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承安3年(1173年)

信濃への帰還

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 さて、八条院様や源頼政といった八条院の関係者、平重盛と平頼盛という平家の要人や讃岐院や西行法事とのつながりは無事持てましたので、このあたりで信濃に戻りましょう。

 あまり、離れているのも良くはないでしょうからね。

「私は信濃に戻ろうと思いますが、西行様はこれからどうされるのですか?」

 西行法師は少し考えたようですが……

「拙僧も一度山に戻ろうと思う」

 なるほど高野山ですね。

「分かりました、色々とありがとうございました」

「うむ、そなたの行いに感謝するぞ」

 私は西行法師と別れ、山城国から、近江、美濃を東山道を下って 信濃国(長野県)へ戻りました。

「なんだか、懐かしい気分ですね」

「ええ、やはり信州はいい所です」

 私の言葉に小百合がうなずきました。

 そしてまずは松本の屋敷へ戻り農地の状況や収穫に関しての報告を受けました。

「田畑の作物に関しては今年は天候にも恵まれて順調でしただ」

 そして、手習天神の様子を見に参ります。

「おお、巴、戻ったのか」

「はい、ただ今もどりました義仲様」

 私は義仲様に頭を下げ挨拶をいたしました。

「京は面倒くさい所だったろう」

「はい、まさしくそのとおりでした、ですが色々と勉強となりました」

「うん、なら良かったんじゃないか、でだ、巴」

「はい、何でしょうか?」

「ここを心光寺の連中にも使わせたい」

「それはかまいませぬが、そうなると手狭でございませんか?」

 義仲様は少し考えたあと

「では西信濃のここを手本として、南信濃の伊那諏訪地方の伊那屋敷、東信濃の佐久上田地方の上田屋敷、北信濃の長野善光寺地方の善光寺屋敷の近くにも一つずつ同じものを作ろう。

 管理運営はそれぞれ、金刺盛澄、滋野行親、栗田寺別当大法師範覚が行えば財源も問題はなくなると思うのだが」

「はい、それでありましたら問題はないかと」

「うむ、ではそのように取り図らせてもらうぞ」

「はっ」

 こうして信濃には4つの手習天神を置くこととなりました。
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