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第五章:城下町でのあれこれ

ギャップ萌え、とはいかない

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 気が付いたらスタンフォードの肩に凭れかかって懐いてました。びっくりだ。

「なんだ。もう戻ったのか。残念」

 にやにや笑いをするな!こんちくしょう!!!というか、あの時のかみ合わない会話、うっすら覚えてるからな!この野郎!
 あの注意事項、わざとだろうと何となく…今になると、そう思う。上出来とか印象に残るとか、そこから考えるとさ。

「まあ、怒るな。あれで大抵は同情を得られるしな」

 文句を言うと、どこに地雷があるかわからないから、心の中で文句を盛大に言っていれば、それが顔にも出たんだろう。ぽんぽんと頭を撫でながらそう言う。
 むむむ…

「だったら最初からそう…」
「お前が迫真の演技ができるかわからなかったからな。…ただ、そう…」

 そう言って…さらりと髪を手に取られて、そっと口づけた。くっそう、絵になるな!かっこよすぎて目が離せない…

「お前の泣き顔も、ずいぶんとそそるな」

 言う事がそれとか、もうほんと、その顔でそういう事いうな!!!


 ちょっと泣いて恥ずかしかったらしく、ご機嫌斜めなんだ。という口実をでっち上げて、私の不機嫌を上手い事流した男と、今…初めて食事をしている。フォークはわかるけれど、ナイフはわからないという事で行く。というのも決められたことだった。
 隣に座って、これをこう、とか教えられながらの食事だけど…なんというか…最初のお皿は良かったんだけど、なんだろ。後の方になるとこう…冷めてるというか冷たくておいしくないというか。本当は暖かいものなのだろうに、油が固まっててこう…

「…言いたいことがあるなら言え」
「言っていいんですか」
「今は人を下がらせているし、まあ、言いたいことは何となくわかる。これだから食に興味がなくなるんだ。アレのほうがまだいい」

 いや、確かにそうだけども。一回しか食べてないけど、あの保存食のクッキーのほうがまだマシというのは分かる。
 下がらせている、というのは…まあ、俺が教えるから下がれとこの男が言ったからで。時々料理を持ってくる侍従が来るくらい。さっきこのお皿を持ってきたから、後10分位は来ないはず。だから、この世界に来た最初の…初めて本当の恐怖を味わった時を思い出して、詰る。

「…一流シェフがどうこう言ってたくせに」
「一流シェフでもこうなんだぞ。家庭料理だったらもっとひどいに決まって…あ?なんだその目」

 こいつ、ばかなの!!!なんで料理がおいしくないかわかってないくせに文句言ってるわけ!?
 いや、なんで料理がこうなのか大体想像つく。調理場から遠いとか、もしかしたら毒見とかあるのかもしれない…いや、確実に毒見されてますわ。なんか角が微妙に不自然に削れてたりするから。
 それで冷めて、おいしくないという事に気が付いてないんだこの男は!
 最初の方の料理は、冷たい物だから問題なくおいしかったんだろうなぁ…

「ちゃんとおいしい料理というものを味わわせるから、いろいろ買って」
「…まあ、いいだろう。それでマズかったら、どうなるか分かってるだろうな」
「あ…」

 そう、言われて…怖くなる。これって、逆らったことになるのかな…

「まったく…言った後で怯えるな」

 圧を掛けてくるのはそっちじゃないか!と、思ったけど…身体が竦んでいるから何も言えない…うう…もう、これこのままなんだよね。最近はそうならないような物言いを覚えたはずなんだけど、こう、どうしても墓穴掘るというか地雷踏むというか、もう少し利口に生きたい…
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