上 下
15 / 54
3章

広がる噂

しおりを挟む
水城先輩から聞いたゲームの効率的な経験値の稼ぎ方は実に有効だった。
あの先輩、狩人モンスターをかなりやり込んでるようだ。
教えてくれた方法は攻略サイトにすら乗っていない方法だったので普通に驚いてしまった。
お陰で俺はこのサーバー内での総合ランキングがとうとう二桁の順位になり、俺は一人で盛り上がってしまった。その日は最高の一日となった。

けれどそれは昨日の話。

今日登校してみれば案の定、水城先輩の話でクラスメイトに詰問される。

「おい、村井。なんでお前なんかがあの水城先輩に呼び出されるんだよ!」

俺はとうとうクラスカースト一位の陽キャ、柳田にまで声を掛けられるようになってしまったようだ。
これまで柳田とはたいして話もしたことが無いのに「この俺だって先輩とはあんまり話をしたことが無いんだぞ!」と詰め寄ってくる。

まあ別に隠すことじゃないので柳田には事実を伝える。
「…いや、たまたま落とし物とか拾ったりとか助けた事があって、そのお礼がしたかっただけらしいよ」

柳田は苛立ったように髪を搔きむしってため息をつく。
「そんなことでわざわざ教室に来てお礼を渡してくれるのか?だったら俺だって落とし物拾いたいわ。お前一生分の運使い果たしたな」

なんでそれくらいで一生分の運なんて使い果たすことになるんだよ。
柳田は俺の冷たい視線に気が付かないようでそのまま話を続ける。

「お前は知らないのかもしれないが水城先輩と言えばこの学園のアイドル。この学園で3指に入る美人なんだぞ!そんな人にお前ごときが声をかけて貰えるなんて有り得ない事なんだよ」

そんなこと言われても知らんよ…。
と、いうか昨日も聞いたけど本当に学園のアイドルとか言われてるんだなあの先輩。
確かに顔が整っていて奇麗な人ではあったが…。
なんだろう。アイドルって言われるなら歌がうまかったりするのだろうか?

「おまえ、これを機に水城先輩を狙おうなんて考えてないだろうな?身の程はわきまえとけよ?水城先輩は男が嫌いだから、お前みたいな陰キャじゃ絶対なびかないからな?俺レベルだっていつも虫けらを見るような目で見られるんだからな」

…それお前が嫌われてるだけじゃないか?と思ったが面倒だから口に出さない。
俺は特に男嫌いって印象は受けなかったぞ?

「忠告どうも。お礼も終わったし先輩と関わることはもうないから安心してくれ。相手も俺に興味なんてないよ」

会話が不毛なので適当に切り上げることにする。
柳田は一応は納得したようだったが、いつから近くにいたのか篠崎が俺の事を見つめていることに気が付く。どうやら篠崎は先ほどの会話を聞いていたらしい。
篠崎が声を掛けてくる。


「ねえ、村井君のほうはどうなの?」
「どうって?」
「村井君は水城先輩に興味あるの?」

篠崎はいつになく真剣な顔をして話しかけてくる。
興味があるか無いかで言えば当然ある。だってあの人狩人モンスターしてるし。

でも興味あるなんていったらまた柳田がまた突っかかって来てしまいそうだ。
なんて答えようか考えていると悲しそうな声色で篠崎が先に口を開いてしまう。

「…私見たの。昨日村井君が水城先輩にデートに誘われている所。二人とも凄く楽しそうにしてた」

ざわっ!
どよめく周囲。そしてまた俺の席に戻ってくる柳田。

篠崎!お前なんて爆弾発言してくれるんだ!
適当な事を言うな!

「村井ぃぃぃ!どういうことだ!!」
叫ぶ柳田。

「いや、デートになんて誘われてないから!」
「でも水城先輩チケット渡してたよね?」
「そうだけど。チケットは受け取ってない!」
「…デートを断ったってこと?でもその後あんなに楽しそうにしてたのに??」
「だからそもそもデートに誘われてないんだって!」
「…でも水城先輩チケット渡してたよね?」
ループする篠崎。

「おい、村井!ちゃんと詳しく説明しろ!場合によってはただじゃ済まさないぞ!」
群がるクラスメイト。

ああ、面倒すぎる。なんでこうなるんだ…。

チケットはそもそも先輩が出る吹奏楽部の公演で、他の人を誘えるようにチケットを渡そうとしてくれたという話を馬鹿丁寧にする羽目になった。
それだけ丁寧に説明してやったにもかかわらず、クラスメイトは信じない。
何なんだよコイツら…。

彼らは自分たちの都合の良いように解釈し、あっという間に校内に噂を広げてくれた。
『水城先輩は村井と付き合っている。水城先輩が村井をデートに誘っていた。』

困ったことに水城先輩が俺にチケットを渡そうとしている所は篠崎以外にも目撃されており、その噂はそのたびに信ぴょう性を増していった。

そして、その噂は水城先輩に壁ドンしていたあのヤバい先輩の耳にも入ることになる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について

ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに…… しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。 NTRは始まりでしか、なかったのだ……

美少女幼馴染が火照って喘いでいる

サドラ
恋愛
高校生の主人公。ある日、風でも引いてそうな幼馴染の姿を見るがその後、彼女の家から変な喘ぎ声が聞こえてくるー

夜の公園、誰かが喘いでる

ヘロディア
恋愛
塾の居残りに引っかかった主人公。 しかし、帰り道に近道をしたところ、夜の公園から喘ぎ声が聞こえてきて…

彼氏の前でどんどんスカートがめくれていく

ヘロディア
恋愛
初めて彼氏をデートに誘った主人公。衣装もバッチリ、メイクもバッチリとしたところだったが、彼女を屈辱的な出来事が襲うー

【完結】俺のセフレが幼なじみなんですが?

おもち
恋愛
アプリで知り合った女の子。初対面の彼女は予想より断然可愛かった。事前に取り決めていたとおり、2人は恋愛NGの都合の良い関係(セフレ)になる。何回か関係を続け、ある日、彼女の家まで送ると……、その家は、見覚えのある家だった。 『え、ここ、幼馴染の家なんだけど……?』 ※他サイトでも投稿しています。2サイト計60万PV作品です。

恋人の水着は想像以上に刺激的だった

ヘロディア
恋愛
プールにデートに行くことになった主人公と恋人。 恋人の水着が刺激的すぎた主人公は…

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

壁の薄いアパートで、隣の部屋から喘ぎ声がする

サドラ
恋愛
最近付き合い始めた彼女とアパートにいる主人公。しかし、隣の部屋からの喘ぎ声が壁が薄いせいで聞こえてくる。そのせいで欲情が刺激された両者はー

処理中です...