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3章
先輩のお礼
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―放課後―
今日もそそくさと帰る準備をしていると相田が半目で声を掛けてくる。
「村井。アンタ何なの?」
「…何なのってなんだよ?」
「あれ」
そう言って教室の入り口を指さすとそこには水城先輩が立っていた。
俺と目が合うと彼女は小さく手を振る。
「…」
「環奈先輩がアンタ呼んできてくれって。学園のアイドルがなんで村井を呼び出すのよ。あんた本当に何なの??」
「いや、俺に聞かれても…。知らんし」
っていうか学園のアイドルってなんだ。
あの人はそんなこっぱづかしい呼び方をされているのだろうか。
疑問は色々とあったがとりあえず先輩の所へ向かう。
「先輩、何か用ですか?」
「村井君。急にすみません。やっぱりお礼をさせていただきたくて」
「いや、俺散々お礼はいらないって言ったじゃないですか」
「そうですけど…」
先輩と会話をしていると、いつもは賑やかな教室がシーンと静まり返っていることに気が付く。
クラスメイト達は俺と水城先輩のやり取りを驚いたように見ていた。
いや、怖いよ。
先輩も注目を集めていることに気が付いたようで少し困り顔だ。
「…先輩、ちょっと話す場所変えようか」
「…そうですね。そうしましょうか」
なんであいつなんかが環奈先輩と!と教室から叫び声が聞こえてくる。
どうやらこの人、学校で有名人だったようだ…。
もしかしたら明日またクラスメイトに絡まれるのかと思うと気が重い。
――――
「村井君。コレ先日の財布と昼休み助けていただいたお礼です」
人気の少ない中庭に移動するとそういって先輩は2枚チケットを渡してきた。
「? これ、何のチケットですか?」
「ああ、説明が足りていなくてすみません。私の所属する吹奏楽部の公演チケットです。どなたかを誘っていただいてお友達作りに役立ててもらえればと」
「…へ?」
うちの吹奏楽の演奏はいつもとても好評で公演は大人気なんです。
一緒に演奏を聞けばきっとお友達もできますよ。と続けて説明されたが、俺はがっくり来ていた。
わざわざ注目を集めて教室まで来たかと思えば散々断っていたお礼の件で。
そのお礼は特に興味のない吹奏楽の公演チケットで。
チケットは特に友達になりたい奴も居ないのに友達作りに使ってくれと。
なんだそりゃ。
俺にとってそれはただの親切の押し売りで有難迷惑だった。
「先輩。申し訳ないんですけどチケットはいらないです」
「えっ?」
先輩は俺がそんなことを言うと思っていなかったのか驚いていた。
「で、でも、本当に人気の公演なんですよ?チケットもなかなか手に入らないもので…」
「俺、演奏とか興味ないですし。それに特に誘いたい人間も居ないので」
この先輩、篠崎と違ってどうやら人の顔を読むこと出来るようで俺が本当に迷惑だと思っていることに気が付きしょんぼりした顔になる。
「…すみません。皆さんチケットをお渡しすると大変喜んでいただいけたので勘違いしておりました。で、でしたら他に私がお礼できることとか無いでしょうか?」
「いえ、本当にもういいので」
「ですが、色々とご迷惑もおかけしてしまって私の気がすみません!なんでも言ってみてください!」
だったら注目集めるとか余計なことはしないでほしい。
と思ったがそれは口にできなかった。
そこでふと例のレアなキーホルダーの事を思い出した。
先輩はどうしてもお礼をしないと気が済まないようだった。
なので何でもいいというなら言うだけ言ってみよう。
「…なら、財布につけてあったルルーのキーホルダとか譲ってもらえたりしませんか?」
「え“っ」
ポケットに手を当てて明らかに動揺する先輩。
「こ、これはその…、というか村井君。このゲームご存じなんですか?かなりマイナーなゲームなんですが」
「いやいやいや、マイナーなゲームじゃないですから。知名度が低いだけです」
「それをマイナーというのですが…」
悲しい事にこのゲーム、狩人モンスターは宣伝に力を入れていなかったせいで知名度は低い。が類似ソフトとは比較にならないほどの中身に凝っていて、俺を含めた一部で超人気のゲームなのだ。
「でも中身は本当に最高のゲームじゃないですか。自由度は高いし、キャラメイクは豊富。シナリオも展開次第で複数ありますし」
「わかります!」
うんうんと激しく同意する先輩。
そして申し訳そうな顔をしてまたもや謝る先輩。
本当に謝るのが好きな人だ。
「…でも、ごめんなさい。ルルーは私も大好きなキャラクターなのでお譲りするのはちょっと…」
「いえ、大丈夫ですよ。なんでもというから言ってみただけですので。それ激レア品ですもんね」
「あ、それもご存じだったのですね」
話をしてみると先輩もこのゲーム結構やり込んでいるようだった。
なので、俺はお礼はゲームの情報を聞くことということにして納得してもらった。
ラッキーな事にこの先輩、効率的な経験値の稼ぎ方などかなり有益な情報を持っていた。
これは嬉しい誤算だった。
それに、やっぱり好きなゲームの話を誰かとするのは楽しい。
先輩の部活が始まる直前までついつい話し込んでしまった。
その為、つい俺はそこが校舎内で誰かに見られているかもということを忘れてしまっていた。
今日もそそくさと帰る準備をしていると相田が半目で声を掛けてくる。
「村井。アンタ何なの?」
「…何なのってなんだよ?」
「あれ」
そう言って教室の入り口を指さすとそこには水城先輩が立っていた。
俺と目が合うと彼女は小さく手を振る。
「…」
「環奈先輩がアンタ呼んできてくれって。学園のアイドルがなんで村井を呼び出すのよ。あんた本当に何なの??」
「いや、俺に聞かれても…。知らんし」
っていうか学園のアイドルってなんだ。
あの人はそんなこっぱづかしい呼び方をされているのだろうか。
疑問は色々とあったがとりあえず先輩の所へ向かう。
「先輩、何か用ですか?」
「村井君。急にすみません。やっぱりお礼をさせていただきたくて」
「いや、俺散々お礼はいらないって言ったじゃないですか」
「そうですけど…」
先輩と会話をしていると、いつもは賑やかな教室がシーンと静まり返っていることに気が付く。
クラスメイト達は俺と水城先輩のやり取りを驚いたように見ていた。
いや、怖いよ。
先輩も注目を集めていることに気が付いたようで少し困り顔だ。
「…先輩、ちょっと話す場所変えようか」
「…そうですね。そうしましょうか」
なんであいつなんかが環奈先輩と!と教室から叫び声が聞こえてくる。
どうやらこの人、学校で有名人だったようだ…。
もしかしたら明日またクラスメイトに絡まれるのかと思うと気が重い。
――――
「村井君。コレ先日の財布と昼休み助けていただいたお礼です」
人気の少ない中庭に移動するとそういって先輩は2枚チケットを渡してきた。
「? これ、何のチケットですか?」
「ああ、説明が足りていなくてすみません。私の所属する吹奏楽部の公演チケットです。どなたかを誘っていただいてお友達作りに役立ててもらえればと」
「…へ?」
うちの吹奏楽の演奏はいつもとても好評で公演は大人気なんです。
一緒に演奏を聞けばきっとお友達もできますよ。と続けて説明されたが、俺はがっくり来ていた。
わざわざ注目を集めて教室まで来たかと思えば散々断っていたお礼の件で。
そのお礼は特に興味のない吹奏楽の公演チケットで。
チケットは特に友達になりたい奴も居ないのに友達作りに使ってくれと。
なんだそりゃ。
俺にとってそれはただの親切の押し売りで有難迷惑だった。
「先輩。申し訳ないんですけどチケットはいらないです」
「えっ?」
先輩は俺がそんなことを言うと思っていなかったのか驚いていた。
「で、でも、本当に人気の公演なんですよ?チケットもなかなか手に入らないもので…」
「俺、演奏とか興味ないですし。それに特に誘いたい人間も居ないので」
この先輩、篠崎と違ってどうやら人の顔を読むこと出来るようで俺が本当に迷惑だと思っていることに気が付きしょんぼりした顔になる。
「…すみません。皆さんチケットをお渡しすると大変喜んでいただいけたので勘違いしておりました。で、でしたら他に私がお礼できることとか無いでしょうか?」
「いえ、本当にもういいので」
「ですが、色々とご迷惑もおかけしてしまって私の気がすみません!なんでも言ってみてください!」
だったら注目集めるとか余計なことはしないでほしい。
と思ったがそれは口にできなかった。
そこでふと例のレアなキーホルダーの事を思い出した。
先輩はどうしてもお礼をしないと気が済まないようだった。
なので何でもいいというなら言うだけ言ってみよう。
「…なら、財布につけてあったルルーのキーホルダとか譲ってもらえたりしませんか?」
「え“っ」
ポケットに手を当てて明らかに動揺する先輩。
「こ、これはその…、というか村井君。このゲームご存じなんですか?かなりマイナーなゲームなんですが」
「いやいやいや、マイナーなゲームじゃないですから。知名度が低いだけです」
「それをマイナーというのですが…」
悲しい事にこのゲーム、狩人モンスターは宣伝に力を入れていなかったせいで知名度は低い。が類似ソフトとは比較にならないほどの中身に凝っていて、俺を含めた一部で超人気のゲームなのだ。
「でも中身は本当に最高のゲームじゃないですか。自由度は高いし、キャラメイクは豊富。シナリオも展開次第で複数ありますし」
「わかります!」
うんうんと激しく同意する先輩。
そして申し訳そうな顔をしてまたもや謝る先輩。
本当に謝るのが好きな人だ。
「…でも、ごめんなさい。ルルーは私も大好きなキャラクターなのでお譲りするのはちょっと…」
「いえ、大丈夫ですよ。なんでもというから言ってみただけですので。それ激レア品ですもんね」
「あ、それもご存じだったのですね」
話をしてみると先輩もこのゲーム結構やり込んでいるようだった。
なので、俺はお礼はゲームの情報を聞くことということにして納得してもらった。
ラッキーな事にこの先輩、効率的な経験値の稼ぎ方などかなり有益な情報を持っていた。
これは嬉しい誤算だった。
それに、やっぱり好きなゲームの話を誰かとするのは楽しい。
先輩の部活が始まる直前までついつい話し込んでしまった。
その為、つい俺はそこが校舎内で誰かに見られているかもということを忘れてしまっていた。
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