転生ニートは迷宮王

三黒

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第1章

24 屍竜

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 うーむ。この転移門ゲート、便利なのは便利だがなかなか厄介だな。
 ツクールの方では所謂「外の世界」なるものが無かったから転移門ゲートなんて必要なかった。
 毎回俺かレルアに念話飛ばして開くのも面倒だし。今のところ利用するのは俺、レルアにゴースト一家くらいのもんだからいいが、今後のことを考えても現実的とは言えない。
 
『レベルアップ。アヤトのレベルが64→65に上がりました。使い魔:ゼーヴェのレベルが43→46に上がりました。リリア他二体のレベルが1→22に上がりました。獲得スキルポイントを自動で割り振ります。時空魔術:転移門ゲート設置・撤去が転移門ゲート設置・撤去+に強化されました』
 
 お、何か狩ったらしい。称号が貰えないし、経験値的に見ても中ボスレベルのやつかな?
 それと、このタイミングで転移門ゲートスキル強化。ツイてるツイてる。
 
(ロード、申し訳ございません。屍竜しりゅうの群れに遭遇しました。我々だけでは――)
 
 一瞬念話が入り、すぐに途切れる。念話はそこそこの集中を必要とするが、もしやピンチ?
 
(――急――――援――す――――)
 
 何を言っているかまるで分からん。とりあえず行ってみるか。時空魔術にも攻撃関連色々あるらしいし、実戦で試してみたい。
 確か、迷宮系スキルと空間魔術の複合スキルで座標指定して転移みたいなのがあったはず。それを使えばここから一気に外行けたり?
 
『使い魔四体の場所を特定しました。迷宮外からの直接転移が可能です』
 
 ああ、やっぱりあの青いの踏んで転移しなきゃか。
 魔法陣に足を乗せると、全身がなんとも言えない浮遊感に包まれる。
 視界が開けると、眩しい日差しが――いや、日差しなんてどこにもなかった。あるのはやったら綺麗な星空のみ。いや、あの光ってるのは星なのか……?
 迷宮内に籠もりっきりだったので気付かなかったが、どうやら外の世界は夜になっていたらしい。迷宮魔物が眠気を感じるのかは知らんが、もし同じように眠いんならレベリングだなんて悪いことをしたな。
 それはさておき、えーと呪文はなんだったかな。確か――
 
転移ラムルト

 次の瞬間、耳をつんざく咆哮と鼻をつまみたくなる腐臭に面食らう。
 
「ゴァーァアァァァア!!」
 
 振り下ろされる前足。咄嗟に屈んで避けるが風圧ですっ転ぶ。全身に酷い腐臭の息を食らった。内臓が全部腐ったかのような錯覚に陥る。
 よろめきながらも急いで立ち上がるが、そこには大きく開かれた屍竜の口が。
 
「――っ!!」
「危ない!」
 
 今にも凶暴な牙に貫かれんというその時、横から突き飛ばされる。
 
「無事ですか、ロード……ってロード! 何故貴方が!?」
「いや、よく聞こえなかったけどとりあえず助けに行けばいいのかと思って、って危ねえ!」
 
 四方八方から掠れば即死しそうな攻撃が飛んでくる。
 ゼーヴェに抱えてもらい、それらを間一髪のところで躱していく。
 
「非常に申し上げにくいのですが、ロードでは足手まといになるだけです。レルア様を呼んでいただければと思――」
「ぐ、ぇ」
「ロード!」
 
 猛烈に気持ち悪い。頭痛、目眩に吐き気がする。早めのパ○ロンをキメたい。
 冗談はさておき、やっぱりさっきのブレスは毒ガスか。視界がぼやけてきた。
 
『勇者スキル・成長により毒耐性を獲得しました』
 
 そういえば腐っても勇者だったな。気持ち悪さが多少よくなる。
 ってか、画面見てないと脳内にアナウンス流れるのか。便利だから画面見てても流してくれ。
 
「ロード、しっかり!」
「俺は大丈夫、大丈夫だ。俺だってただ足手まといになるためだけに来たわけじゃあない。見てろよ――遅延ディロウ!」
 
 この魔術は対象の行動速度を遅くする……はずだったが、どうやら効いていないようだ。奴に耐性があったか、力量が離れてすぎているのか。
 
「……死にますよ、ロード」
「いや、まだ策はある! ――置換レプリアス
 
 屍竜の足元に巨大な空間を出現させる……成功!
 繋ぐ先は前方、空中。
 
 屍竜の身体は空中にワープ、そのまま落下した。ガラガラガラ! という音と共に大量の骨が散らばる。
 
「やったか!?」
「……いえ、ただ落とした程度ではすぐに復活します。少し下がっていてください――と言いたいところですが、今は討伐よりもはぐれた妻子を探さないと」
 
 ゼーヴェは俺を抱えたまま駆け出す。相変わらずあちらこちらから攻撃が降ってくるが、俺を抱えるのにも慣れてきたのか余裕のあるステップで躱していく。
 
「本当にこっちで合ってんの?」 
「魔力反応はこちらに出ているので直に――見えました!」
 
 砂埃が晴れた先にリリアやノナ、レイの姿が見えた。全員無事のようだ。ゼーヴェは安堵の表情を浮かべたが――次の瞬間青ざめる。
 
「ノナ!」
 
 ノナに向かって蹴り出される前足。一瞬遅れてリリアが気付き、両手を広げて庇う。
 
 
「待――――――――」
 
 
 
『使い魔:リリアが消滅しました』
『使い魔:ノナが消滅しました』
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