って仕舞わないように考えた場合、わたくしの存在は好都合なのだという。

「ネルアも王都での知り合いがいないという事でしたし、丁度いいかなと思いまして」
「そうか。だが、しかし」
「ちなみに、ネルア。もし城の中で行きたい場所があれば、何処へでも行けますよ。私から許可をもらっているといえばね」

 それこそ、王の寝所でもね。と言われて、え…いや、それはいくらなんでもと思う。というか、あれだけわたくしに対して求めて来る割に…嫉妬とか、独占欲とかないの…?

「ただ、勝手は困りますので、一言言ってくださいね。でないと、私が貴女を処分しなければなりませんので」


 その、処分と言った時の、仄暗い目の色に怖気を感じた。
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