まるで裏稼業の騎士様にでろっでろに甘やかされる話

宮殿での生活

16

「そうだわ。この子、ネルア様の旦那様の妹なのよ」

　と、共通の話題だから、かしら。そう言って、お茶を淹れてくれたそのメイドを紹介してくれる。

「そうですわね。確かに妹様が、ジョゼ様についているとお伺いしてますわ」

　そう言って、その子を見るけれど、目の色は…赤？いえ、オレンジかしら。あれ？そういえば、と、ここへ案内してくれたメイドを見る。ドアの傍で待機しているので…

「…あの方も、妹様ですか？」
「………そう、ですね。私の、一つ上の、姉、です」

　姉…年功序列ではなく、能力で傍付とかなのかしら。ちらりとドアの傍で待機しているメイドを見れば、にこりと笑顔を返される。ちょっと失礼な事を考えてしまったから、気まずい。

「…そういえば、お義母様もいらっしゃるとお伺いいたしましたけれど…」
「本日は邸宅へ戻っておりまして。会えない事を残念だと嘆いておりました」
「そうですか…わたくしも残念ですわ。あの、ジョゼ様。もしよろしければ、わたくしもお茶にお招きしてもよろしいかしら」

　そう言うと、ジョセフィーヌ様はすごく喜んでくれる。どうやら、この宮殿から本当にでられないらしく、庭園も併設されているらしいけれど、そこでさえ一人では駄目なのだという。

「まあ…そんなに厳しいものなのですね」
「理由が理由ですので…仕方ないかと思います」

　理由…噂の、アレよね。というより…あの、ラクシュ様が普通にわたくしの部屋に、夜いるのは、良くないと思うのだけど。と、冷や汗が出てしまう。結婚はしているし、わたくしの心臓が持つかと言う問題はあるけれど、一応世間的には問題ない、はず。けれど、この宮殿の決まりを考えると、駄目だと思うの。改修が済めば一緒に住む事になるのだから、それまで自重していただきたいわ。

「あ、ですが、お后様とご一緒でしたら庭園には出られるので、何が何でも駄目という訳ではありませんし、お気になさらないでください」
「そうなのですね。それならよかったです。第二王子様とカフェに行くお約束をしているそうですわね」
「は、はい…」

　そう水を向ければ、ほんのりと頬を染めるジョセフィーヌ様。なんだか、お邪魔してしまう様で悪いのだけれど…

「警護の点から、わたくし達もご一緒させていただく事は聞いてらっしゃいますか？」
「はい。楽しみです」
「お邪魔してしまわないかしら」
「いいえ、そんな事！却って助かります。…お手紙で、やり取りさせていただいてますが…こんな事になってしまって、ルーヴェリア様には申し訳なく思ってまして。上手くお話できるかどうか不安で」

　助けた現場に居合わせて、調書もルーヴェリア様が取ったというのに、悪い噂がたってしまった責任を取って、という事だったかしら。潔いというか…確かにあの方なら、何も考えずに言いそうだわ。と、想像できてしまう。
　…ラクシュ様が、アホだ馬鹿だというけれど…そういう潔い所は、いい所だと思うわ。