転生ニートは迷宮王

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第2章

66 無事を祝して

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「ってことは、貴女がリフィスト様!?」
「うむ。正確には違うやも、というところではあるが……」 
「いいえ、間違いないわ。お母様に聞いたお姿そのままだもの!」 
 
 おー、やっぱリフィストって有名人だったんだな。リフィスト教とか言って崇められてるだけある。
 
「ほう、うぬは操影者か。名はなんという?」 
「操影者……? 私はリフェア。私の名は貴女から取ったと、幼い頃母が教えてくれたの」
「今は影の一族と呼ぶらしいの。にしても成程、イルートツェルンの子か! ���彼奴等きゃつらとは懇意にしておった。して、汝が親は今……」 
 
 そこまで言ってリフィストは黙り込んだ。心読んだか。
 
「すまなかったの。無神経な質問であった」 
「気にしないで。お家がなくなったのは最近だけど、両親はもうずっと昔の話だし」
「だがあれは肉親ではないのか? 我らを助けた、ラビという」
「ああラビは私のためにあの格好をしてるだけ。本当は結構イケメンだったりするのよ?」
 
 イケメン……まあ口を開かなければ割といい方の見た目だったな。俺は今の見た目の方が好きではあるけど。
 っと、そうだ。パーティーの準備の途中だったな。カインはどうせ生き返らないだろうし、俺含めて八人か。ピザを分けるにも丁度いい人数だ。Lサイズ四枚くらいでいいかな。一枚250DPだから計1,000DP。頼んだら即お届け。
 そういや、俺の使い魔は俺と同じで空腹を感じないらしい。一応満腹にはなるっぽいが。
 睡眠をとる必要もない。多分。つまりベッドを使うのは気絶したときくらいしかない。まぁそんな高くもなかったしいいけどな。
 
「ま、マスター! 私もお手伝いします」 
「いいっていいって。眼の適合もまだなんだろ? 安静にしてた方がいいと思うし、そこに座っといてくれよ」
 
 照り焼きマヨを切り分けているとレルアが駆け寄ってきた。抉りとった目は何故か治らず、今は眼帯をしている。
 片目がないのは不便だろってことで、対魔の魔眼とかいう眼をプレゼントした。仮にも魔眼ってだけあって、敵対者の動きを少し鈍らせたりする効果があるらしい。実際どんなもんなのかはわからん。
 魔眼は赤色だった――レルアはもともと碧眼だから、恐らくオッドアイになるんだろう。事後にはなったが承諾は得ている。元の色に比べれば劣るが、十分綺麗な色だ。
 にしても、こんなものまでDPで買えるのは少し驚いた。値段は100万DPだったが、レルアのためなら惜しくもない。
 買ったところで施術とかできないが……と思ってたら、サイズやらなんやらも自動で綺麗に収まってくれたので良し。DPショップ様様だな。
 
「しかし」
「まぁまぁ。あんなことの後だ。多少休んだってバチは当たらんだろうよ」
 
 レルアは渋々といった様子でソファに腰掛ける。俺の渡した髪飾りが光を反射して煌めいた。今はまた白のワンピース姿だが、もう最高に似合う。そして最強に可愛い。マジ天使。
 レルアからすれば貰ってばかりで、って感じなんだろうが、俺からすれば助けてもらってばかりなんだよな。
 神に乗っ取られたのもめっちゃ謝られたが、あれはもうどうしようもないし。結果こうして誰も死んでないから勝ちだ。

 ……てか、派手にパーティーとは言ったが経験がなすぎて用意するものがわからん。たまの集まりも飲み会くらいだったし、それ以前は菓子持ち寄ってゲームした記憶が最後だ。俺はそういうのでいいけど。
 まず飲み物……明らかに未成年混ざってるから酒はマズいしコーラとかにするか。コーラならポテチは鉄板だよな。適当にスナック菓子並べて、食後にケーキと紅茶とかにしよう。
 
(おーい、皆集まれ)
 
 そういや人数が増えたのでソファの数も追加した。すっかりリビングっぽくなって元の地下39階とはほぼ別物になっている。
 
「マスター、これ何ー?」
「ピザって言ってな、俺の元いた世界の食べ物だ。これがまたコーラに合う」
 
 全てのグラスにコーラを注ぎ終わって思ったが、もしやリフェアとかはジュースの方が良かったかな。まぁいいか。
 
「よし揃ったな。じゃあ全員の無事を祝して! 乾杯!」
「乾杯」
「かんぱーい」
 
 今回は予め乾杯については教えておいた。いやー、一仕事終えた後のコーラは美味い。
 
「……麻痺パライズ?」
「ほほ、なんとも不思議な飲み物ですのう」
 
 やっぱ第一印象は麻痺パライズなのか。コーラ風呂に浸かったら麻痺耐性上がったりしてな。
 
「ん……美味しい。見たことないものばかりだけど」
はふたーマスターほれひゅほいこれすごいほひるへのびるね!」
「はは、リフェア。落ち着いて食えよ?」
 
 こっちの世界にはチーズもない、と。そもそも人々の主食なんなんだろう。小麦に似たものはありそうだが。
 
「童、このやたら薄いものをもっとくれぬか」
「まぁいいが……それ食いすぎると気持ち悪くなるぞ?」
「ふん、我は天使ぞ? 今更そんなもの感じぬわ」
 
 後でどーなっても知ーらね。てかリフィストは普通に腹減るのかな。まだ使い魔じゃないし。
 
「天使に空腹の概念はない。が、娯楽として食事をする者も多いの」
 
 へえ。まぁ必要なさそうと言えばそうだな。腹減ったら色々不便そうだし。
 
「そうだゼーヴェ、ゴーストの訓練ってどうなってる?」
「ああ、伝え忘れておりました。ロードのご不在中に数体がレイスに進化したため、基本的な訓練はそちらに任せています」
「自分らで進化したのか。報告サンクス」
 
 そのうちまた小隊でも組ませてレベリングに行ってもらおう。上層は死なない仕組みになったから、もっと戦力上げても大丈夫だし。
 
「待て童。レベルなどというものはいくら上げても意味がない。それはうぬら、勇者用の気休めに過ぎぬ」
「え? じゃあどうやって強くなればいいんだ」
「普通はスキルの練度を高める……そうすれば自ずと身体能力も上がっていく。DPとやらが目的で魔物を狩るのは良いだろうが、レベルだけを上げたところで何の意味も成さぬ」
 
 衝撃的事実。じゃあレルアがラビに負けたのってレベリング不足が原因じゃなかったのか。スキル……スキルねえ。
 
「スキルってのはどうやって上げるのが正解なんだ?」
「使用によってに決まっておろう。他の方法など全て邪道と言っても過言ではあるまい」
 
 やっぱ使うのが近道か。ガンガン使ってこう。
 
「ところで童、ポテチとやらをもっと頼む」
「お、おう……」 
 
 これだけ食っても胸焼けしないあたり流石天使というか。
 
「皆そろそろ食い終わったか? 食後のデザートもあるぞ」
「わーい! なになに? クッキーもある?」
「勿論だ」  
「やった!」 
 
 クッキーとポテチは常備しといた方が良さそうだな。箱買いしてキッチンの方にでも置いておこう。
 クッキーは大皿、ケーキは新たに買ったちょっとお洒落な皿に並べる。八枚も買っちゃったが、ゼーヴェ宅にあった食器棚に入るかな……
 
「んー! 美味し! クッキーより好きかも!」
「そりゃ良かった」
「紅茶によく合いますね」
「だろ? 俺もここのケーキはよく食ってたんだ」
 
 ジム帰りに買ったりしてたなぁ。懐かしい。DPショッピング、店名まで指定できたから驚いたぜ。
 苺の乗ったショートケーキは、一瞬で全て胃袋の中に収まった。これ二、三個いけるな。やめとくけど。
 
「よし、じゃあ皆適当なタイミングで解散してくれ……と言っても、急ぎの用がなければここでゆっくりしてて構わない。俺はちょっと迷宮造ってくる」
「マスター! またパーティーしようね!」
「ああ。きっとまた」
 
 そうだ。迷宮を造るのもいいが、そろそろ迷宮街の計画も実行に移してみたい。レイアウトだけでも考えておくかな。
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