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一章:キャンプ道具ではなく、イケメンを手に入れた

準備も片付けもいらないとかお手軽すぎるキャンプ

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 という事で…串焼き…ラスウルさんに串から外されて木の皿に盛られてるけど…すっごく美味しかった。塩コショウだけだけど、薪で焼いたからなのかな。なんか香ばしい香りがして美味しかった。
 もっと欲を言えば、串から食べたかったけど。ラスウルさんはそうやって食べてたから尚更ね。ワイルドな食べ方なはずなのに、上品に見えるのは顔がいいからなのか。


 ご飯も食べ終わる頃には日が暮れ始めて、綺麗な夕日と海という素晴らしい景色も堪能できた。
 ラスウルさんによって、焚火はこまめに薪を足して、火が消えない様に調節されるから、本当に至れり尽くせり。
 …当初の予定では自分も準備とか火起こしとかやるつもりだったんだけどな…あれ…

「そういえば、お肉とかはマジックバックから出してたみたいだけど、水とかは?」

 そうなんだよね、お茶を用意してくれたけど、鉄製の…水筒みたいな長細い物が火の傍…串焼きと同じように置かれてて、それでお湯を沸かしてたみたいなんだけど…もしかしてあの水筒みたいなものに水が入ってたのかな?

「この水筒に入れて、マジックバックに収納してましたが…生活魔法もつかえますので、いくらでも出せますよ」
「え?」

 くるくるとコップの上で指を回すと、ほんの少し水が!

「他にも身体…着ている服ごと綺麗にする魔法ですとか、気温の調節なんかも出来ます」
「気温の調節?」
「雪国や高温な土地でも問題なく過ごせます」

 え、なにそれすごい。と、感動していると、困ったように笑う。

「とはいえ、限度がございますので…私の様に空間魔法が使えれば別なのですが、生活魔法だけで万全かと言われると少々…」
「空間魔法が使えれば快適って事ですか?」
「外気と遮断して、その内側の調節をしてしまえばそうですね」

 え、じゃあやっぱりすごいんじゃ…あ。そうか、ラスウルさんがすごいのか。

「私が他の者に女神様のお世話をお任せはしませんが…お願いですから、他の者を信用なさいませんよう」
「…え?」
「かの国の…神たちは、総じて人が良い、と聞かされております。人を疑う事が全くないと」

 いやぁ…流石にそこまでは…ないと思うよ。…うん、多分。いや絶対。



 そんなこんなで…何度も繰り返し、私は子供か!?という程、もし街に行く事があれば、横道に入らない様にとか、知らない人にはついていかない様にとか言われました。
 …でもそれを言ったらラスウルさんだって知らない人だよね。と言ったらストンと表情抜け落ちて、彫像か!と心の中で突っ込み入れてたよ。イケメンの無表情って、意外と怖かった。…それでもイケメンだけど。

 なんとかなだめて、ラスウルさんが張ったテントに寝る。ちゃんと別々のテントに寝るよ。2つもテントをラスウルさんに張らせてしまったけど。
 時間的には早いけど、日が暮れて真っ暗になると、寝てしまう事にした。景色見えないし。森に出かけるなんてもってのほかだし。一応この島は、獣はいるけど狂暴なでなく、魔物もいないから安全らしい。毒を持った小さな虫とかいるらしいけど、空間魔法で入ってこない様にしているから問題ないのだとか。
 ほんとうに至れり尽くせりだ。

 テントに入ってころりと横になるけど、石とか木の枝が、なんて事もなくて快適。敷かれている布も肌掛けもふわふわだし。ノーストレスだ…
 そうは言っても、いつもより早い時間だから眠れる訳もなくて、スマホを取り出してダウンロード済みの本を読む。そんな事をしているうちに眠ってしまっていた。

 焚火の音と、遠くからわずかに聞こえる鳥の鳴き声って、癒しなのかなぁ。



 朝。スマホのアラームではなく、日の光で自然と目覚めた。ぼーっとする頭で、目に入ってくる景色を眺める。うん、テントだよね。そういえば異世界でキャンプしてたんだったよね。しかもものすんごくいイケメンと無人島で二人っきりで。

 よだれの跡とかないよね、うん。多分大丈夫。と、髪の寝ぐせも気にしつつ、手櫛で梳いていれば。

「失礼します。お目覚めですか?」
「は、はい」
「では、こちらをどうぞ」

 外から声を掛けられて、慌てて返事をすれば…入口を覆ってるテントの隙間から差し込まれたのは、タオル?受け取れば、ほかほかあったかい。

「ありがとうございます…」
「いえ。飲み物をご用意いたします。ご希望はございますか」

 希望。そういえばこの世界の飲み物知らないな。でも昨日の紅茶もおいしかったし。

「紅茶で。何も入れないものでお願いします」
「かしこまりました。ご用意してお待ちしております」

 そう言って、遠ざかる足音にほっとする。温かいそのタオルに顔を埋めて、綺麗にする。
 
 朝一から至れり尽くせりで幸せすぎる…





「おはようございます。どうぞ」
「お、おはよう、ございます」

 うっ…朝一からのイケメンの笑顔は辛い…差し出された紅茶を受け取って、お礼を言ってから口にするけど、渋みがあってすっきりする。ちょっと昨日とは違った味かも。

「朝食は召し上がりますか?」

 と、そう言われて思い出す。お母さんに話してからはあっという間すぎて考える暇がなかったけど。

「具だくさんのミルクスープに、パンをつけて食べたいって考えてました」
「ふむ。それ位ならすぐできますね」

 言うなり、長い棒を出して薪の上に置いてるけど、三脚?と思ったら鍋が吊り下げられた。おお。なんか見たことある。鍋に水を入れて、葉物野菜をちぎって入れて、何の肉か分からないけどそれも。少ししてから、銀色のボトルから、多分ミルクが入れられる。調味料も入れられて少し待てば出来上がったようで。

「パンは焼いた方がいいのでしょうか」
「そのままでも食べられるなら、そのままでいいですよ」

 カリカリに焼いても食感としてはどうなんだろう。でも、私はとろける方がいいからそのままにしてもらう。丸い塊のパンが切られて、木製のボウルに入れられて、好きなだけ取る様にと言われる。

「いただきます」
「どうぞ」

 大き目の木のコップに入れられたミルクスープ。スープだけ飲んで味を見ればおいしい。シチュー程ではないけど、とろみもあって、ほんわりする。とろみがつくようなもの、いつの間に入れたんだろうか。
 そんな事を考えながらパンをちぎっていれて食べれば、パン自体のほんのりとした甘みも追加される。

 …それにしても…

「料理、上手でいいなぁ」
「そう言っていただけると嬉しいですね」

 少し驚いた後で、ふわりと笑う笑顔のなんてまぶしい事か。

「行動できる場所を広げる為に行軍していたかいがありました」
「…ご飯とか、転移して戻ったりはしなかったんですか?」
「それでもよかったのですが、神に何を求められるかわかりませんので」

 身の回りの事から料理、世界中の食料に鉱物、布や木材なんかも…様々な事を勉強し、実際に体験したり見たりした方がいいと、過去の世話役の日誌から学んだのだという。
 ちょっと、遠い目をしているような気がするんだけど…何かむちゃぶりでもしてたのかな。気を付けておこう。


 朝食を摂ったら、キャンプ道具…テントや薪の燃えカスなんかを片付け…ラスウルさんがぽいぽいとマジックバックに入れるだけだからあっという間だけど。
 そうして、ラスウルさんの魔法で戻る、と思ってたけど、目の前に広がるのは砂浜と打ち寄せる波で。

「せっかくなので、少しだけ」

 と言ってくれる。濡れても魔法で綺麗に出来るからとも。だからちょっとはしゃいでしまって、ずぶ濡れまでは行かないけど、びしゃびしゃになってしまった。
 …ラスウルさんに水ぶっかけて、水も滴るイイ男を作成したのはまずかったかもしれない。いや、自分でやっておいてなんだけど、かっこよくて心臓に悪かった…!
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