10 / 75
10 帝国軍参戦
しおりを挟む
ファラーデン王国は破った。もはや生き残っている者はいないだろう。あたしは魔王の玉座に腰かけた。
「まことにお見事でした。ゴリエス将軍の活躍もさることながら、魔王陛下の第二軍オースィン将軍、第三軍エドメス将軍に対する采配には目を見張るものがありました。何しろ三倍の敵を蹴散らすなどと…」
アストレルが感極まったようにそう言った。そう?そんなに大したこと?兄さんなんか秒でやってのけるけどね。三倍どころか百倍だって兄さんの敵じゃない。あたしはただ兄さんのまねをしてるだけ。
「戦線に注意を払え。そろそろ新たな敵が動き出す。偵察を怠るな。ファリエンド、先日命じたあれは準備できているか?」
「魔王さま、整いましてございます。ただ、あれを何にお使いになるのですか?飼いならした翼竜など、いくさ場で何の役に立ちましょうや?」
小型の翼竜と大型の翼竜を飼いならしてあった。これも兄さんがやっていたゲームの世界で、兄さんが使っていた戦術だ。うまくいくかはわからない。でももしうまくいくなら、この効果は計り知れない。
「期を待て。そう兵にも伝えておけ。それは近い、ともな」
「かしこまりました」
「これより国境を越え、進軍する。行き先は、帝国首都!」
魔王軍は一斉に進軍を開始した。もはや敵なしと思われた。だがそれは目の前に広がる原野の光景を見て、考えを改めるべきだとみなそう思った。
そこには数限りない兵がいた。数万…いや数百万の人間がいた。
「ネブリャスカ軍団ですね」
「ネブリャスカ?」
「帝国の主力ですよ」
皇帝オラーリンが帝国の礎を作ったという。その戦法はあくまで人海。人で地平を埋め尽くすだけの作戦。まるで人の津波。そんな人間どこから?答えはまわりにあった。周辺諸国を併呑し、人をかき集める。大人も子供もだ。
ネブリャスカ軍団はその悪名高き皇帝の最強の戦術単位。まるで死霊のように前進してくる、後退はしない。すれば死ぬ。前に出ては死に下がれば死ぬ。まさに死の軍団。
「あれが出てきたとなるとこいつは決戦になりますよ。そういうわけで、わたしは前線に」
アストレルがそう言って兜をかぶり出て行こうとした。数名の参謀たちも一緒だ。いよいよ騎兵のお出ましというわけか。魔族の騎兵が座乗し突撃するのは馬じゃない。魔獣だ。サイのような魔獣、象のような巨大な魔獣、そしてオオトカゲみたいなやつ。みな恐ろしく強い。
「アストレル!」
「なんですか、魔王さま」
「左翼が手薄に見える」
「そのようですね。兵が薄い。そこから一気に…」
「やめておけ、あれは罠だ。お前を引き寄せる、な」
「な、なんですと!」
「悪いことは言わん。中央を突け」
「しかし最も防御が厚い…」
「何で野戦で防御を固める必要がある?そこが、敵が一番攻めてきてほしくないところだからだ」
兄さんなら迷わずそこに攻撃を集中させるだろう。なぜならそこが命令系統。ならば乾坤一擲、フルパワーでぶち抜けば、あとは大したことのない烏合の衆。全滅させるなど赤子の手をひねるが如く、だ。
「この赤槍の力を存分にご覧下さい!」
そう言ってアストレルはサラマンダーにまたがった。火焔地竜サラマンダー。魔法まで使う最強の魔獣。
帝国軍は震え上がるであろう。
「まことにお見事でした。ゴリエス将軍の活躍もさることながら、魔王陛下の第二軍オースィン将軍、第三軍エドメス将軍に対する采配には目を見張るものがありました。何しろ三倍の敵を蹴散らすなどと…」
アストレルが感極まったようにそう言った。そう?そんなに大したこと?兄さんなんか秒でやってのけるけどね。三倍どころか百倍だって兄さんの敵じゃない。あたしはただ兄さんのまねをしてるだけ。
「戦線に注意を払え。そろそろ新たな敵が動き出す。偵察を怠るな。ファリエンド、先日命じたあれは準備できているか?」
「魔王さま、整いましてございます。ただ、あれを何にお使いになるのですか?飼いならした翼竜など、いくさ場で何の役に立ちましょうや?」
小型の翼竜と大型の翼竜を飼いならしてあった。これも兄さんがやっていたゲームの世界で、兄さんが使っていた戦術だ。うまくいくかはわからない。でももしうまくいくなら、この効果は計り知れない。
「期を待て。そう兵にも伝えておけ。それは近い、ともな」
「かしこまりました」
「これより国境を越え、進軍する。行き先は、帝国首都!」
魔王軍は一斉に進軍を開始した。もはや敵なしと思われた。だがそれは目の前に広がる原野の光景を見て、考えを改めるべきだとみなそう思った。
そこには数限りない兵がいた。数万…いや数百万の人間がいた。
「ネブリャスカ軍団ですね」
「ネブリャスカ?」
「帝国の主力ですよ」
皇帝オラーリンが帝国の礎を作ったという。その戦法はあくまで人海。人で地平を埋め尽くすだけの作戦。まるで人の津波。そんな人間どこから?答えはまわりにあった。周辺諸国を併呑し、人をかき集める。大人も子供もだ。
ネブリャスカ軍団はその悪名高き皇帝の最強の戦術単位。まるで死霊のように前進してくる、後退はしない。すれば死ぬ。前に出ては死に下がれば死ぬ。まさに死の軍団。
「あれが出てきたとなるとこいつは決戦になりますよ。そういうわけで、わたしは前線に」
アストレルがそう言って兜をかぶり出て行こうとした。数名の参謀たちも一緒だ。いよいよ騎兵のお出ましというわけか。魔族の騎兵が座乗し突撃するのは馬じゃない。魔獣だ。サイのような魔獣、象のような巨大な魔獣、そしてオオトカゲみたいなやつ。みな恐ろしく強い。
「アストレル!」
「なんですか、魔王さま」
「左翼が手薄に見える」
「そのようですね。兵が薄い。そこから一気に…」
「やめておけ、あれは罠だ。お前を引き寄せる、な」
「な、なんですと!」
「悪いことは言わん。中央を突け」
「しかし最も防御が厚い…」
「何で野戦で防御を固める必要がある?そこが、敵が一番攻めてきてほしくないところだからだ」
兄さんなら迷わずそこに攻撃を集中させるだろう。なぜならそこが命令系統。ならば乾坤一擲、フルパワーでぶち抜けば、あとは大したことのない烏合の衆。全滅させるなど赤子の手をひねるが如く、だ。
「この赤槍の力を存分にご覧下さい!」
そう言ってアストレルはサラマンダーにまたがった。火焔地竜サラマンダー。魔法まで使う最強の魔獣。
帝国軍は震え上がるであろう。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。
了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。
テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。
それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。
やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには?
100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。
200話で完結しました。
今回はあとがきは無しです。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる