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番外編
シルヴはルーヴェリア様の乳兄弟と話してます
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その部屋は、異様な雰囲気が充満していた。それは何故か。カーテンを閉め切った薄暗い空間に、馬鹿でかい…今は台に乗せられている、グローヌがある。そこに、二人の男。その二人は仕事内容から闇でも問題なく活動できるからか、暗いままで維持の魔術で時を止められたグローヌを使って有用な部位を話している。
「基本的には川魚と同じなんですが、大きさが大きさですので…こう、部分ごと、で切ってます。あと、頬肉と…ここも。内臓も…つかえそうなんですが、まあ奥様がちょっと」
「そこら辺は私の方でも試してみますが、お前も何か考えなさい」
「はい。食べ方としては新鮮なので、生が一番いいですが…一応寝かせてもそれはそれで美味しいです。ただ、3日から5日位まではなんとかなりますが後はもう駄目ですね。5日目に火を入れてなんとか、という感じです。調味液に漬け込んで、日持ちするかも試してますが…おいしさで言うと、どうかと。こちらのソースに漬けて食べるのもいいんですが、これは保存というより味をしみこませるだけですね」
「生で食べるのが一番いいと?」
「好みの問題にはなりますが、まあ…珍しさもあるとは思います。後は、軽く炙って、ステーキのレアの様にするのもいいです。煮てもおいしいですし。コース料理で仕立てるのであれば、炙るのがいいですね」
「ふぅん?」
とん、とん、と台を指で叩く音。
「随分とまあ、楽しそうですね?」
「まあ…城ではないので」
「媚薬という命に問題がない薬とはいえ、嗅ぎ分けるの、大変そうでしたものねぇ…」
「至らず申し訳、」
「謝罪は、主にしなさい」
「はっ」
「そのおかげで偏食になってしまいましたし」
「………」
「まあいいです。それにしても安全な場所とはいえ、よくもまあ長期間離れていられましたね」
「…元々、個人主義な性分だったせいもあります」
「お前たちは放っておくと好きな本抱えてそれぞれ読んでましたからねぇ」
とん、とまた指で台を叩く音。
「王が結婚を許可した事もありますし、すぐに妊娠した事もあって貴族の方は落ち着いてきましたが…元々スタンフォード様は…見目もいいですし、もし生まれるのがもっと早かったら高魔力持ちという事もあって、王位争いがあった可能性がある程の良い種です」
「それが原因で女性嫌いにもなってますが」
「それは少々誤算でしたが…いまだに騒ぐ者もいる、という事です。今回は間に合いましたが…次、どうなるかわかりませんよ」
「重々承知してます」
「あの子にメイドでもつけましょうか?お前の妻にするのもいい」
「それは、ちょっと」
「目途は立っているのですか」
「い、一応は」
「うーん、なんとも心もとない返事ですねぇ」
しん、と静まり返るその空間。
「後ひと月で妻にしなさい。その後ひと月で、仕込みなさい」
「二か月ですか」
「ええ。駄目な様なら、こちらで用意します。それを仕込むのにひと月」
「………」
「もうすでに、胎にスタンフォード様の子を宿しているのですよ」
「分かってはいるのですが」
「好きにしなさい。どちらにせよ、待つのはふた月だけです」
そう言って、もう用は済んだと出口へと向かう。
「私も妻と結婚する際は、悩みました。結婚自体は…貴族ですし、我が君も、王も王太子様も手を打ってくれましたしね。問題は、この仕事を話すか否か。本当に愛してしまったのでね…名を呼んで欲しいけれど血なまぐさい事なんて、言いたくありませんでしたから。まあ…ぐずぐずしてるうちに我が君にぶっちゃけられましたけれど」
くすくすと笑う声は、本当に楽しそうで。
「私の場合は時間がありましたので、悩めるだけ悩めたはずなんですが…我が君は…俺を大切にしてくださるので。どんな子なのかわかりませんが、権力が使えるならおねだりしてみたらどうですか」
「当主、よくおねだりといいますが…使い方間違っていませんか」
「間違ってはいませんでしょう。我が君のやさしさに甘えていますからね」
ふふ…と、笑って、ドアから出ていく後ろ姿を見送り、ぱたりとドアが閉まる。
「…あんたがおねだりって言うと、エロいんすよ…」
「基本的には川魚と同じなんですが、大きさが大きさですので…こう、部分ごと、で切ってます。あと、頬肉と…ここも。内臓も…つかえそうなんですが、まあ奥様がちょっと」
「そこら辺は私の方でも試してみますが、お前も何か考えなさい」
「はい。食べ方としては新鮮なので、生が一番いいですが…一応寝かせてもそれはそれで美味しいです。ただ、3日から5日位まではなんとかなりますが後はもう駄目ですね。5日目に火を入れてなんとか、という感じです。調味液に漬け込んで、日持ちするかも試してますが…おいしさで言うと、どうかと。こちらのソースに漬けて食べるのもいいんですが、これは保存というより味をしみこませるだけですね」
「生で食べるのが一番いいと?」
「好みの問題にはなりますが、まあ…珍しさもあるとは思います。後は、軽く炙って、ステーキのレアの様にするのもいいです。煮てもおいしいですし。コース料理で仕立てるのであれば、炙るのがいいですね」
「ふぅん?」
とん、とん、と台を指で叩く音。
「随分とまあ、楽しそうですね?」
「まあ…城ではないので」
「媚薬という命に問題がない薬とはいえ、嗅ぎ分けるの、大変そうでしたものねぇ…」
「至らず申し訳、」
「謝罪は、主にしなさい」
「はっ」
「そのおかげで偏食になってしまいましたし」
「………」
「まあいいです。それにしても安全な場所とはいえ、よくもまあ長期間離れていられましたね」
「…元々、個人主義な性分だったせいもあります」
「お前たちは放っておくと好きな本抱えてそれぞれ読んでましたからねぇ」
とん、とまた指で台を叩く音。
「王が結婚を許可した事もありますし、すぐに妊娠した事もあって貴族の方は落ち着いてきましたが…元々スタンフォード様は…見目もいいですし、もし生まれるのがもっと早かったら高魔力持ちという事もあって、王位争いがあった可能性がある程の良い種です」
「それが原因で女性嫌いにもなってますが」
「それは少々誤算でしたが…いまだに騒ぐ者もいる、という事です。今回は間に合いましたが…次、どうなるかわかりませんよ」
「重々承知してます」
「あの子にメイドでもつけましょうか?お前の妻にするのもいい」
「それは、ちょっと」
「目途は立っているのですか」
「い、一応は」
「うーん、なんとも心もとない返事ですねぇ」
しん、と静まり返るその空間。
「後ひと月で妻にしなさい。その後ひと月で、仕込みなさい」
「二か月ですか」
「ええ。駄目な様なら、こちらで用意します。それを仕込むのにひと月」
「………」
「もうすでに、胎にスタンフォード様の子を宿しているのですよ」
「分かってはいるのですが」
「好きにしなさい。どちらにせよ、待つのはふた月だけです」
そう言って、もう用は済んだと出口へと向かう。
「私も妻と結婚する際は、悩みました。結婚自体は…貴族ですし、我が君も、王も王太子様も手を打ってくれましたしね。問題は、この仕事を話すか否か。本当に愛してしまったのでね…名を呼んで欲しいけれど血なまぐさい事なんて、言いたくありませんでしたから。まあ…ぐずぐずしてるうちに我が君にぶっちゃけられましたけれど」
くすくすと笑う声は、本当に楽しそうで。
「私の場合は時間がありましたので、悩めるだけ悩めたはずなんですが…我が君は…俺を大切にしてくださるので。どんな子なのかわかりませんが、権力が使えるならおねだりしてみたらどうですか」
「当主、よくおねだりといいますが…使い方間違っていませんか」
「間違ってはいませんでしょう。我が君のやさしさに甘えていますからね」
ふふ…と、笑って、ドアから出ていく後ろ姿を見送り、ぱたりとドアが閉まる。
「…あんたがおねだりって言うと、エロいんすよ…」
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