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宮殿での生活

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「こちらがメインの調理場で、私共が使う調理場は、こちらです。忙しい時間でも使えるようになってますし、なんなら私共の休憩場所にもなります」
「休憩場所ですか。そういえばレイって食事とかどうなさってますの?ちゃんと召し上がってます?」

 今更ながらにそのことに気が付いた。領での今までは、わたくしの話し相手として一日中ついている訳ではなかったから、空いた時間に食べていると思っていたけれど…レイって基本的にずっとそばにいるから。今もただ静かに後ろについて来ているレイに聞けば。

「給湯室にも用意ございますし、ご心配には及びません」
「そう…それなら、いいですわ。ごめんなさい、気が付かなくて」

 そう言えば、レイはにこりと笑う。ラクシュ様は、意外と合間に取っているから大丈夫だと言って笑う。

「さて、では、材料ですが、一応食材は料理人が使うものと同じものを使えるようになっています。ただ、食材に毒を仕掛けられる事もなくはないので、うちの者と一緒に来る方が無難ですね」
「………」
「食材に毒を仕掛ける場合は、嫌がらせなので、下剤とかそういう物が大半で、そこまで酷いモノは使われませんが」

 いえ、下剤って…嫌がらせと言えばそうだけれど…日本なら食中毒かと騒ぎになるやつでは。毒ではなくて、そちらの可能性はないのかしらと思って聞けば、食材の管理は徹底しているし、それに…

「手洗いはもちろんですが、こちらにこういった道具がございまして」

 と、手洗いの場所のすぐ隣に箱。ラクシュ様が手を入れているけれど、これは…

「クリーンの魔術が常時発動している魔術道具です」
「そんな物がございますの?」
「王都では魔術が使えませんからね。こういった道具も様々ありますが…ご興味あるようなら、冊子用意しましょう」
「はい。お願いいたしますわ」

 なんだか家電道具みたいで楽しそう。魔術が使えないからと今まで遠ざけていたけれど、もう少し勉強しておけばよかったと今更ながらに思う。

「では、そうですね。フルーツは召し上がってましたので…」

 そう言って、卵と、ロールパンを持ち出している。食材を置いている場所は結構広いし綺麗に整えられていた。
 調理台で調味料と卵を混ぜて、コンロ…これは炭を魔術道具でコントロールしているそうで煤が出ないらしい。火力をコントロールはしてくれないみたいで、火箸で調節してたわ。
 ラクシュ様はあっという間にロールサンドを作っていた。色どりが、と言って、レタスを挟んでいたけれど、そのレタスは調理場の下が冷蔵庫になっているらしく、そこから取り出していたわ。こうしてみると、設備は意外と日本と近いのかしら。領では設備が遅れていると思ったけど、もしかしたら魔術ありきの設備だったのかもしれない。
 料理したいなんて言っても、叱られるか咎められるから、そこまで聞けなかったのよね。


 そうしてそれを執務室へと持って行くと、何故かルーヴェリア様がソファで待機していたわ。

「ただサボっていただけでしょう」

 そのルーヴェリア様を見て、そう言ったのはラクシュ様だ。まあ、休憩は必要、ですよね。うん。
 ロールサンド、何気にたくさんあるなと思ったら、わたくし達の分もあったらしい。ルーヴェリア様は2個で、わたくし達は1個ずつ。お茶を飲みながら頂いたけれど、卵がふわふわで、しっかり味つけされていておいしい。

「ネルア。味はどうですか?」
「すごく美味しいですわ」
「それはよかったです」

 にこりと笑う顔は、とても優しい感じがして安心する。
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