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番外編

永続の

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 そんなこんなで、お城でのスタンフォードの葬式は国葬という事で、時間停止のを掛けた豪華な棺桶にスタンフォードの遺体が入れられて、3日お城で告別式が行われた。いろんな所で活躍していた息子や娘…孫なんかも来てくれたし、ギルドの人はもちろん国中からいろんな人が花を手向けてくれた。
 とはいえ…その傍にずっといる必要はなくて、表向き私はショックでふさぎ込んでいるという事にされたから、スタンフォードの部屋でひたすら待ってました。中身スタンフォードのホムンクルスと一緒にね。お兄さん達が部屋に来てくれたけど、当主の人曰く、ずっとそのままというか…ぼーっとしてろという事だったのでそうしてた。なんかすっごく悲しそうな顔されたけど、心の中で謝っておいた。

 葬式を済ませてやっと森へと戻ってきましたが…一緒にあの当主も来ました。でも、何故かキッチンでお茶を淹れ始めたし、お菓子まで手土産で持って来てるとかどういう事よ。

「で。葬式だなんだで聞き忘れていましたが、そのホムンクルスに人の魂を入れたという所から、今に至るまで洗いざらい…スタンフォード様の技術を吐いていただきましょうか」
「必要か?」
「その判断は、わたくしがいたします」
「そもそもお前にバレなければ言うつもりはなかったんだが、相変わらずお前は化け物だよなぁ」
「いいから吐け」

 スタンフォードの軽口に、一言だけ『吐け』と言ったその声に、ぞくりと怖気がした。こう、喉元に刃を突き付けられたかのような。

「悪用したりしないというのに…」

 スタンフォードは、それが分からないのか、わかっても問題ないと考えているのか…ため息交じりにそう零して、私がこの世界に来る事になった理由まで全て洗いざらい話した。その人は、口を挟むことなくただ黙って聞いているだけで。

 すべてを話し終えると、沈黙、というか…しーん。と静寂が場を支配する。なんか言ったらどうなのよ…

「俺もだが、シルヴも見た目変えるし、ユウは…しばらくは俺が死んだ事で心労で寝込んでるとでもして、街に出ない様にする。それでまあ…バレない様にするし」

 何か問題でも?と、スタンフォードが問いかければ、その当主はため息を零す。

「全く…本当に…化け物、というよりはもう神の領域ではないですか。魂という不確定な物すら手に掛けるとは…」
「まあ、転移の理論が分かれば出来るんじゃないか?大抵は出来るはずがないという概念に囚われてしまっているだろうから、試そうとするやつがいるかどうか」
「試して成功させた人が私の目の前にいる訳ですが」
「あの時は…そう、疲れてたんだよ」

 スタンフォードが遠い目をしてそう言う。疲れて…ああ、まあ、ね。言い寄られるのが、甲高い声が、とか言ってたものね…だから、論理的な、というか…倫理かなぁ。そういうのが抜けていた、という事らしい。

「この情報に関してはきちんとセキュリティを掛けておくし、万が一拷問にかけられたとしても出ない様にしておくから安心しろ」
「…その様な事、可能なので?」
「出来るから言っている。…お前、突破しようと考えるんじゃないぞ」
「荒探しした方がよくないですか?」
「お前がやると突破されそうで嫌だ」
「完璧な物であるなら、試してみてもよいのでは」
「お前の様な化け物相手にするのは嫌だ」

 …なんだか急に子供の喧嘩のような感じになってるような。

「まあいいでしょう。で、他にもホムンクルスの技術で応用が利くもの全て、今のうちに吐きなさい」
「発表する気はないし、知らなくても問題ないだろう?それとも何か、お前、ホムンクルスの技術使いたいのか?」
「使えるかもしれないので」
「お前の一族の研鑽が恐ろしいから教えたくないんだが」
「王家の為にしか使いませんので、安心でしょう?」
「だが、誰かの目には触れるだろうが。そこから推測されたら---」

 なにやら言い合いが長くて終わりそうにないので、シルヴさんに言われて退出しました。




 そうして---5年位は森の中や、他国で生活をしていた。冒険者なんかもしてみたりして、いろんな場所の文化に触れたりして楽しんだ。
 そろそろ街に出ても問題ないだろうという事で、以前と同じ生活を楽しんだ。それでもまあ、いろんな所に行っていたけれど。そうこうするうちに、スタンフォードの兄弟が亡くなったりしたけれど、私はスタンフォードが亡くなってからふさぎ込んでいるからという事で、ひっそりと冥福を祈る事しか出来なかったけどね。この世界に来てから助けて貰ったのにと思ったけど、スタンフォードにこればかりは仕方ないだろうと言われてはどうする事もできない。

 月日が経ち…森だけでなく、いろんな場所で一定期間生活をしたりもした。年を取らないから、長くいられても10年とかだけど。冒険者だけでなく、食堂で働いてみたり、事務作業をしてみたり。スタンフォードなんか、土木作業員になんかなってた。といっても、魔術で作業するらしく、調整が難しいと言っていた。
 いろんな生活を楽しんでいたけど、もうそろそろ私達の存在を忘れただろう、という事で…スタンフォードは、ホムンクルスの身体をスタンフォードそっくりの個体を創り上げた。

「ユウ」

 魂を移し替えて…目を開くと、私を呼んで笑うその顔が---

「おうじさまだぁ」
「ほんと、この顔がお気に入りだな、お前」

 そう言って困ったように笑いながら体を起こすスタンフォードだけど。しょうがないと思うんだ。金髪碧眼のほんと王子様なイケメンなんだから。

「だって…」
「起きたばっかだが…久しぶりにこの身体で溶かしてやろうな」
「え」
「まずはそうだな、一緒に風呂か」

 ちょ、嘘でしょ、なんでそうなるの!?いや、まあ…確かに久しぶりなこの顔でときめいてしまったけども。ひょいと抱き上げられて、お風呂場へと向かうスタンフォード。なんとか抵抗しようとするけど---

「そうだな、風呂も薔薇にしよう。なんだったらベッドも薔薇で埋め尽くしてやる。だから…」

 にやりと笑いながらそう言って、覚悟しておけよ。なんて、耳に吹き込まれて…ホムンクルスという身体を呪う事になるとは、この時はまだ考えもつかなかったのである。

**完結**
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