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一章:キャンプ道具ではなく、イケメンを手に入れた

事の始まりとこの世界の事

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 さて。イケメンに出会ってテンパりすぎた。まず事の始まりを改めて説明すると…友達から聞いたからっていうのもあるけど、最近流行りのキャンプをしてみたくなった。火を熾して料理して、山の中でテントを張って寝る。なんかこう、日常と違う事をしたみたくなったというか。一応、学校の林間合宿でやったことはあるけど、ああいう決まり切ったものじゃない事をしたいというか。
 だからといって、友達を誘っても初心者だけで出来るとも思わないし。だから、まずは両親に相談した。そしたらなんと良い場所とモノがあると言う。キャンプ場所とか道具かなと思ったら…異世界でした。

 いや、なんで!?ってなるよね。うん。私も『はあ?』って思わず言っちゃったもん。

 どうやら昔、異世界から転移してきた人がいるらしく…しかも命を狙われて転移をしたらなんの間違いか、実家---今住んでいるのは東京だけど、田舎にある実家の傍に転移してきたらしい。その転移者はひどい傷はない物の、小さな傷があってボロボロだったそうで、人が良いご先祖様が助けたとか。
 で、まあ紆余曲折あって、持ちつ持たれつで相互助け合いの為に転移の魔法陣を実家の倉庫に作ったとかなんとか。実際、異世界に塩を持ち込んで替わりに小麦を貰ったり、最近ではテレビとゲームを…お母さんが持ち込んだらしい。
 電気がなくて使えないのに、そこも含めて研究するからいいんだといって笑ってたけど。その話を聞いて、実現したのか気になってはいるけど。

 それはともかくとして。あの何もない部屋から出ると、人が5人くらい横に並んでも問題なく歩けるような階段があった。しかもすんごいふかふかの絨毯が敷かれた。
 その階段をあがると、これまた頑丈そうな金属製のドアがあった。金とか銀とかきらっきらの装飾されたやつ。見惚れてたら笑われてしまったけど。
 ここは聖域で神が降臨するとまで言われているのだとか。えぇ…と驚くと、そうでもしないと、どうにかして日本に行こうとする人が出るから。一応通れる人は血筋とか色々あるらしいんだけどね。

 で。そのドアを開けて貰って通ると、そこは豪華な部屋でした。こう、なんていうのかな。高級なホテルとか?そんな感じ。ソファに案内されて座ればすっごいふっかふか…
 内装とかソファの感触とか、ソファに置かれてたクッションもふっかふかで、もふもふと感触を楽しんでいる間にイケメンなラスウルさんにお茶を用意されてました。しかもくすくす笑われた。

「さて、では今回の目的と、この世界の事について認識確認させていただきます」
「はい。あ。これ、お土産ですって渡す様に言われた物です。中の箱ごと全部、らしいです」

 と、お土産のスマホを示せば、ラスウルさんがありがとうございますと言いながら触れると…消えたんだけど。

「…この能力は聞いておりませんか」
「聞いてません、ね…」
「分かりました。ではその辺りも確認しましょう」

 という事で、お母さんから聞いた話を伝える。いや、ほんとに、安心安全お手軽にキャンプが出来るって事と、まあちょっと異世界とのつながりが出来た事の起こりしか聞いてないと伝えると、安心安全は分かるけど、キャンプとは?と聞かれて説明をすることに。

「では、目的は…自然の中で食事と一晩休む事、ですか。こちらでは野営が当てはまりますが…」

 意味が分からないという顔をされて、どうしたものかと考えてしまう。キャンプっていう意味も通じなかったから、やってみたい事を言ってみたらそう解釈されたんだけど。

「だめ、ですか?」
「…いえ、すみません。そうではなく…なぜ野営、すみません、キャンプでしたね。なぜキャンプをしたいのかその気持ちが分かりかねまして」
「生活様式の違いとしか」

 この世界は剣と魔法の世界で、科学なんて全くない…なかった、らしい。日本とつながった事で、多少は…うん、多少はね。ただ、電気を使うんじゃなくて、魔力を使って動かすから、科学と言っていいのか分からないってお母さんは笑ってたなぁ。
 …顎に手を当てて真面目な顔で悩むイケメン、眼福です。あーもーほんとかっこいいなぁ。

「なるほど、だから安心安全お手軽キャンプ、ですか」
「?」

 小さな声で呟かれた。なんとか聞こえたけど、独り言、かな。ゆっくりと目を合わせられて、にこりと笑われる。

「世話役につく者は、ある能力を持っている事が条件でございまして」
「能力…」
「先ほどの…この能力です」

 そう言って、目の前の、お茶が置かれたテーブルの上に、さっき消えたスマホが入った紙袋が一瞬で出る。

「私共はマジックバックと言いますが、空間魔法の一種です。この魔法が使える事が条件の一つ。そして二つ目に…」

 ノヴェシュタイン王国の王族である事。そう言ってから、秘密ですよ。と笑う。
 おうぞく…王族!?え、王子様!?

「王子ではありませんよ。世話役になれる能力持ちは、特殊な身分になりますので」

 私達日本人はよく間違うらしい。いやだってねぇ…そう思うよねぇ。ん、というか、元は王子様だよね。

「ですので、今の私の名は、ラスウル・ガーグル・スルトと申します。どうぞラスウルとお呼びください」
「じゃあラスウルさんって、よび」
「どうぞ呼び捨てで」

 めちゃくちゃかぶせてきた…いくらなんでも出会ったばかりの人を呼び捨ては…

「そ、れは、ちょっとまだ…」
「では、いずれ」

 いずれ…うん、呼べるのかな…お友達とかは呼べるけど、ちょっとこの見た目とか、身分は違う、らしいけど、もともと王子様でしょ。”さん”付けもアウトなんじゃないの。

「お手軽という理由としては、おそらくそのマジックバックが関係するのでしょう。野営をするには荷物がどうしても嵩張りますので。安心安全、に関しては…女神様の身を御守りする事も含まれておりますので」
「…女神様?」

 呼び方に悩んでいる間にも話を進められる。女神って?私の世話役って言っていたような。女神様が他にいるのかな。と考えていると、

「この国にとって、貴女様は女神様でございます」

 と、びっくりな事を言われる。一般人の日本人なのに女神!?
 女神呼びに驚かされた…認識としてはそんなすごい存在な訳ないと言ったけど、この国ではそうなのだとごり押しされた…食糧難の時はすぐ育つ植物の種とか、育ちやすい植物を渡したりして助けて貰った事があるからなのだとか。あと、日本と違って身分が大事。すんごく大事。と、丁寧な言葉でだけどめちゃくちゃ言われました。
 ラスウルさんは、神殿騎士っていう身分だけど、私が来たことで女神の騎士と格上げされたそうで。王様より格が上なんだそうで。一番上は勿論私らしい…怖い。
 そういえば、すっごく早く来たけどまさか扉の前にずっと待機してたわけじゃ…

「神の来訪が分かる様に、魔道具がありまして。これです」

 そう言って、手首のバングルを見せてくれる。赤い色の石…宝石かな。綺麗な石が付いていて、あの部屋に誰かが来ると音が鳴るのだとか。

「ですので、先ほどの空間魔法を使いまして、すぐ移動できます」

 荷物を収納するだけでなく、移動に時間が掛からないってすごい。でも、一度行った所じゃないとダメなんだとか。だから行き先を増やすためにいろんな所に行く必要があるらしく、野営も慣れているという。

「ですので、全てお任せください」

 ものすごくいい笑顔で言われて、心臓が…っ!
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