20 / 150
宮殿での生活
20
しおりを挟む
朝、いつもの様に朝食だけれど…体型の事を、他に人がいる所で言うのは憚れて、どうしようかと思う。でも、後で言う、というのも…
「あ、の…ありがとうございます」
朝の挨拶をして、そっとラクシュ様に近寄ってそう言えば、ふ、と少しだけ笑う。けれど…
「後で、感想聞かせてください」
耳に吹き込むのはやめて欲しい。
「王太子様からドレスの色見本が来たから相談したいという要請が来てます。今日か、明後日のどちらかでという事ですがどうします?」
「んー今日でもいいなら今日で」
「かしこまりました。ではそのように。どうせなので私達も少々おでかけしてよろしいですか」
「え、何、デートか」
「デートできれば良かったんですが、グランシュネル公爵様に挨拶に行こうかと。そろそろ領地へと帰られるという事ですし、わざわざ王太子様にお時間作っていただくのも悪いですし」
そう言われればそうね。まだゆっくりするかもしれないけれど…挨拶は必要よね。
そうして…馬車に揺られて、タウンハウスへと向かっています。朝、先ぶれは出したそうで、後は結婚祝いのお礼を用意するだけだという事だけれど…結婚祝いの品物、来ていたの!?
「結婚祝い、来ていたのですね」
「ええ。ネグリジェを頂きましたが、趣味ではなかったので」
趣味ではなかったのだとしても一言あってもいいと思うのだけれど!?…ちょっと、それをどうしたのか言ってよ。捨てたの?どこかにあるの?どっち!
「…処分、しましたの?」
にこり。
「どこかにございますの?」
にこり。
「あの…」
にこにこ笑う顔は、どんな質問をしても変わらなくて、鉄壁でした。
「お返しはお礼状だけでもいいのですが、家族になりましたのでね。きちんとしたお返しをした方が良いかと思いまして。お菓子か、お茶辺りが妥当なのですが、ご両親の好みとしてはどちらが良さそうですか?
と、結婚祝いの行く末の答え回避なのか、そう聞かれる。ネグリジェとかもらっても、確かに困るけれど。際どい物なんか貰ったら、絶対着たくないし。だからといってそれをどうしたのか位教えてくれてもいいと思うの。
けれど店が立ち並ぶエリアへと入ったと声を掛けられたので、両親の好みを言わないと御者が困ってしまうわね。
「…父は、ワインが好きで、母はお菓子、ですわ」
「それでしたら、ワインもお付けしましょう」
両親の好みを言ってみたけれど、この鉄壁の表情は、どうしたら崩せるのかしら。
そうして、タウンハウスへと到着すると、応接室へと通された。すぐに両親が来たけれど…
「待たせてしまったかな」
「いえいえ、私も本日急に連絡いたしまして申し訳ございません。お時間いただきましてありがとうございます」
「まあ、掛けてくれたまえ。して、名前をどう呼べばいいのか困ってまして」
そういえばそうよね。義理の息子になったのだし…ただ、それでもラクシュ様のお名前は呼べないし。
「それは申し訳ないですが、変わらずなので…そうですね、ディベルと呼んでいただければ。こちら、どうぞ。結婚祝いのお返しです」
「では、ディベルと呼ぼう。わざわざすまんね。手紙でも全く構わなかったのだが」
「せっかく家族になったのですから、それでは味気ないでしょう。なかなか王都から離れられませんし」
「そうかそうか。して、娘はなぜその格好なのだね。まさか働かせているのかね」
父に聞かれて、しまったと思う。お仕着せのまま来てしまったのよね。ラクシュ様に促されるまま馬車に乗ってしまったから。いくら上級メイドで、ラクシュ様の傍付で、仕事という仕事は今の所していないと言っても、格好からそう考えてしまうもの。
「働いているというよりは私の傍にいて欲しくて、ルーヴェリア様にわがままを言いました。この格好でしたらルーヴェリア様のお側にいようが、ルーヴェリア様の婚約者のジョセフィーヌ嬢のお側にいようが問題ありませんから」
貴族の女性でも、今はジョセフィーヌ嬢の傍に行くことは申請して許可を取らなくてはならないそうで。ジョセフィーヌ嬢の気分が滅入って仕舞わないように考えた場合、わたくしの存在は好都合なのだという。
「ネルアも王都での知り合いがいないという事でしたし、丁度いいかなと思いまして」
「そうか。だが、しかし」
「ちなみに、ネルア。もし城の中で行きたい場所があれば、何処へでも行けますよ。私から許可をもらっているといえばね」
それこそ、王の寝所でもね。と言われて、え…いや、それはいくらなんでもと思う。というか、あれだけわたくしに対して求めて来る割に…嫉妬とか、独占欲とかないの…?
「ただ、勝手は困りますので、一言言ってくださいね。でないと、私が貴女を処分しなければなりませんので」
その、処分と言った時の、仄暗い目の色に怖気を感じた。
「あ、の…ありがとうございます」
朝の挨拶をして、そっとラクシュ様に近寄ってそう言えば、ふ、と少しだけ笑う。けれど…
「後で、感想聞かせてください」
耳に吹き込むのはやめて欲しい。
「王太子様からドレスの色見本が来たから相談したいという要請が来てます。今日か、明後日のどちらかでという事ですがどうします?」
「んー今日でもいいなら今日で」
「かしこまりました。ではそのように。どうせなので私達も少々おでかけしてよろしいですか」
「え、何、デートか」
「デートできれば良かったんですが、グランシュネル公爵様に挨拶に行こうかと。そろそろ領地へと帰られるという事ですし、わざわざ王太子様にお時間作っていただくのも悪いですし」
そう言われればそうね。まだゆっくりするかもしれないけれど…挨拶は必要よね。
そうして…馬車に揺られて、タウンハウスへと向かっています。朝、先ぶれは出したそうで、後は結婚祝いのお礼を用意するだけだという事だけれど…結婚祝いの品物、来ていたの!?
「結婚祝い、来ていたのですね」
「ええ。ネグリジェを頂きましたが、趣味ではなかったので」
趣味ではなかったのだとしても一言あってもいいと思うのだけれど!?…ちょっと、それをどうしたのか言ってよ。捨てたの?どこかにあるの?どっち!
「…処分、しましたの?」
にこり。
「どこかにございますの?」
にこり。
「あの…」
にこにこ笑う顔は、どんな質問をしても変わらなくて、鉄壁でした。
「お返しはお礼状だけでもいいのですが、家族になりましたのでね。きちんとしたお返しをした方が良いかと思いまして。お菓子か、お茶辺りが妥当なのですが、ご両親の好みとしてはどちらが良さそうですか?
と、結婚祝いの行く末の答え回避なのか、そう聞かれる。ネグリジェとかもらっても、確かに困るけれど。際どい物なんか貰ったら、絶対着たくないし。だからといってそれをどうしたのか位教えてくれてもいいと思うの。
けれど店が立ち並ぶエリアへと入ったと声を掛けられたので、両親の好みを言わないと御者が困ってしまうわね。
「…父は、ワインが好きで、母はお菓子、ですわ」
「それでしたら、ワインもお付けしましょう」
両親の好みを言ってみたけれど、この鉄壁の表情は、どうしたら崩せるのかしら。
そうして、タウンハウスへと到着すると、応接室へと通された。すぐに両親が来たけれど…
「待たせてしまったかな」
「いえいえ、私も本日急に連絡いたしまして申し訳ございません。お時間いただきましてありがとうございます」
「まあ、掛けてくれたまえ。して、名前をどう呼べばいいのか困ってまして」
そういえばそうよね。義理の息子になったのだし…ただ、それでもラクシュ様のお名前は呼べないし。
「それは申し訳ないですが、変わらずなので…そうですね、ディベルと呼んでいただければ。こちら、どうぞ。結婚祝いのお返しです」
「では、ディベルと呼ぼう。わざわざすまんね。手紙でも全く構わなかったのだが」
「せっかく家族になったのですから、それでは味気ないでしょう。なかなか王都から離れられませんし」
「そうかそうか。して、娘はなぜその格好なのだね。まさか働かせているのかね」
父に聞かれて、しまったと思う。お仕着せのまま来てしまったのよね。ラクシュ様に促されるまま馬車に乗ってしまったから。いくら上級メイドで、ラクシュ様の傍付で、仕事という仕事は今の所していないと言っても、格好からそう考えてしまうもの。
「働いているというよりは私の傍にいて欲しくて、ルーヴェリア様にわがままを言いました。この格好でしたらルーヴェリア様のお側にいようが、ルーヴェリア様の婚約者のジョセフィーヌ嬢のお側にいようが問題ありませんから」
貴族の女性でも、今はジョセフィーヌ嬢の傍に行くことは申請して許可を取らなくてはならないそうで。ジョセフィーヌ嬢の気分が滅入って仕舞わないように考えた場合、わたくしの存在は好都合なのだという。
「ネルアも王都での知り合いがいないという事でしたし、丁度いいかなと思いまして」
「そうか。だが、しかし」
「ちなみに、ネルア。もし城の中で行きたい場所があれば、何処へでも行けますよ。私から許可をもらっているといえばね」
それこそ、王の寝所でもね。と言われて、え…いや、それはいくらなんでもと思う。というか、あれだけわたくしに対して求めて来る割に…嫉妬とか、独占欲とかないの…?
「ただ、勝手は困りますので、一言言ってくださいね。でないと、私が貴女を処分しなければなりませんので」
その、処分と言った時の、仄暗い目の色に怖気を感じた。
10
お気に入りに追加
279
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
二人の甘い夜は終わらない
藤谷藍
恋愛
*この作品の書籍化がアルファポリス社で現在進んでおります。正式に決定しますと6月13日にこの作品をウェブから引き下げとなりますので、よろしくご了承下さい*
年齢=恋人いない歴28年。多忙な花乃は、昔キッパリ振られているのに、初恋の彼がずっと忘れられない。いまだに彼を想い続けているそんな誕生日の夜、彼に面影がそっくりな男性と出会い、夢心地のまま酔った勢いで幸せな一夜を共に––––、なのに、初めての朝チュンでパニックになり、逃げ出してしまった。甘酸っぱい思い出のファーストラブ。幻の夢のようなセカンドラブ。優しい彼には逢うたびに心を持っていかれる。今も昔も、過剰なほど甘やかされるけど、この歳になって相変わらずな子供扱いも! そして極甘で強引な彼のペースに、花乃はみるみる絡め取られて……⁈ ちょっぴり個性派、花乃の初恋胸キュンラブです。
ドクターダーリン【完結】
桃華れい
恋愛
女子高生×イケメン外科医。
高校生の伊吹彩は、自分を治療してくれた外科医の神河涼先生と付き合っている。
患者と医者の関係でしかも彩が高校生であるため、周囲には絶対に秘密だ。
イケメンで医者で完璧な涼は、当然モテている。
看護師からは手作り弁当を渡され、
巨乳の患者からはセクシーに誘惑され、
同僚の美人女医とは何やら親密な雰囲気が漂う。
そんな涼に本当に好かれているのか不安に思う彩に、ある晩、彼が言う。
「彩、 」
初作品です。
よろしくお願いします。
ムーンライトノベルズ、エブリスタでも投稿しています。
地味女で喪女でもよく濡れる。~俺様海運王に開発されました~
あこや(亜胡夜カイ)
恋愛
新米学芸員の工藤貴奈(くどうあてな)は、自他ともに認める地味女で喪女だが、素敵な思い出がある。卒業旅行で訪れたギリシャで出会った美麗な男とのワンナイトラブだ。文字通り「ワンナイト」のつもりだったのに、なぜか貴奈に執着した男は日本へやってきた。貴奈が所属する博物館を含むグループ企業を丸ごと買収、CEOとして乗り込んできたのだ。「お前は俺が開発する」と宣言して、貴奈を学芸員兼秘書として側に置くという。彼氏いない歴=年齢、好きな相手は壁画の住人、「だったはず」の貴奈は、昼も夜も彼の執着に翻弄され、やがて体が応えるように……
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる