転生ニートは迷宮王

三黒

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第4章

98 侵入者

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***アヤト視点に戻ります。***



 さてさて本日も快晴、かどうかは知らんが迷宮内は変わらず快適だ。探索者も順調に増えてきてるし、DPもかなり貯まりやすい。還元ってことでたまに上層に強めの武器置いてるが、街でも話題になったりして面白いな。永続の属性付与エンチャントが成功したのは、外にはあまりないらしい。
 色々テキトーに決めたにしては、経済は割と上手く回ってる。滞在時間・階層に応じてエル――迷宮内通貨をボーナスで付与する作戦は成功だったようで、ガッツリ野営して攻略するパーティも出てきた。
 上層だけでもここでは割と十分に生活できる、ってか下手な低級冒険者より美味いもん食えるが、攻略組みたいなのは既に億万長者みたいになってるな。エルを更にルナ――迷宮外通貨に替えて、シレンシアで豪遊してるやつもいるみたいだ。この街娼館とかないしな。賭博施設も公式にはない。建ててくれって要望も……つっても探索者の雑談から聞こえただけだが、一応多い。建てる気はないけどな。治安悪化されてもなんだし、娼館とかまずどうすんだよ。娼婦ゴースト的な?

 この街に訪れるのはまだ探索者――迷宮に興味がある冒険者だけだしな。街のあれこれを全部こっち側でやってるから、新規が参入しづらいのもある気もする。
 一応、街に店を出す手続きとかは冒険者ギルドでできるようにはしてる。ルドゥードはDPで買えなかったから、あのおっさんには是非この街に来てほしい。思い出したら腹減ってきたな。気のせいだけど。なんかつまむか。

『ポテトチップス:10DP』
『コーラ(500ml):10DP』

 ……安い、安すぎる。流水リルルスと、一応買った石鹸で軽く手洗っていただきますと。
 ああ、そうそう。いらない鉱石やら装備やらをエルに換えるってのもとにかく上手くいった。特に鉱石。
 どうやら未知のものが多いらしく、シレンシアでは加工できないとかいう話だ。だからこの街でガチャに使う冒険者も多いな。

 ガチャっつっても上層の鉱石じゃSSR――神器って呼ばれるようなのが出ることはない。50層までの宝箱には精々Aランク? の魔物相手に普通に戦えるくらいの鉱石しか入れてないからな。
 ただ世界が違ってもガチャ要素にハマる奴は多いらしく、ただ換金するより(仮に価値が落ちても)一発ガチャを楽しんでくって冒険者が後を絶たない。追加で割と高額のエルを設定しても、だ。
 ガチャ自体は俺の鍛治スキルでやってるので、勿論こっち側で属性付与エンチャントとかをいじることもできる。その辺の成功率を上げるために三日分の稼ぎを全部突っ込むようなのもいるから驚きだ。

 そうそう、死んでも復活するからって限界まで食費を削ったガチャ狂もいたが、そいつは復活した直後に普通に死んだ。まあ当然っちゃ当然だよな。迷宮もそこまで万能じゃない。
 装備をケチる奴もいたが、結局はいい装備で少しでも深いとこ行った方が得だと気付いたみたいだ。いいぞ、その調子でどんどん経済を回してくれ。
 
 装備と言えば、迷宮来てない相手に高く売れたりもするらしい。こっちで交換所よりも高く買い取って、シレンシアに売りに行く転売屋みたいなのも出たくらいだ。彩人印の装備が流通するってのもなんか嬉しい。
 ポテチが尽きた、と同時にドアノック。
 
「入っていいぞ」 
「失礼します。マスター、詰所のゼーヴェより緊急連絡です」 
「緊急連絡?」 
「はい。念話が相手にも繋がってしまう可能性があるため私が――」 
 
 緊急連絡ってなんかヤバそうだが、それよりレルアの私服が強すぎる。何度でも言うがスレンダー縦セタは反則。鼻血出そう。何着てても可愛いけどね。なんつーか彼女。嫁。あのレルアが現代風の服着てるってのもいい。文句なしの星五評価です。話の内容が頭に入ってこない。
 
「――というわけです。ゼーヴェは現在も監視を続けています」 
「あー、うん、なるほどな。ってことはつまりあれか。ヤバいのか」 
「ヤバいです。ラビによれば街に大罪の気配も感じるようですし、警戒しておくに越したことはないかと」 
 
 ヤバいらしい。ヤバいわよ。一番ヤバいのは俺が話を聞いてねえってことだ。でも聞き直すのはなんというか……ね。まあなんとかなるだろ。
 
「おっけー、守りは固めとく。そろそろカインが復活する頃だし、地下50階まで来られたらあいつにボスになってもらおう」
「了解です。そのように伝えておきます」
 
 ガチのマジで緊急ならシステムから連絡が来るし、まだ大丈夫だろ。それよりそろそろ今日の分のガチャの時間だ。オーダー来てる分を回して上に送らないとな。
 冒険者ギルドに併設されてる鍛冶屋にも、同じように転移門ゲートが設置されてる。エル関連の機能のお陰で個人の識別は簡単だし、俺はオーダー通り作って送るだけでいいってわけだ。
 
「おっと、今日は随分派手なのが混ざってんな」 
 
 地下30階付近の鉱石に、追加で属性付与エンチャント成功率も上げまくり。多分攻略組だろう。
 今までで一番深くまで潜った奴でも、地下30階のマンティコア三兄弟にやられてる。そもそも精鋭が最低四、五人はいないと厳しいしな。できれば上限の六人が三パーティは欲しいくらいだ。ボスも三体だし。
 まあほら、ずっとソロ・ペアくらいでやれちゃうのもつまらんからな。折角冒険者ギルドがあるんだ、そこで仲間見つけてくれ。
 
『使い魔:ゼーヴェにより、通知が有効化されました。侵入者です。数は三。音量自動調節を実行します。範囲を侵入者周囲に設定しました』 
 
 久々のアナウンス。探索者多すぎて通知切ったんだったっけ。だがなんで今有効化?
 あとで聞いてみるか。で、誰が入ってきたんだろうな――
 
「――なんでも、シレンシアから逃げてきた手配犯もこの街に潜んでるとかいう話じゃない」
「金髪碧眼、軽装もしくは白ローブとかいうやつか? ゴマンといるぜ、そんなん」
「そうかな、結構珍しくない? ね、はどう思う?」
 
 ――ゼーヴェと同じ、深い茶色の髪。ゼーヴェと同じ、紺色の瞳。
 
「ああ……いるんじゃないか? 俺はそんな気がする。昔、そんな奴をこの辺で見た気もするしな」
「だよねー!」 
 
 間違いない。迷宮ここを出てったレイだ。緊急連絡ってのはそれか。念話が通じる可能性があるってのにも合点がいった。
 だが何故。何故アレンとアリシアと一緒にいる? ラーさんみたいにバッファーになったのか? いや、剣を提げてるのが見えるしそれはないか。
 あとあのおっそろしい魔力量はなんだ。俺が渡した魔力タンクじゃ有り得ない量だぞ。っつーかあれもう天使とか悪魔とかそういう領域の魔力だろ。隣の二人が平気なのが謎すぎる。
 
(――あーあーマイクテスマイクテス。レイのばーか! あーほ!)
 
 誰に向けるでもなく念話を放つ。ああこれ聞こえてないな。そらそうだ。既に俺の使い魔でもないし、使い魔だとしても自分以外への念話なんて傍受できない。……多分。
 
(あーゼーヴェ、聞こえるか? 念話は大丈夫みたいだ) 
(ロード! 申し訳ございません、私めの愚息が……)
(や、いいよいいよ。来るもの拒まずだ。それより、地下50階まで来られたらカインぶつけるつもりなんだが……いいか?) 
(勿論です。ロードにお任せ致します)
 
 いつも暴れ足りないとか言ってるし、ここで日頃のストレスやらを発散してもらえばいい。あの魔力量ならすぐ地下30階くらいまでは来るだろうし、もう一回中層の罠とか確認しとくか。
 ……それと、あの魔力量についても気になる。レルアあたりに聞いたらなんかわかるかね。
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